幼少期から熱血ドラマオタクというライターの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第42回は俳優の森田甘路さんについて。現在『知らなくていいコト』(日本テレビ系)に出演中の森田さん。この名前を聞いてすぐに彼のことを思い出すことができるのなら、私と同じドラマ狂だと思います。この連載担当の編集さんに彼の名前を推薦したときでさえも、一瞬「?」という沈黙が流れたくらいです。でも写真をよーく、よーく見てください。最近放送しているテレビドラマでは見かけないクールがないほど、大活躍の俳優さんなのです。

お笑い、ほんわか、シリアス……と、キャラ総なめ

森田甘路

森田甘路

『週刊イースト』編集部で、特集班として日々スクープを追いかける真壁ケイト(吉高由里子)。母親の遺言により自分の父親が、殺人犯の乃十阿徹(小林薫)かもしれないという事実に直面する。知りたかったような、知りたくなかったような過去。真実を突き止めるために、取材同様にケイトが動き出す。そして元恋人の尾高由一郎(柄本佑)も手を貸すのだが、いつの間にか二人は不倫関係に陥ってしまう。

というのが『知らなくていいコト』のあらすじ。このドラマ、私の中で期待以上の楽しさで非常に熱い。ちょっと勝手なことだと、好きになったポイントを書かせてほしい。吉高さんの憑依力はもう当然のことだとしよう。それ以外にも、ちょっと残念な彼氏キャラが定番になった重岡大毅(ジャニーズWEST)さんの登場。抱かれたい度上昇中の柄本佑さんの演技。携わっている分野は全く違うけれど、編集部が舞台となると細部を注目してしまう。先々週の放送では、尾高が経理に領収書を裏紙に貼っているシーンを見て、

「同じだよ~~」

と、一人で盛り上がってしまった。

……申し訳ない、話を本題に戻そう。この作品で森田さんは『週刊イースト』で記者の佐藤幸彦役を演じている。ケイトのサポートをするポジションだ。目立とうともしないし、ひねくれているわけでもない。きちんと与えられた仕事をまっとうしているイメージ。まさにバイプレイヤー。

森田さんの存在に注目したのは『突然ですが、明日結婚します』(フジテレビ系・2017年)の小野広紀役だ。内容の詳細については割愛するけれど、主役の先輩、同居人、中村アンさんの彼氏役という、見れば誰もが気になってしまう位置だった。月9という花形作品で美男美女の演者たちに囲まれている、可愛らしいぽちゃキャラが目に飛び込んでこないはずはない。そんなビジュアルにも関わらず、さらりと御曹司だという設定もまた和ませた。

『私結婚できないんじゃなくて、しないんです』(2016年・フジテレビ系)でも、藤木直人さんの横で割烹料理の板前見習いを演じていたことも、うっすら覚えている。でもやっぱり月9のインパクトは大きい。

昨今の健康ブームの影響なのか、ぽちゃキャラの俳優さんはずいぶん減った。お笑い芸人には多いけれど、キャスティングの幅が限定されがちでリスクのある体型なのかもしれない。そんな中で森田さんは『突然ですが、明日結婚します』の出演以来、作品が途切れることはない。

あくまでも一般的な話だけど『太っている→脂肪がある→汗をかく→なんとなく不潔??』という印象を受けがち。芸人さんであれば、この特徴をギャグに持ち込んでしまうこともあるだろう。でも彼にはそういう悪印象がない。むしろ、可愛らしい雰囲気さえ放ってしまうレアキャラなのだ。

バランスのいい自己愛を備えた男性と思いたい

さらに芸名に"甘い"という文字を取り入れているのも色々と彷彿させるものがあっていい。

これは私の予想なのだけど、森田さんはバランスがいい自己愛を担保している人なのだ。SNSなどを通じて簡単に装った自分を創り上げることができるようになった昨今、自己愛というキーワードは何かと注目を浴びている。自己愛とは自分を好きで、自信があること。でもこれができずに密かに苦しんでいる現代人が多いことを取材で聞いた。

そのコンプレックスを跳ね返したいという人が実は多くいたために、筋トレがブームになったとも聞いた。けして運動をすることが悪いわけではない。むしろ正しい。でも過度なストレス発散になっているパターンもあるという。自分のスタイルに自信が持てないでいることを吹き飛ばすために、体と向き合う。そして鍛える。

でも森田さんは自分の風貌を逆手に取ってブレイクをした。これは正しい自己愛があるからこそ、表舞台に立つこと選んだという結果だ。めちゃくちゃイケメンが原宿でスカウトをされているのとは、全く意味が違う。彼はいつだって、正々堂々と胸を張っている気がする。私が言うのも恐れ多いが、とても魅力的な男性なのだろう。

偉そうなことを並べたけれど、私は効果もさほど体型に見られないけれど筋トレに通っている。1年以上頑張っていても、二段腹が消える気配がない。正しい自己愛を森田さんから教えてもらいたい。

小林久乃

ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。地元タウン誌から始まり、女性誌、情報誌の編集部員を経てフリーランスへ。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事も持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には10万部を超えるベストセラーも。最新刊は『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。