ネット社会の現代では、グルメのブームに火が付くのも"SNSがきっかけ"ということも多い。ここでは、流行に乗り遅れないために知っておきたいSNSで話題の"バズるグルメ"をご紹介。トレンドに敏感なクライアントや同僚たちの前で恥をかかないように、しっかり話題のグルメを押さえておこう。第3回は「#生食パン」。

  • 次のパンブームを担う「#生食パン」

    「考えた人すごいわ」の生食パン「魂仕込」(800円税別/2斤)。まるでケーキのような口どけ

焼かずに食べてもおいしい「#生食パン」

コッペパンの次のパンブームといわれている生食パン。数年前からInstagramで「#生食パン」というハッシュタグをつけた投稿が増えており、2019年5月現在で、約6.4万投稿があった。

生食パンとは、焼かずにそのまま食べてもおいしい食パンのこと。食材や製法にこだわる店が多く、価格は一般的な食パンより高めだ。

Instagramの投稿を見ると、多くは生食パンを主役にした写真だ。1斤または2斤全体の写真、カットした断面の写真、店の紙袋と一緒に撮った写真など構図はさまざま。味については「ふわふわ」「もちもち」「甘みがある」といった表現がよく使われている。また、店で買うのではなく、レシピサイトなどを参考に自宅で生食パンを焼いたという投稿も多い。

パン以外には、店の行列の様子や外観もある。人気店では30分~1時間ほど並ぶことも珍しくないようで、「やっと買えた」と喜びを表現した投稿もある。

生食パン発祥の店「乃が美」

「#生食パン」のタグがついた投稿写真のなかで1番目につくのが、高級「生」食パン専門店 乃が美の『乃が美の「生」食パン』だ。店名入りの紙袋と一緒に投稿している人が多いのですぐにわかる。

  • 乃が美の「生」食パン(1本864円税込/2斤)

2013年に創業し、いまでは全国に130店舗以上を展開。開店当時、生食パンというものはほかになかったというから、いわばここが発祥の店。Instagramには「#乃が美」のタグだけで約13.5万投稿もある。

発売のきっかけは、代表取締役社長の阪上雄司さんが、老人ホームで「食べているときと笑っているときが一番幸せ。でも朝食に出るパンは耳が固くて食べられない」というおじいちゃんやおばあちゃんの声を耳にしたことだったそう。「朝食で、耳までやわらかいふわふわの食パンを食べさせてあげたい」という熱い思いが、開発のヒントとモチベーションになり、2年の歳月をかけて開発。納得のいくやわらかさ・きめ細やかさ・甘み・香りにたどりついたそうだ。

原材料と製法にこだわったため、価格は1斤432円税込と、市販の食パンの3倍以上。そのため当初は販売に苦労したというが、メディアに取り上げられるようになると知名度は徐々に高まり、行列ができるようになっていった。とくに2014年に雑誌『&premium』の特集「日本の食パン、名品10本」に選ばれたときの反響は大きかったそうだ。

乃が美の生食パンは卵不使用で、口どけがよく、ほんのり甘い。焼き上がりは腰折れ(側面が折れる)に近いぎりぎりのやわらかさにしているそうだ。

客層は店舗によって違うという。繁華街の店舗では贈答用に買い求める人が多く、オフィス街近くではビジネスパーソンが手土産に、また女性がオフィスの朝食会用に数本買っていくこともあるとか。一方、住宅地の店舗では地域住民の利用が多く、年配の人がメインの客層という店もあるそうだ。

「耳までやわらかいため、老若男女に好んで召し上がっていただいております。また、食べるだけでなく手土産として人にあげたくなるような生食パンです。世代を超えて愛されるパンになるよう努めてまいります」と阪上さん。Instagramではどうしても若い人の投稿が目立つが、実はかなり幅広い世代に愛されているようだ。

なお、乃が美では最近パナソニックのホームベーカリーで作る生食パンのメニューも監修。それを作った人の「#おうち乃が美」というタグをつけた投稿も増えている。

ユニークな店名の高級食パン専門店が続々

生食パンを販売する高級食パン専門店は全国各地に増えている。Instagram投稿の位置情報を見ると、ユニークな店名も多い。たとえば「午後の食パン これ半端ないって!」「まじヤバくない?」「うん間違いないっ!」など、どれもインパクト抜群だ。

  • 店名のインパクトもすごい「考えた人すごいわ」(清瀬店)

なかでも投稿写真数が多いのが「考えた人すごいわ」。2018年6月に東京都清瀬市に、同年11月に横浜・菊名駅前にオープンした高級食パン専門店だ。ユニークなネーミングは、ベーカリープロデューサーの岸本拓也氏のアイデアだという。

「この店名は食べた人が"すごい"と共感してくれなかったら成り立たないという危険もあります。でも、商品に自信があるからこそ、この名前でいこうと決めました」と話すのは同店を運営する「かんながら」代表取締役の大舘誠さん。その自信を裏付けるようにInstagramには、「ほんま考えた人すごいわ」「本当に考えた人凄いわ……」というコメントつきの投稿もある。

リーフレットに書かれている「まるでケーキのようなパンなんです」という説明をInstagramのハッシュタグとして使っている投稿も多い。「ほのかな甘みとバターの香りが広がったと思ったら、口のなかでパンがとろりと溶けていく、まるでケーキのような食感です。耳が驚くほど薄いので、とろけていく食感の邪魔をしません」と大舘さん。その食べやすさから50~70歳代くらいの年齢の客も多いそうだ。

食べ方は自由! あえて焼いて食べる人も

生食パンは焼かずに何もつけずにそのまま食べるのが醍醐味だが、Instagramの投稿を見ると、ジャムやバターをつけたり、具を加えてサンドイッチにアレンジしたりしている人も少なからずいる。また、「生食パンだけどあえて……」と断りつつ焼いている人もいた。

「考えたすごいわ」の大舘さんは、「トーストしても生で食べるのと違った味わいがあります。カリッ、そしてモチッとした食感があり、生にこだわったパンだからこそ味わえる、究極のおいしいトーストパンが味わえます」と同店のパンについて説明する。

お店も増え、楽しみ方も多彩になっている生食パン。ちぎって食べられる手軽な生食パンは、忙しい朝の大きな味方にもなる。つい食べ過ぎてしまうおいしさで、朝から元気になれそうだ。