ネット社会の現代では、グルメのブームに火が付くのも"SNSがきっかけ"ということも多い。ここでは、流行に乗り遅れないために知っておきたいSNSで話題の"バズるグルメ"をご紹介。トレンドに敏感なクライアントや同僚たちの前で恥をかかないように、しっかり話題のグルメを押さえておこう。第4回は「#大とろ牛乳」。

  • 群馬発祥の「大とろ牛乳」。不思議な食感でクセになる人が続出!

群馬生まれのスイーツ「#大とろ牛乳」とは

「大とろ牛乳」というユニークな名前のスイーツをご存じでしょうか。その名の通り牛乳を使った冷たいスイーツですが、アイスともプリンともいえない"シャリシャリ、とろ~り"とした不思議な食感が特徴です。もともとは知る人ぞ知るご当地スイーツでしたが、Instagramにも投稿数が増えつつあり、「#大とろ牛乳」のハッシュタグが付いた投稿は(表記を誤った「#大トロ牛乳」も含め)1.5万件以上にのぼります(2019年6月現在)。

SNS映えするスイーツといえば、クリームやソースを使ってカラフルに飾ったり、皿からはみ出るような大ボリュームだったりと、見た目のインパクトを重視するものが定番。ところが、SNSにアップされている大とろ牛乳の写真を見ると、至ってシンプルです。プラスチックの容器に素朴なフォントで書かれた「大とろ牛乳」の文字。中身はミルク感を感じさせる白い大とろ牛乳と、その上にイチゴやクッキーなどのトッピングが乗っていますが、他のSNS映えするスイーツと比べても控えめな印象です。

写真に添えられたコメントやチェックイン(位置情報)を見ると、主に群馬県みなかみ町の店舗で購入したという投稿が目立ちます。「ずっと気になってたから遠出して来た」「みなかみの定番」といったコメントや「#群馬スイーツ」などのハッシュタグと一緒に投稿されていることが多く、「売り切れ直前でギリギリ買えた」という投稿も。食べた感想は「ひんやり×シャリシャリの新食感」「アイスとはまた違う感じ」など、不思議な食感に驚いている様子です。

都内で唯一「大とろ牛乳」が購入できる店舗へ

この大とろ牛乳、調べてみたところ、デパートなどの催事や期間限定店舗を除いて、都内で常時販売しているのはわずか1店舗のみだそう。その貴重な店舗、早稲田にあるパティスリー「D-style TOKYO(ディ スタイル トキヨ)」に伺いました。

  • 都内で唯一大とろ牛乳を購入できる「D-style TOKYO」。フランス菓子をベースにしたケーキやお菓子が人気で、店内にはカフェスペースも

話を伺ったのは、大とろ牛乳のプロデュースを手掛けるジャナイト代表の岩﨑晃朗さん。大とろ牛乳の本店は、2011年から営業している群馬県みなかみ町の小さなお店。数年前に本店がみなかみのスキー場で出張販売していたところに岩﨑さんがたまたま訪れ、今まで食べたことのない食感とおいしさに感動。「より多くの人に知ってほしい、食べてほしい」と、本店を運営する大とろ牛乳の社長に販売プロデュースを申し出たといいます。

もともと地元で評判だった大とろ牛乳は、2014年に全国放送のテレビ番組内の企画「ご当地グルメグランプリ」のスイーツ部門で優勝したことで知名度が一気にアップ。本店には全国から「一度食べてみたい」という人が殺到しました。その後も人気ブロガーやインフルエンサーが紹介したSNS投稿がバズり、人気はさらに加速。本店には連日長い行列ができるようになりました。 「大とろ牛乳」というキャッチーなネーミングは、本店を運営する女性社長のひらめきによるものだそう。実は先に商品名を思いつき、その名前に近づけるために商品を開発したというユニークな経緯があるといいます。

大とろ牛乳の原料に使われている牛乳は、群馬県で生産される「パスチャライズド牛乳」に限定されています。時間をかけて低温殺菌処理を施し、牛乳臭さを感じないスッキリとした風味が特徴です。その牛乳に数種類のコラーゲンをブレンドし、専用の機械で空気を入れながらかくはんすることで、独特のシャリシャリ感、とろとろ感が出せるといいますが、「詳しい製法はトップシークレット」と岩﨑さんは話します。

  • 香ばしい香りの「罪なチョコクッキー」をトッピング。店舗によってさまざまなトッピングが楽しめるのも魅力

原料や製法にこだわっているからこそ大量生産が難しく、また適切な温度管理も必須。そのため、取材時で常時販売しているのは群馬県みなかみ町にある本店、福島県郡山市にあるショップ「モアフェリシア」、そして東京・早稲田にあるD-style TOKYOのみ。いずれの店舗も毎日数量限定で販売しており、店舗ごとに異なるトッピングを楽しめるそうです。

ストロー派? それともスプーン派? 食感の違いを楽しんで

D-style TOKYOで販売している大とろ牛乳を実食させてもらいました。トッピングなしの「プレーン」(550円)を注文。プラスチックの容器の中に大とろ牛乳、太いストローとスプーンが付いています。ポイントは、提供されたらなるべく早く、できれば5分以内に食べること。10分も経つと中身が溶けてしまい、独特の食感を楽しめなくなってしまうそうです。

岩﨑さんから「まずは混ぜずにストローで。その後スプーンですくって食べてみてください」と勧められたとおり、最初のひと口はストローでいただきます。シェイクのようななめらかな舌ざわりの中に、かすかにシャリッとした食感がありますが、飲み干す直前にはとろりとしたテクスチャに変化したような…? 飲み始めと飲み終わりで食感が変わったように思える、不思議な感覚です。

続いて、スプーンですくって食べてみると、こちらはよりコラーゲンの存在感を感じるプルっとした舌ざわりで、ストローで吸ったときとは食感が異なります。まさに"新食感"という言葉がぴったり! 甘すぎないミルクの風味で食べやすく、後味もサッパリしているので、SNSのコメントに「1人で3つぐらい食べられそう」といった声が多いことも頷けます。

お好みで「ゴロゴロいちご」(250円)、「罪なチョコクッキー」(200円)などのトッピングを追加することもできます。大とろ牛乳との相性を考え、いちごはやや酸味のあるものを選び、チョコクッキーは甘さひかえめでザクザクした食感にしているそうです。

  • トッピングと一緒に食べるのもおすすめ。スプーンを少し傾けても零れ落ちないほど、とろみのあるテクスチャです

"バズる"理由は不思議な食感とリピーターの支持

大とろ牛乳の新感覚の味わいに驚いた筆者ですが、岩﨑さんは「人によって食べた感想が違います。その"不思議さ"がクセになり、SNSの投稿や口コミにつながっているのかもしれません」と話します。実際、北海道の札幌にあるデパートの催事に出展した際は最高で90分待ちの行列ができた日もあったのだとか。開催期間中に何度も足を運んで購入するリピーターが多かったそうです。

バズりやすいインパクトのあるビジュアルに頼らずとも、唯一無二の魅力があれば自然と拡散される。大とろ牛乳はその好例の一つといえそうです。

大とろ牛乳を味わえるのは今のところ国内の3店舗のみですが、催事への出展や飲食店とのコラボレーションも積極的に行っており、どこかで遭遇することもあるかも? 新感覚のひんやりご当地スイーツ、暑くなるこれからの季節にぜひ味わってみては。

※価格はすべて税込です。