「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。

所得税とは

所得税の確定申告の時期がやってきました。2月から中旬頃から、電車の中吊り広告や商業施設や駅などの建物の垂れ幕に「確定申告は3月15日までです。○○税務署」と書いてあるものを見たことがある方もいらっしゃると思います。

所得税とは、個人が事業を営んで儲けたり、企業に勤務して給料や賞与が支給されたり、公的年金を受け取ったり、土地や建物を売却したり、株式を売買したりして得た利益(所得)に対してかかる税金で、1月1日から12月31日の所得に対して課税されます。「所得」については、第3回のコラムをご参考にしてください。

本来、所得税は、納税者自らが所得や税額を計算して、それを翌年2月16日から3月15日までの間に税務署に確定申告して税金を納付しなければなりません。しかし、会社員の方の中には、「確定申告を行った経験がない。」という方もいらっしゃると思います。

基本的には、会社員の方は、勤務している会社が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了しますので、確定申告の必要はありません。

給与所得者で確定申告が必要な人

給与所得者でも次のいずれかに当てはまる方は、確定申告が必要になります。

■給与所得者で確定申告が必要な人(例)
(1)給与の年間収入金額が2,000万円を超える方(※)
(2)給与所得及び退職所得以外の所得が20万円を超える方
(3)2か所以上から給与の支払いを受けている方で、主となる勤務先からの給与以外の「給与収入金額」と「給与所得及び退職所得以外の所得」の合計額が20万円を超える方など

(※年間収入金額は、「収入」であり、「所得」ではないのでご注意ください)

例えば、会社員として勤務しているほかに、次のような副収入によって所得が20万円を超える場合には、確定申告が必要になります。

■副収入によって所得が20万円を超える場合(例)
・ビットコインなどの仮想通貨の売却等による利益(所得)がある
・自らが所有する住宅の一部やマンションの空き室などを有料で旅行者に宿泊させること(いわゆる民泊)による利益(所得)がある
・インターネットオークションサイトやフリーマーケットアプリなどを利用して、雑貨や衣服、家電などの売却による利益(所得)がある

給与所得者で確定申告をした方が良い人

確定申告をすることにより還付される場合があります。還付とは、納付や徴収された税金に納め過ぎがあった場合などに納税者に税金が返されることです。次のいずれかに当てはまる方は、確定申告を行うことで、所得税が返還される場合があります。

■確定申告をすることにより還付される場合(例)
(1)自分や家族のために多額の医療費を支払った方
(2)2,000円を超える寄付をした方
(3)住宅ローンなどを利用してマイホームの購入や増改築などをした方
(4)年の途中で退職し、再就職していない方

徐々に増加する確定申告者数

所得税の確定申告書を提出した人の中から、給与所得者(他の所得があっても給与所得の金額が最も大きい者も含む)を見てみましょう。

  • (表1)給与所得者の確定申告者数
    ※「税務統計 2申告所得税関係平成28年分 2-1課税状況 (1)申告及び処理の状況(その4:給与所得者)」(国税庁)を加工して作成
    ※平成28年分の申告所得税について、平成29年3月31日までに申告又は処理(更正、決定等)した者の6月30日現在の課税の事績を示したものである
    ※給与所得者で源泉徴収による納税額があっても確定申告等を要しない者は、調査の対象から除かれている

給与所得者の中で、確定申告書を提出した人は、平成25年分から徐々に増加し、平成28年分は、平成23年分から6年間の中で確定申告書を提出した人、申告をして納税をする人、さらに申告をして還付してもらう人の人数が、最も多いです。

給与所得者の中でも、副収入により20万円超の利益があり納税する人や、多額の医療費の出費があったために還付を受ける人など、確定申告をする人が徐々に増えてきたようです。

都道府県別でみる給与所得者の確定申告者数(平成28年分)

次に、地域別の確定申告者数を見てみましょう。確定申告書を提出した人、申告納税額のある人、また還付申告をした人、すべて東京都が最も多いようです。次に神奈川県、3位は、大阪府(確定申告書を提出した人・還付申告をした人)と愛知県(申告納税額のある人)で、人口が多い都道府県ほど、確定申告書を提出する人が多いようです(青で表示)。

  • (表2)都道府県別・給与所得者の確定申告者数
    ※「税務統計 2申告所得税関係平成28年分 2-1課税状況 (4)都道府県別の課税状況(その4:給与所得者)」(国税庁)を加工して作成
    ※この表は「(1)申告及び処理の状況」を都道府県別に示したものである

終わりに

今回は、所得税について調べてみました。確定申告書提出期間中(2/16~3/15)に「確定申告書作成会場」を開設している税務署も多いと思います。確定申告書を作成する際に不明な点がある場合は、最寄りの税務署に問い合わせを行い、必要に応じて確定申告書作成会場に足を運んでください。税務署の方々が丁寧に作成のサポートをしてくれます。特に所得税が還付される可能性がある方は、確定申告書を提出して適切な還付を受けてください。

そして自分が納付している税金の金額は、どのようなに算出されているのか、納付した税金はどのように使われているのかを知ることにより、税金を身近に感じることができると思います。

高鷲佐織(たかわしさおり)

ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。

資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。