漫画家・コラムニストとして活躍するカレー沢薫氏が、家庭生活をはじめとする身のまわりのさまざまなテーマについて語ります。
先日、スマホの緊急地震速報が鳴り、その音が怖過ぎて泣いた。
そんなわけで今回のテーマは「地震」である。
日本は全体的に地震が多い国だが、それでも地域差があり、我が村はあまり地震が起こらない場所なので、震度3ぐらいで全員泣き出す。
実際その時我が村は震度3程度だったのだが、もちろん泣いた。
幸い、すすった鼻が直通で口にやって来た時点で揺れが収まり、大事には至らなかったが、ただ一つ言えることは「地震が来ても泣くことしかできない」ということである。
他にできるとしたらツイッターに「揺れ」とつぶやくぐらいだ。
ツイッターに「揺れてる」「長い」とつぶやくことに何の意味があるのか、それで揺れが止まるのか、そうしている間にも風呂の水をたくさん飲むとか、何らかの災害対策をした方が良いのではないか。
そう思っていたこともあったが、地震などが起こった時というのはとにかく不安であり、1人でいれば尚更だ。
その点で言うとツイッターというのは常に人間が燻り続けている場所であり、どれだけ「散れ!」と、竹箒を振り回して追い払っても、いつの間にか戻ってきている場所である。
つまりツイッターは人が大勢いる場所なので、手を擦り合わせながらその輪の中に入って「地震やばかったー」「大丈夫―?」という何も生み出さないやりとりをするだけでも安心するのである。
災害時に一番大事なのは「落ち着く」ことである。
ツイッターに「ゆれれれれ」とか、いい歳して落ち着きに欠けるつぶやきをすることで落ち着きを取り戻せれば安いものである。
さらに見ている方も、その時点では「とりあえず生きている」という生存確認ができる。ただしつぶやきが「クェrチュイオp」の場合は「落下物がキーボード直撃」の可能性があるので、見かけた人は別の方法で安否を確認していただけると幸いだ。
むしろ、平素は時間を大量無銭飲食しかしないツイッターが一番有益になるのが災害時かもしれない。
だが、いつも通りずっとツイッターに張り付いていたら「水没」などの原因で電子機器が壊れ、ツイッターすらできなくなる恐れがある。
そもそも、地震が起こった時どのような行動を取るのが正しいのか、知っているようで知らない。
先日地震が起こった時も、とりあえず机の下に隠れようかと思ったが「いや、逆に机の下は危険だった気がする」という、いつもの逆張り野郎思想が働いてしまい、結局、椅子に座りツイッター画面を見ながら揺れに身を委ねるという状態になってしまった。
「通常運転」という意味ではこれ以上なく落ち着いた姿だが、本や天罰などが落ちてきたら即死である。
その後災害についてのHPを調べてみたところ、やはり「机の下などに隠れる」は正解だそうだ。
そして「すぐに外に飛び出さないようにする」とも書かれているので「とりあえずツイッター」も正解と言えるかもしれない。
地震の際は窓やドアが変形し脱出が不可能になる場合があるため、ドアや窓を開けるのも大事らしいのだが、冬場だと「寒い」という理由で躊躇してしまいそうなので、できれば今回のような冬場の地震は避けてもらいたい。
さらに、火事を防ぐために火元は消し、落下物の破片を踏まないよう、靴下やスリッパなどを着用しろ、とのことだ。
幸いうちはオール電化なので、火事の心配は少ない。ただ逆に停電の時に詰んでしまい、原始人より文明が低くなるのがたまにキズだ。
スリッパと靴下だが、私は基本的に裸足である。表向きは「裸足の方が健康に良いから」だが、実際は人型ゴリラ、もしくはゴリラ型の人なので、極力体に何も身につけたくなく、気がつくと他人の家で靴下を脱ぎ始めるなど却ってゴリラっぷりが目立つので、最初から履かないことも多い。
この調子で行くと他人の家でうっかり全裸になりそうなので、最初から服も着ない方が良いのかもしれない。
裸足ゆえに気がついたら、足の裏にカピカピの米粒やパブロソの黄金の切れ端が突き刺さっている。人よりは強靭な足の裏になっているとは思うが、ガラス片などとの勝負は分が悪い。
また、よく大きめの地震が起きたあと「部屋が大変なことになった」という写真がツイッターにアップされるが、その「大変なことになった部屋」が私の平常部屋である。常に地震アフターでありビフォアは存在しない。
つまり、最初から大変なことになっているので、地震で大変になることはないのだ。
地震による物の落下を防ぐには「最初から落下させておく」、つまり「床に置く」が俺のアンサーだ。
ただし、床に物を置くと「転倒リスク」が爆上がりするので、地震が来た時慌てて逃げようとすると、震度1でも大怪我をする事態になりかねず、つまずかないように落ち着いて避難する必要がある。
つまり、地震が起こった時は、まずツイッターに「揺れ」とつぶやき、落ち着くのが正しい。
ぜひ地震対策HPにもそう記してもらいたい。
