ネット社会の現代では、グルメのブームに火が付くのも"SNSがきっかけ"ということも多い。ここでは、流行に乗り遅れないために知っておきたいSNSで話題の"バズるグルメ"をご紹介。トレンドに敏感なクライアントや同僚たちの前で恥をかかないように、しっかり話題のグルメを押さえておこう。第27回は「#あんバター」と「#あん食パン」。

  • 「あん食パン」の代表格「トミーズ」のパントースト(写真:マイナビニュース)

    「あん食パン」の代表格「トミーズ」のパントースト

「#あんバター」のブームの中に「#あん食パン」も存在する! ?

最近、Instagramでよく見かけるのが、食パンの上にたっぷりとあんこが塗られている写真だ。真ん中にバターが載せられているものも多い。これら“あんこ+バター”の「#あんバター」だけでもInstagramで8.6万投稿、「#あんバタートースト」だと3.4万件の投稿がある(2020年6月旬中旬時点)。

フランスパンを使ったものや、あんことバターをパンでサンドしたもの、ホットサンド・プレスして中からとろりとバターが溶け出しているようなものなど、様々なアレンジも見られる。日本の伝統的食材“あんこ”を使っているが、けっして見慣れたあんぱんではなく、今どきのトレンドパンの一つだ。

さらにInstagramで見られるのは、食パンの中に黒紫色のあんこがマーブル状にたっぷり練りこまれている写真。“マーブル状のあんこ食パン”はインスタ映えもし、あんこだけでなく緑色の抹茶も練り込まれて2色のマーブル模様になった美しい食パンまであるようだ。

これらのあんこ入り食パンは「#あん食パン」と呼ばれており、2万件の投稿がある。投稿数を比較すると「#あんバター」の方が圧倒的に多いので、「#あんバター」のブームの一部に「#あん食パン」が存在するイメージなのだろうか。

「あん食パン」のトミーズ、1日に2000本も販売!

「#あん食パン」の投稿で圧倒的に多いのが「#トミーズ」というキーワード。「トミーズ」(兵庫・神戸)は1977年に創業した老舗パン店で、たくさんのロングセラー商品があるが、「あん食パン」(1.5斤 700円税込 送料別)は約30年前に開発。テレビで取り上げられたりしながら、その製造量は年々増加しているという。現在は神戸市内の4店舗とネット通販、卸し(百貨店やスーパーなど)トータルで1日に約2000本も製造販売している。

  • トミーズの「あん食パン」はずっしりと重く、あんこたっぷり

同店の取締役営業部長 菊池隆史さんは、「先代の頃に“あんパンはあるが、食パンにあんこは入れられないのか。子供がパンの耳を残すので、パンの耳も食べられる食パンはできないのか”とお客様からお声がけがあったのをきっかけに考案しました」と説明する。

しかし商品化するまではとても苦労したという。「食パンの生地であんこを包むとあんこの重みで、生地垂れになって食パンがへこんでしまったり、真ん中に空洞ができたりしました。パンの耳も食べてもらいたいのに、あんこがなかなか端の方にいかないことも。試行錯誤しながら、食パンの生地にあんこを塗り、マーブル状にすることに。その技術開発が一番苦戦しました」と菊池さん。

同店では当日出荷ではなく、焼き上げたパンを冷ましてから袋詰めしている。お取り寄せしたものをさっそくトーストしてみると、表面はカリカリに。スイス産の発酵バターを使っているらしく、その香りがたまらない。生地はふわふわで、生クリームも入っているので甘い風味で、あんこがないところも美味しくいただけた。ずっしりと重いのに、止まらない美味しさだ。普段はあんこパンはほとんど食べない、という人も新しい幸福感に満たされるだろう。

意外に中年男性にも人気! あんこスプレッド!

一方、市販のあんこスプレッドの人気も拡大している。久世福商店の「あんバター」(125g 430円税込)は、同店の通販サイトで人気ランキング第1位になっている。北海道産の小豆を使用し、バターをたっぷりと加えて仕上げたあんバターのジャムだ。発売1年で全国の店舗と通販を合わせて累計累計約25万個も販売しているという。

  • 久世福商店の「あんバター」(画像提供:サンクゼール)

同店を経営するサンクゼールのMD営業企画部 MD開発課 自社商品開発チーム係長の井上聡一郎さんは、「小倉トーストのような味わいのスプレッドが作れないかと開発しました。餡の味わいやバターとのバランス、なめらかな食感と全体のバランスにこだわって仕上げました。当初はここまで売れるとは思っておりませんでした」と説明する。

「あんバター」の人気を受けて、姉妹品として「抹茶あんバター」と「苺あんバター」も発売になったのだという。女性にも好まれているが、意外にも男性の購入率が高いというのが興味深い。同商品には大瓶タイプもあるのだが、こちらは40~50代男性のお客様のリピートが目立つそうだ。甘党の中年男性に支持されているかも。

  • パンにたっぷりの「あんバター」(久世福商店)とホイップクリームをトッピング(画像提供:サンクゼール)

井上さんは「数年前より“あんこ+バター”の商品が世に出回り始めましたが、昨年よりメディア露出が増えたことも影響し、より多くのお客様が購入されているようです。お客様がいろいろな“あんこ+バター”商品を求め、ブームになっているのではないでしょうか」と分析している。

  • 「キューブ ザ ベーカリー」の「あんこ」(1斤 650円税別)

さらに最近流行りの四角いキューブパンにも「あんこバター」人気が押し寄せている。広島県で2店舗を展開している「キューブ ザ ベーカリー」では、チョコやチーズ、プレーンなど種類豊富なキューブパンを販売しているが、あんこのキューブ食パンは2017年のオープン当初から人気だという。

同店のマネージャー濱野由起子さんは、「高級な北海道産小豆100%を使用し、パン生地に合うよう甘さは控えめにしています。耳までしっとり柔らかく美味しいので、まずはそのままで味わって。次にトーストしてバターを塗って、流行りの“あんバター”として味わっていただくと最高ですよ」とアドバイスしてくれた。

キューブパンは“Bマーク”を手前にして縦にカットすると、中から渦巻き状の断面が登場する。その見栄えが美しく一気にテンションが上がる瞬間だ。あんこは確かに甘さ控えめで、耳まで柔らかくて丸ごと美味しかった。濱野さんによると、ご自身がパンの耳好きなので、全面が耳からなるキューブパンを開発したのだとか。“あん食パン”にもいろんなタイプがあるようだ。

「あんバター」も「あん食パン」も共通しているのは、和素材のあんこと洋風素材のバターのマリアージュを、パンで味わう点。そしてどれもインスタ映えする点だ。高級食パンのブームもあり、パンの美味しさにいまだかつてない熱視線が注がれている昨今、新顔のあんことバターの味わいのパンをぜひこの機会にチェックしてみよう!