次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた? 」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第39回は「高級食パン」。

  • 「銀座に志かわ」の「水にこだわる高級食パン」(1本・税込864円)

「高級食パン」ってどれくらい高い?

近年、食パンの高級化が進んでいる。6枚などにカットされた市販の食パンは1袋100~300円くらいで販売されているが、最近流行りの「高級食パン」は、上の写真のように1本丸ごと(2斤分など)で販売されており、しっかりとした重さで、1本で1,000円前後するものも多い。

総務省統計局の小売物価統計調査(2020年01月24日発表)では、食パン1本の販売価格は全国平均で419円というデータもある。小麦粉やバターなど原材料のクオリティや製法が違うのかもしれないが、相場よりかなり高くとも、いま「高級食パン」が飛ぶように売れているのだ。

約1年前に本サイトの連載企画「SNSで話題の"バズるグルメ"」の「#生食パン」では、“焼かないでも、そのままでおいしい生食パン”のトレンドをお届けした。記事内で取り上げた食パン専門店「乃が美」はその後、「高級食パン」の草分け的存在としても知名度をアップ。現在は全国に171店舗を展開している。いま食パン業界では、「高級食パン」を謳う食パン専門店が続々登場し、大ブームとなっている。

  • 「乃が美」の「生」食パン(1本864円税込/2斤)

「高級食パン」はどこで買える?

前述の調査の売上ランキング上位を見てみると、上位に食い込んでいるのが、大阪に11店舗、関東に5店舗、石川県に1店舗を構える「食パン専門店 高匠」。熟練の職人が小麦粉を熱湯でこねて、低温で熟成させる「湯種製法」で作った食パンで、「湯種食パン」は1本(2斤) で税込800円(関東では「湯種食パンTokyo Rich 」1本・2斤 税込850円)。オンラインショップでも販売されているようだ。

一方、東京・神奈川・大阪などに13店舗ある「俺のBakery」は、「俺のフレンチ」などで知られている「俺の~」シリーズのベーカリー業態。北海道産の幻の小麦・キタノカオリと、岩手県のなかほら牧場で自然放牧された牛乳を使用した「銀座の食パン~香~」(税込1,000円)が人気だ。

  • 従来のパン店の雰囲気とは違う「銀座に志かわ」の店舗外観

全国に65店舗(2020年5月末時点)を展開している「銀座に志かわ」は、「水にこだわる高級食パン」(1本・2斤分 税込864円)を販売。同社・広報の井野恒さんによると、「パンの仕込み水に独自開発のアルカリイオン水を使うことで、小麦粉、生クリーム、バターなど、素材の旨味を最大限に引き出しました。耳まで柔らかく、絹のようにしっとりとした食感で、淡雪のような口どけを実現しました。一度食べたら、もう一度食べたくなる自信作です」とのこと。

食パン専門店「レトワブール」(兵庫・姫路)では、「おいしい食パン」(税込1700円)の他に、セレブ御用達の「XO食パン」も用意。価格はなんと1本税込6500円! というから驚き。ジャージー牛の生クリームや、奥丹波の地鶏卵、フランスのゲランド塩、デンマークさんの発酵バター、真珠粉などこだわりの原材料を使っているとのこと。オンラインでも販売しているようだ。

  • 「シニフィアン シニフィエ」の「パン ド ミ」(税込1188円・2斤)

パン好きに大人気の「シニフィアン シニフィエ」(東京・世田谷区)の「パン ド ミ」(税込1188円・2斤)は乳製品・卵・砂糖不使用で、もっちり・しっとりとした食べ応えのある食パン。長時間発酵させる際に醸された気泡を残して焼き上げているので、大小の丸い気泡が見える生地だ。本店の他に一部の百貨店やオンライン通販でも販売している。

「高級食パン」を食べてみた

自ら「高級食パン 嵜本」と謳っている「嵜本」の「極生“ミルクバター”食パン」(税込950円)を実食してみた。同店は関西に7店舗、九州に5店舗、関東に3店舗、北海道に1店舗を構えている。台湾にも1店舗オープンしているようだ。今年4月からは宅配も始めた。各店で焼き上がりの時間を公開しており、前日まで予約すれば焼きたてを受け取れるような仕組みになっている。

  • ずっしりと重い「嵜本」の食パン。通常の1.4倍の重さなのだとか

まずは焼かないで、そのまま“生食”で味わってみた。焼きたてのふわふわ、しっとりの食感にまず感動。生地を噛めば噛むほど、小麦本来の自然な旨みや、甘みがふんわりと広がる。香りがいいので、何も付けなくとも、焼かなくともかなりおいしい。ミミまであっという間になくなり止まらなくなる。ある意味、危険なパンでもある。

同商品には北海道産の牛乳や北海道産の生クリーム、国産バター、蜂蜜などを使っているという。同社・ブランド広報 吉浦ゆず香さんは、「本商品には“湯種(ゆだね)製法”を採用しています。小麦粉を熱湯でこねて、小麦粉中のデンプンを糊化させたものを“湯種”といい、その湯種を配合してパンを作っています。もっちりした食感と独特のうまみがあり、パンの老化が遅くておいしい状態が比較的長いのが特徴です」と説明する。

さらに同商品は、「低温長時間発酵+中種製法」という、仕込みに使う小麦粉の一部を先に長時間低温で発酵熟成させてから、本仕込みする製法も採用しているとか。これにより、生地の風味がより際立ち、香り高く、しっとりした食感になるという。確かに風味も食感も、一度食べたら忘れられなくなるような印象深い味わいだった。

次に冷凍保存したものもあえて試食。カットした食パンを、1枚ずつラップで包んで冷凍保存。冷凍ものは水分が抜けがちなので、霧吹きなどで水を一吹きしてから、冷凍状態のまま焼くといいのだとか。トーストするとたっぷりと香ばしい香り。表面はサクサクと心地良い食感。甘みや旨味は生食とそれほど変わらなかった。ミミの部分もサクサクで、軽く食べられてしまう。

同店では他に、スタンダードな食パンとして、卵・乳不使用の「極美“ナチュラル”食パン」(税込900円・こちらも湯種製法)や、金曜日限定の「極葡萄食パン」(税込1300円)、月曜日限定の「黒糖山型食パン」(税込1000円)なども販売している。宅配では「極美“ナチュラル”食パン」と「極生“ミルクバター”食パン」、各種ジャムを販売している。

1本(2斤)では多すぎるという方や、「マスカルポーネと蜂蜜の食パン」や「極葡萄食パン」といった、個性派パンも少量ずつ味わいたいという人には、1枚入り(1斤4枚切り)の個包装パッケージもあるようだ(店舗でのみ販売、宅配はなし)。

ネットでお取り寄せできるパンも多いので、高級食パンはいろいろと食べ比べしてみても楽しそうだ。毎日を楽しく過ごしてみよう。

※価格は全て税込