10月3日よりWOWOWでスタートするWOWOW開局30周年記念『連続ドラマW 宮部みゆき「ソロモンの偽証」』(毎週日曜 22:00~放送・配信 全8話 ※第1話無料放送)で、連続ドラマ初主演を務める上白石萌歌にインタビュー。作家・宮部みゆきの同名ミステリーを原作に、物語の舞台を1990年代の公立中学校からSNSが普及する現代の私立高校に置き換え、全8話の長編で描き出した本作。"学校内裁判"を主導する高校生・藤野涼子を演じた上白石に、撮影の舞台裏や、役へのアプローチ方法、「死ぬときに全部燃やさないと(笑)!」と語るほど、「日々、赤裸々な思いを日記に綴り続けている理由」などについて聞いた。

『連続ドラマW 宮部みゆき「ソロモンの偽証」』に主演する上白石萌歌

『連続ドラマW 宮部みゆき「ソロモンの偽証」』に主演する上白石萌歌
撮影:蔦野裕
ヘアメイク:冨永朋子(アルール)
スタイリング:道端亜未

――オファーを受けたときの心境は?

私のデビュー作は2012年にWOWOWで放送された『連続ドラマW 東野圭吾「分身」』という連続ドラマで、またいつかWOWOWの連続ドラマに出演できたらいいなと思っていたので、夢が叶ってうれしかったです。今回は初めての連続ドラマの主演ということで、台本を開いて自分の名前が最初に目に入り「あぁ自分が本当に主役なんだ」とすごく新鮮でした。既に映画化もされていて、私には重すぎるほど偉大な作品なので不安もありましたが、やらせていただくからには原作とは時代や年齢設定も異なる令和版の『ソロモンの偽証』として、新たな風を吹かせられたらと思いました。

――藤野涼子を演じるうえで、どのようなことを感じましたか?

責任感が強すぎるが故に、自分で自分の首を絞めてしまうところもある涼子のことを、どうにかして救ってあげたいという一心で、“藤野涼子”を生きようとしました。まずは私が一番彼女のことを理解してあげれば、自分自身のなかに涼子ちゃんを取り込めるんじゃないかと思って、台本や原作を何度も読み返して、“藤野涼子”と対話していました。映像化作品の場合、原作本を「読んでから観るか、観てから読むか」と議論になったりしますが、私は「観てから読む派」なんです。映像だけでは分からなかった部分も「あぁ、あれはこういう意味だったのか!」と再確認ができるから、後から読むのが好きですね。「ソロモンの偽証」も当時、映画を観た帰りに文庫本を衝動買いしていたので、涼子を理解する上で役立ちました。

――上白石さんが「ドラマ版ならでは」と感じた部分はどんなところですか?

現代の高校を舞台にしているので、言葉の温度感みたいなものも原作とはずいぶん違っているんです。原作ではいじめの手段も身体的な暴力が中心でしたが、指先だけで冷たい言葉を送り付けられる恐ろしさなども、今回のドラマ版では描かれています。SNSで交わされる言葉の残酷さも実感しましたし、自分はこれからSNSとどんな風に向き合っていきたいか、自分自身改めて考えるきっかけにもなりました。

――学校内裁判を開くシーンもありますが、事前にどんな準備をされましたか?

以前ドラマ『ファーストラヴ』で被疑者の役を演じた際に初めて裁判を傍聴したのですが、今回検事の立場を演じるにあたり、改めて傍聴に行きました。検事の方の立ち居振る舞いを観察したり、裁判全体の空気を肌で感じたりしたことが、ドラマにも生かせていると思います。

――転落死を遂げた涼子のクラスメイト柏木卓也(野村裕基さん)の友人で、謎の高校生・神原和彦役を演じられた、宮沢氷魚さんの印象は?

現場で知り合う前に、舞台でお芝居を拝見していたのですが、神原は他の生徒とは違った空気をまとっている役なので、立っているだけでもちょっと別格な感じがする宮沢さんは、本当にピッタリだなと思いました。ご本人は制服が似合うかすごく心配されていましたが、たしかに高校生にしてはちょっとおしゃれすぎるというか、「メンズノンノ」っぽいというか(笑)。隠しきれていないカッコよさがありました。

――富田望生さんが映画版と同様、涼子のクラスメイト浅井松子を演じられていますね。

富田さんとはプライベートでも仲良しで、同世代の中で一番尊敬してる女優さんなんです。新たなキャストとまたガラッと違う現場で、とても良い循環が生まれていた感じがありました。富田さんのお芝居で再び“松子ちゃん”を見られて、一緒にお芝居ができて幸せでした。

――シリアスな場面が多い作品ですが、現場はどんな雰囲気でしたか?

劇中ではあまりみんなで笑い合うシーンがなかったのですが、その反動もあってか、まるで本当の学校のような和気あいあいとした空間が広がっていて。今でもよく連絡を取り合っているほど、素敵な同志に恵まれてうれしかったです。ムードメーカー的な方ばかりが集まっていたのでちょっと騒がしかったくらいなんですが(笑)、皆さんの明るさに助けられながら、シリアスな場面も最後まで走り切ることができました。個人的には、生徒同士のやりとりだけでなく、高校生から見た「大人像」のようなものもテーマの一つになっていると感じたので、茂木記者とのやりとりに重きを置いて演じていたところもあるんです。記者役を演じた橋本じゅんさんとすごく良いシーンが作れたと思うので、ぜひ生徒と大人たちとの対立にも注目しながら、観ていただければと思っています。

――学校内裁判シーンの撮影の様子はどうでしたか?

裁判シーンの撮影は、さすがに緊迫した空気が続きました。撮影を終えて部屋に帰ると、自分の電源がすべて切れてバタっと倒れ込んでしまうくらい、撮影中は気を張っていたような気がします。何度も悪夢を見ましたし、夢の中にもみんなが揉めている場面が出てくるほどでした(笑)。私は涼子ほど聡明ではないですが、プレッシャーを抱え込みやすく、役を演じる時に必要以上に自分を追い詰めてしまうところがあるんです。「藤野家」はお父さんが刑事、お母さんが弁護士なので、裁判を開くにあたってもいろいろ相談にのってもらっていましたが、私にとっては姉の萌音がおそらくこの世で一番の理解者で、私自身いつも家族に支えてもらっているので、そういうところも涼子と少しリンクするような気がしました。