幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る“脇役=バイプレイヤー”にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第76回はタレントの浮所飛貴さん(美 少年)について。現在『ソロモンの偽証』(WOWOW)に出演中の浮所さん。"アイドルとして活動中"という枠組みに入るタレントさんはとてつもない数がいらっしゃいます。ただ造形美が整っているだけでは、視聴者の印象づきません。でも彼に関しては「あ、あの人……」と一介のライターの記憶にインプットされました。それはなぜか。その理由をつらつらと書いていきます。今回も完全に趣味趣向バンザイとなっておりますので、ご了承ください。

クールビューティーな演技が似合う学校の王子様

原作も大ヒット継続中、ドラマのあらすじをどうぞ。

藤野涼子(上白石萌歌)の通う高校で、同級生が自殺と断定されてこの世を去った。ただこの死が自殺ではないことを主張する告発状が、涼子や学校関係者、マスコミの元に届く。遺体発見者でもある涼子も自殺死に疑問を抱き"学校内裁判"を起こすのだが……。

原作は読了、以前公開されていた映画は未見の状態で、いざドラマ視聴。感想を一言でまとめると、面白かった。地上波のドラマでは様子見として、カテゴライズされる第1話でさえも、見入ってしまうシーンが続出していた。

まずは衛星放送だからこそできる、ギリギリの演出がリアリティを持たせてくれる。高校生の喫煙シーンに、いじめ、そして死体。ドラマを面白くさせる要素には生っぽさがありきだけれど、『ソロモンの偽証』にはそれらがディティールとして散りばめられている。

それから全国映画公開なのかと勘違いさせる、豪華な出演者たちも視聴欲をそそる。主役の上白石さんはもちろん、学園モノには絶対にいてほしい富田望希さんや、ニキビ肌の山本舞香さん……書き出すとキリがないのだけど、適材適所という言葉がよく似合う「ああ、このシーンでこの人が欲しかった!」の連打なのである。

まだ再放送が続くのでネタバレは控えるが、今後続くオリジナルドラマの放送を鑑みて、加入をしてもまったく損はない。ちなみにこの記事はステマではない。

この作品で今回フィーチャーする浮所さんが演じているのは、主人公・涼子の幼なじみ・野田健一役。朝ドラでもなんでも、幼なじみ役は好ポジションである。99%の確率でかっこいいし、最終的に恋のお相手になる可能性も高い。健一は同級生の事件に巻き込まれそうになっていく涼子を、近くで優しく、時には強く見守っている。

いやひょっとして素は可愛い乙女の塊か……?

浮所さんの演技に触れたのは『真夏の少年〜19452020』(テレビ朝日系・2020年)。コロナ禍で混沌としていた最中に現れた、清涼感ある作品だった記憶がある。戦争時代からタイムスリップしてきた兵士と、高校生たちによる夏の思い出が描かれていた。ここで彼はクラスのクールビューティー的な存在。「そうだよねえ、かっこいいもんねえ!」と言ってしまいそうになる、よくできた演技、そして美しい横顔のフェイスラインがうっすらと記憶に残った。これだけならここで記憶はアップデートされずにいたはず。

そしてわたしが抱いた、どこにでも転がっていそうな印象は、年明けに覆る。

現在出演中の『VS魂』(フジテレビ系)がスタートする前のスペシャル番組でのこと。番組のメイン司会者である相葉雅紀さんから、自分がレギュラーであることを伝えられた瞬間、浮所さんはウサギさんのように飛び跳ねて喜んでいた。あれは靴の裏にバネがついていたのではと思うほど、ジャンプで喜びを表現していた。さらに「涙! 涙!」と本気で泣いていたのである。

その仕草があまりにも可愛らしかったし、ドラマで見た印象と違いすぎた。高低差が50メートルはある(想像)。そう、彼はお姉さん世代の大好物・ギャップのスペシャル版を持ち合わせていたのである。さらにここへ浮所さんがのタイがいいことを加えたい。顔はイケメン好青年なのに、体はたくましさがぶっちぎり。演技とボディという、ダブルギャップにお姉さんたちの妄想が何かと掻き立てられてしまう。

とどめは "うきしょ"さんという珍しい名字でも後押しされた。『ソロモンの偽証』で見かけたときも、すぐに「あ、浮所さん」と記憶と作品が連結。これもアイドルになるための運命だったのだろうか。

ただここまでわたしが見た一連は、天然や自然な振る舞いではなく、彼なりのブランディングかもしれない。でもインパクトは大きく、いずれにしても大成功。わたしも素通りすることなく、このコラムに至ったのだからやっぱりすごいのである、浮所さん。