前回から、出世が早い人=偉くなる人ということで、成果を出し続けられる人と定義して、その要素をみなさんと一緒に考えてきました。今回はその第2章です。

  • 今からでも間に合う出世術

(1)暗黙のルールに適応するが勝ち

イメージ評価という見えないフィルタ

みなさんは学校や部活、仲良しグループなどにおいて、その「コミュニティ」を構成している個々人をどのように評価しているでしょうか。特に会社の中では、仕事ができるかどうかという「業務遂行力」という軸で評価を行っていると思います。例えば、中途採用で入ってきた人などは特にこの「あの人仕事できるの? 」という目で入社から数か月社内での値踏みにさらされることになります。部活でも途中から入部してきた人に対しては「あいつうまいのか? 」という軸での評価は確実に存在しますよね。

一方で、人の集団の中での評価軸、実はもうひとつ存在するのです。みなさんは集団の中でこんな会話をしたり、耳にしたりすることはないでしょうか。「○○っぽい」「○○らしい」というものに代表される会話です。さらには「あの人ウチの会社に合ってないよね」とか「あの人、意外とウチの会社にフィットしているよね」というもの。この"合っている"とか"フィット"とは「何」に対する適合具合を測り、評価しているのでしょうか。これは平たく言うと「イメージ」であり、その組織が持っているルールや慣習、好まれる言動や所作、に対する適合度を「イメージ」の中で合ってない、フィットしている、と評価し表現しているのです。

つまり、集団の中で行われている評価には2種類あり、どんなに成果主義的な組織においても業務遂行力が100%のウェイトで評価されていることはなく、確実に組織ルールや慣習への適合度という評価軸=「イメージ」評価が存在するのです。この評価軸を「組織適応力」と呼んでいますが、組織によって「業務遂行力」と「組織適応力」の評価ウェイトは異なります。

傾向としては、競争環境にない集団は業務遂行力で差をつけることが難しいため、組織適応力の評価ウェイトが高くなる傾向があります。みなさんの会社は、どんな評価ウェイトでしょうか。社内で仕事はできるのになぜか出世しない人、中途で入ってきて前の会社のルールを主張し合わせようとしない人、いませんか。彼らはこの「組織適応力」という評価軸が組織内に存在することを認識できていないのです。

成果を出し続けられる人の多くは、この合わせるべき組織の慣習や求められる言動を読み解く力があり、さらにはそれに合わせに行くことができる、ということになります。組織はイメージ評価という見えないフィルタであなたを評価しているのです。

(2)指示内容を吟味すれば、ライバルに負ける

組織内ロスタイムの堂々一位

皆さんの会社で無駄な時間は何ですか? と問うてみると、会議であったり、強制的な飲み会などのイベントだったりと、いろいろと思い浮かぶと思います。ここでは、皆さん自身が起こしている時間の無駄(=ロスタイム)について考えてみましょう。個々人の社員の身の上で起きているロスタイムで非常に多いのは、「吟味する時間」です。ではこの吟味する時間とは「何を」吟味する時間なのでしょうか。

みなさんは日ごろから意識する、意識せざるに関わらず社内のルールや方針、大小さまざまな上司の指示を「吟味」しています。ここでいう吟味は、やるべきか否か、指示の通り進めて危険はないか、そもそもこの仕事が好きか嫌いか、というものです。そのルールや方針によって皆さんの業務に支障が出ている事実(=不具合)は報告責務を負っていますし、指示が、「強化」「徹底」「改善」といった表現に終始し、何をいつまでにしたら100点なのかがあまりにもあいまいな場合は、明確なゴールを目測するために上司などしかるべき対象に確認をする必要があります。

しかしながら、それ以外の場合、これらの吟味はただの「ロスタイム」です。ロスタイムは何も生み出していないアイドルタイムなため、まわりまわってみなさん自身が損をします。このため、明確な指示は速やかに取り掛かる必要があります。

そもそも、上司は上司たる責任を果たすためにみなさんに役割を割り振っています。その采配によって生じた結果責任は上司に付帯するため部下が上司の指示を吟味し、取捨選択するという機能自体が付与されていないことになります。

成果を出し続ける人は、とにかく速やかに取り掛かる人、ということになります。ロスタイムなく速やかに取り掛かる姿勢は、前述のイメージ評価にも大きく影響します。仕事を割り振りやすい部下はそれだけの量をこなすことになり成長の糧を得られることになるわけですが、吟味、選択でロスタイムが生じている人はこの糧を得られません。

会社の○○がムダ、上司の○○がムダ、という前に自身の身の上で起きているロスタイム、そこで立ち止まるのが本当に自身にとって得か、考えてみましょう。

著者プロフィール:冨樫 篤史(とがし・あつし)

識学 大阪支店長、講師
1980年東京生まれ。立教大学卒業後、ジェイエイシーリクルートメントにて12年間勤務し、主に幹部クラスの人材斡旋から企業の課題解決を提案。名古屋支店長や部長職を歴任し、30名~50名の組織マネジメントに携わる。

組織マネジメントのトライアンドエラーを繰り返す中、識学と出会い、これまでの管理手法の過不足が明確になり、識学があらゆる組織の課題解決になると確信し、同社に参画。

■ 株式会社識学