今回のテーマは「掃除機」だ。何か前に同じようなテーマなかったか? と思ったが、やはり「掃除機VSほうき」というテーマで1回書いている。

これは「掃除機VSほうき」で掃除機がほうきを制したので、今回の「掃除機」は「頂上決戦」という意味だろう。

もしくは、担当が前のテーマをすっかり忘れている、という可能性もあるが、これはお互いのために「前者」の理由ということにしておきたい。

そんな熾烈なおそうじバトルの覇者「掃除機」であるが、なんと、最近使った。私が掃除機を使う、というのは「10年ぶり2回目」のような、甲子園出場級の快挙である。

しかし、掃除機を使ったのは冒険家の間で「あそこはヤバイ」と噂の「私の部屋」ではない。

「車」だ。しかし、車と言えど舐めてもらっては困る、何せ私の部屋の次に汚い。前にも言ったかもしれないが、私は会社に所在がないので車で昼飯を食べている、大人の便所飯だ。

食べる物は大体、満足1本バーとかなのだが、あれはグラノーラをチョコで固めているため、結構粉とか粒が飛ぶ。1日に飛ばす量が例えわずかでも、1年300日飛ばし続けると、車内はかなり迫力のあるロケーションになってくる。

またその際出たゴミを、コンビニ袋にためて、なかなか捨てず、いっぱいになったら次のコンビニ袋にためる、ということを繰り返すため、最終的に「車内全体がゴミ箱」というスケールがでかい感じになってくる。

そんなかなりの「ダイナミック・カー」なのだが、私以外乗らないので、ゴミがゴミ箱に乗って何が悪い、と私が乗れなくなるまで掃除をしてこなかったのだが、ある日夫が突然「飲みに行くので、上司と一緒に車で送って欲しい」と言い出した。

一大事である。この期に及んでまだ恥という感情があることに驚くと思うが、他人、それも夫の上司をこの車に乗せるのはまずい、まずスペースがないので物理的に乗せることができない

よって、その前に車を掃除することにした。まず、主だったゴミを全部捨てたが、さすが長い年月かけてダメージ加工された車内である、全然片付いたように見えない。

やはり、車内全体にちりばめられた「昼飯跡」の存在がでかい。「一人一人の力は小さくてもそれを合わせれば大きな力となる」という、道徳の基本がこんなところで発揮されてしまっている。

これを何とかするには「掃除機」が一番だろう。よって久しぶりに掃除機を手にした次第である。

うちにはダイソンのような高級品ではないが、なかなか吸引力に優れた掃除機がある、もちろん夫が買ったものだ。しかし、その掃除機はコードレスタイプではない。

残念ながら、家の中に車を入れるには、うちの玄関幅は狭すぎる、仮に入ったとしても別のところを掃除というか修理する必要が出てきてしまう気がする。

だが、外に出てみると、駐車スペース横の壁に屋外コンセントがあった。まるでこの事態を見越していたかのようである。おそらくハウスメーカーは勝手にコンセント付けたりしないだろうから、我々が「ここにつける」と言ったのだろうが、全然覚えていない。

ただ、何の脈絡もなくつけたりしないだろうから、おそらくメーカーに勧めらてつけたのだろう、家というのは色々計算されて作られているのだと感心した。

ともかく「これで勝つる」と、掃除機で車内清掃をはじめたのだが、みなさんは掃除をしない奴がするたまの掃除の最大の特徴をご存知だろうか。

「すぐ飽きる」だ。もっと性質が悪いと「最初、猛烈にやる気があって、すぐ飽きる」。これになると「根本的大掃除だ」とまず全てのモノをひっくり返した上で、途中で飽きるため、最初より汚れてしまう。

幸い車だったため、最初に車をひっくり返したりはしなかったが、早々に飽きて「もうこれでいいや」と掃除は打ち切られた。しかしそれでも最初よりは革命的にキレイになったのである。

その後、革命的にキレイになったはず私の車は、夫に「車掃除してくるね」と連れて行かれ、生まれ変わって帰ってきた。

「キレイと思うレベルが低い」

これも掃除しない奴あるあるだ。

筆者プロフィール: カレー沢薫

漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。「やわらかい。課長起田総司」単行本は全3巻発売中。