30代になると部下・後輩も増え、20代の頃とは役割・立場が変わります。仕事の成果に加え、コミュニケーション力も評価の一部に反映されるのではないでしょうか? 職場・取引先の良好な人間関係づくりが重要になるからです。

コミュニケーションという言葉から会話力に目が行きがちですが、「自分の見せ方」もその一部に含まれます。同じセリフも発言する人によって、伝わり方が変わるからです。「人の心は色に反応する」という言葉通り、色彩パワーの影響力はコミュニケーションにまで及んでいます。

  • 自分の「見せ方」を意識していますか?(写真:マイナビニュース)

    自分の「見せ方」を意識していますか?

また、「外見とは、いちばん外側にある内面である」という言葉通り、相手の本心は目に見えないからこそ、視覚情報も踏まえ、人は言葉の真意を理解しています。

のべ4,000人を超えるビジネスマンにファッションアドバイスしてきた服のコンサルタントが「見せ方のコミュニケーション力」についてお伝えします。

ネクタイの色から伝わるメッセージ

ネクタイの色ひとつで、相手に伝わるメッセージも変わります。アメリカのトランプ大統領といえば真っ赤なネクタイのイメージが強いですよね。もちろん、赤のみならず、青いネクタイを締めているときもあります。

パワーネクタイと呼ばれる赤いネクタイは、色彩心理学的に情熱を感じさせる色。一方、青は誠実を感じさせる色です。このように、ネクタイに色を取り入れるだけで、言葉に視覚効果が加わります。

ビジネスの現場においても、成果で給料が変わるフルコミッションの外資系生命保険マンは、顧客に応じてネクタイを変えるそうです。たとえば、主婦の個別相談に乗ることが多い生命保険の営業マンは、時折、ピンク色のネクタイを締めます。ピンクは親しみやすさを演出する色で、女性の緊張を解す効果を演出するからです。

同様に、こげ茶は論理的な説得力を強める色、オレンジはエネルギッシュな印象を与えます。たとえば、論理的なプレゼンをするときはこげ茶を選び、人が大勢いる場所で覚えてもらいたいならば、オレンジで存在感を高めるなど目的に応じネクタイを変えるのです。ただし、清潔感がなければ、その効果も半減することでしょう。

  • ネクタイの色で印象は変わる
  • ネクタイの色で印象は変わる
  • ネクタイの色で印象は変わる
  • ネクタイの色で印象は変わる

見た目の清潔感=生活感がない

「清潔感が大切だ」ということは、もはや常識ですが、そのチェックポイントはこれまで明らかになっていませんでした。ところが、のべ4,000人のビジネスマンの服装をわたしがチェックしていく中で、あるひとつの共通点が見えてきたのです。

それは「生活感を消去法でつぶしていく」ことです。清潔感がある男性の共通点は、生活感が見当たらないということ。そして、人が生活感の有無を見ていた箇所は「各パーツの先端」でした。

たとえば、毛先・つま先・爪。ホテルマンが重視しているポイントは全て先端です。男性は毛先を整えるため、整髪料を付けていますし、女性は髪を一つにまとめていますよね。靴全体をピカピカにすることは難しいかもしれませんが、ピカピカした靴のつま先は靴全体をクリーンに見せてくれます。

また、名刺交換のタイミングで爪は見えています。厳密にいえば、意図的に爪をチェックしているのではなく、視野に入った結果、気づいてしまうといったところでしょうか? もちろん、服装の先端も重要です。

ビジネスファッションにおける清潔感のチェックポイント

ビジネスファッションの先端といえば、シャツの襟先・ジャケットの袖先・ネクタイの剣先。たとえば、ノーネクタイのシャツにおいては、襟先がピョコっと浮いてしまってはだらしなく見えるでしょう。

そこで、クールビズの季節はボタンダウンカラーのワイシャツが売れるのです。ノーネクタイであっても襟を安定させてくれるからです。ただし、首元から肌着が見えてしまっては台無し。汗を吸収する肌着は相手に汗を連想させるものだからです。

  • クールビズの季節はボタンダウンのシャツがおすすめ

    クールビズの季節はボタンダウンのシャツがおすすめ

一方、ジャケットの袖先からシャツを1センチ程度見えるよう合わせましょう。シャツはジャケットの袖裏に皮脂が付かないようカバーする役割があるからです。

そもそもヨーロッパでは下着という位置づけ。また、ダークカラーのジャケットから覗く白シャツのコントラスト自体が視覚的にクリーンな印象に見えるはず。

さいごに、ネクタイの剣先は立っている状態でベルト位置にくるよう合わせましょう。ベルト位置より長いネクタイはブラブラしてだらしない印象です。一方、ベルト位置より短いネクタイは寸足らずでコミカルな印象です。

  • 剣先が立っている状態でベルト位置がベスト

    剣先が立っている状態でベルト位置がベスト

スーツとジャケパンを使い分ける

業界を問わず、サラリーマンのドレスコードがスーツだった時代においては、印象の差はそれほどありませんでした。ところが、スーパークールビズやカジュアルフライデーの導入、スニーカー通勤など、ビジネスファッションの多様化は想像以上に進み、もはや堅い印象が必ずしも政界ではなくなったのです。

黒・紺・グレーといった定番のスーツに加え、ビジネスファッションの選択肢を増やすことをお勧めしています。ジャケット&パンツ、ジャケパンがスーツに代わりビジネスファッションのスタンダードになる日が来るかもしれませんから。

著者プロフィール: 森井良行(もりい・よしゆき)

エレガントカジュアル 代表取締役
20代後半から40代の男性のファッションを「エレガントカジュアル」でワンランクアップさせる「服のコンサルタント」。 街のセレクトショップを歩き、顧客に試着を繰り返してもらいながら、その人に最も似合う服を探していく独自の「買い物同行」は9割以上の高い満足度を誇る。著書『毎朝、迷わない! ユニクロ&ツープライススーツの上手な使い方』 (WAVE出版)