ネット社会の現代では、グルメのブームに火が付くのも"SNSがきっかけ"ということも多い。ここでは、流行に乗り遅れないために知っておきたいSNSで話題の"バズるグルメ"をご紹介。トレンドに敏感なクライアントや同僚たちの前で恥をかかないように、しっかり話題のグルメを押さえておこう。第2回は「#肉寿司」。

  • "フォトジェ肉"な「#肉寿司」

    【肉寿司】の「赤身四種盛り合わせ」(900円)。馬肉をはじめ、鴨や牛の赤身を食べ比べできる

肉と寿司。2大グルメを一度に! 贅沢な気分で味わう「#肉寿司」

肉料理といえば、SNS映えするグルメの代表格の一つ。「#肉スタグラム」「#フォトジェ肉」といったハッシュタグと共に、焼肉、ステーキ、ハンバーグなど、さまざまな肉料理の写真がSNS上にアップされている。その中でも特に華やかでバリエーション豊富なのが、肉を載せた寿司。Instagramで「#肉寿司」というハッシュタグの付いた投稿は、2019年5月現在で23万件以上にも及んでいる。

老若男女に愛される「肉」と、日本の国民食である「寿司」。この2大グルメを合わせた肉寿司は、まさに美味と美味の最強タッグ。Instagramの「#肉寿司」投稿を見ても、「おいしすぎて幸せ」「何貫でも食べられる」など、興奮した様子が伝わってくるコメントを添えているものが目立つ。

投稿されている写真の多くは、シャリの上に肉を載せたシンプルな握り寿司スタイル。ぶ厚くカットした肉を載せたものや、シャリが見えないほど大きな薄切り肉を載せているものも多い。中には、肉を細かくカットして乗せた軍艦巻きや、海苔の代わりに薄切り肉でシャリをぐるっと巻いた軍艦巻きという変わり種も。肉の種類は馬肉、牛肉が多いようだ。

はじまりは馬肉から「肉寿司」のルーツとは?

いつ、どこで、肉を載せた寿司が生まれたかは定かではないが、「肉寿司」という商品は2010年、東京の恵比寿横丁に開業した【恵比寿横丁 肉寿司】で生まれ、実はこのときに「肉寿司」として商標登録もされている(※本記事では料理のことを指す場合は「肉寿司」、店を指す場合は【肉寿司】の表記を用いる)。

「肉寿司」の誕生について、【肉寿司】を運営するガーデンの肉寿司事業部長・秋山裕一朗さんに話を聞いた。秋山さんによると、初めから「肉の寿司を作ろう」と狙って始めたわけではなく、開業当時は今よりもマイナーだった馬肉をもっとたくさんの人に食べてほしいという目的があって開発に至ったという。

恵比寿横丁への出店ということもあり、江戸時代の人々が気軽に屋台で飲食を楽しんでいたように馬肉を食べてほしい、昔ながらの食文化を横丁風に楽しんでほしいと、馬肉などをネタに使った「肉寿司」が誕生した。オープンすると【肉寿司】は瞬く間に人気店となり、現在は東京を中心に全国40店舗以上を展開するチェーンに成長している。

  • 【肉寿司】の「名物!! さしとろ」(890円)。目の前で肉を炙る様子を動画に収める人が続出

【肉寿司】では馬肉の寿司を中心にさまざまな「肉寿司」メニューを提供しているが、特に売りにしているのが"炙り"だ。看板メニューの「名物! ! さしとろ」は、一貫に約80gの国産牛リブロースを使った贅沢な一品。提供時、肉の表面をガスバーナーで炙るパフォーマンスがお決まりだ。

食べる直前に肉を炙ると、香ばしさが加わるだけでなく「熱で脂が溶けて、人間の第6の味覚として注目されている"脂味"も感じられます」と秋山さん。また、肉が炎でジリジリと炙られる様子は"動画映え"も抜群。「#肉寿司」のInstagram投稿を見ると、炙りの様子を収めた動画も複数アップされていた(上の写真の肉の下にはシャリが隠れている)。

商標登録済みのため、本来であれば【肉寿司】のメニューのみが「肉寿司」を名乗ることができる。しかしながら、肉と寿司を合わせたキャッチーなメニューは多くのグルメな人々の支持を受け、さまざまな飲食店でも提供されるようになっている。今では同店の「肉寿司」以外の肉&寿司メニューも含め、23万件以上も「#肉寿司」というハッシュタグで投稿されるほど、一般名詞化して浸透してきたといえそうだ。

どれが食べたい? 「肉寿司」のアレンジ広がる

「#肉寿司」の投稿を見てみると、前述のシャリの上に肉が載った握りだけでなく、軍艦巻きや、肉の上にさらにウニが乗ったものまで、アレンジ作はさまざまだ。SNS上で特に注目されているアレンジ作品をいくつか紹介しよう。

  • 【肉寿司】の「NIKURA」(600円)。こぼれ落ちるイクラと馬肉をひと口で

・ウニを乗せた「うにく」、イクラを乗せた「にくら」
「#肉寿司」の投稿で目立ったのが、牛肉や馬肉の上にウニやイクラを乗せた寿司。それぞれ「うにく」「にくら」と呼ばれ、「#うにく」の投稿は2019年5月現在で3万件以上に及ぶ。海の幸とのコラボレーションで、見た目も味もさらにグレードアップ。また、フォアグラやトリュフなど、高級食材を乗せたよりゴージャスなメニューの投稿もあった。

・とろ~り卵黄を絡めて
現在、牛肉のユッケを生で提供することは禁止されているが、馬肉全般は生食がOK。そのため、馬肉ユッケの上に卵黄を乗せた軍艦巻きの投稿も見られた。また、小皿に卵黄が乗っており、そこに肉の寿司をつけて食べるというパターンも。TKG(卵かけごはん)も大好きな日本人にとって、卵×肉×寿司の組み合わせはたまらないおいしさだ。

・鴨、ラム、地鶏…専門店のアレンジいろいろ
「#肉寿司」投稿の多くが馬肉や牛肉を使用しているが、他の肉を使った寿司にも注目が集まっている。たとえば東京・御徒町にある鴨料理ビストロ「鴨一ワイン酒場SUN」を訪問した投稿の中には、鴨肉のハツやレバーの炙り寿司の写真まであったから驚き。その他、ラム肉のしゃぶしゃぶを提供している都内の店を訪れ、シャリの上にラムしゃぶを乗せて食べる「ラムしゃぶ寿司」を紹介する投稿も。地方では地元名産の肉を使った寿司を提供している店もあり、名古屋の地鶏「名古屋コーチン」を使った寿司の投稿には300件以上の「いいね! 」が集まるなど人気を博している。

  • 「鴨一ワイン酒場SUN」の寿司。鴨のいろんな部位の肉をシャリにのせた

日本人に愛される「肉×寿司」の海外人気は?

馬肉から始まり、豊富なバリエーションで人気の肉×寿司の組み合わせ。日本人には広く受け入れられている料理だが、外国人の反応はどうなのだろうか? 前述のガーデン秋山さんによると、都心部の【肉寿司】であっても外国人のお客の割合は1割ほどだという。「魚の『Sushi』文化は知られていても、肉の寿司というのはまだ理解しづらいのかもしれない」と秋山さん。食の安全性が高い日本の料理とはいえ、生肉を食べる文化がない国も多く、受け入れられるまでにはまだ時間がかかるかもしれない。実際、Instagramには「#nikuzushi」のハッシュタグ付きの投稿もいくつかあったが、ほとんどが日本人のアカウントだった。

しかし、秋山さんは「関西地区などでは、中国や韓国のお客様は増えつつあります。最近インバウンド向けの店取材も増えてきたこともあり、今後増えていく方向と思われます」と期待を寄せる。【肉寿司】には英語のメニューもあり、メニューの詳しい説明や醤油のつけ方など、「肉寿司」を初めて食べる外国人にも楽しんでもらえる工夫を施しているという。

恵比寿横丁から生まれたブームが全国へと広がり、いずれ世界に認められるグルメとなるだろうか? 今後ますます注目の<肉×寿司>のベストコンビ、ぜひ一度味わってみては。

※価格はすべて税込