フジテレビの石原隆代表取締役専務執行役員兼CCO(チーフ・コンテンツ・オフィサー)が、フジ・メディア・ホールディングスの「統合報告書2026」で、自身が携わったドラマ『NIGHT HEAD』の映画化に至る経緯や、脚本家・三谷幸喜氏との仕事を振り返るとともに、今後のフジテレビのコンテンツ制作戦略について語った。

  • 石原隆氏

    石原隆氏

『NIGHT HEAD』低視聴率も、ファンの熱を感じ取って映画化

1984年にフジテレビに入社し、『世にも奇妙な物語』『古畑任三郎』シリーズなどを手がけてきた石原氏。今年6月、フジテレビ初のCCOに就任し、コンテンツ制作を統括する立場となった。

同局が進めるのは、地上波放送を中心とした事業構造から、映画、配信、グッズ、イベントなど多角的にコンテンツを展開する「メディアを持つコンテンツカンパニー」への転換。こうした事業展開について石原氏は、かつて携わった『踊る大捜査線』を代表例に挙げ、亀山千広氏らプロデューサー、監督、スタッフが一体となってドラマから映画、グッズなどへと展開してきたことを振り返った。

ただし、当時から多角的なビジネス展開を前提に企画していたわけではないという。「最初から多角的に展開するIPとして開発してきたわけではないのです」と説明し、まず一つのメディアで作品を世に送り出し、視聴者の支持によって別の展開へと広がっていったという認識を示した。

その具体例として挙げたのが、東映とともにシリーズ化を手がけた『スケバン刑事』、そして深夜ドラマ『NIGHT HEAD』だ。

『NIGHT HEAD』について石原氏は「視聴率は低かったのですが、視聴者の熱を肌感覚で受け取って映画化したところヒットいたしました」と回顧。視聴率という数字には表れないファンの熱量を感じ取り、映画化を実現させたことを明かした。

三谷幸喜氏と「いつか映画をやりたい」 『ラヂオの時間』実現の経緯

石原氏と三谷幸喜氏による代表作としては『古畑任三郎』が知られているが、初めてタッグを組んだのはドラマ『振り返れば奴がいる』だ。当時から三谷氏とは“いつか映画をやりたい”と話しており、それが後に映画『ラヂオの時間』で実現。「培った水脈があってこそ、できたのだと思います」と、長年にわたる関係性の積み重ねが作品につながったことを振り返った。

こうした経験を踏まえ、制作者に必要な能力として挙げたのが、原作や企画の魅力を見極める「目利き」の力。石原氏は、原作や企画を注意深く見て、その価値を判断するキュレーターとしての能力に加え、社外のクリエイターと継続して仕事をするセンスも重要だと指摘し、現在のフジテレビにも、そうした力を備えた人材がそろっているとして、信頼を寄せた。

プロデューサーは「最も芸術家に近い事務職」

フジ・メディア・ホールディングスの中期経営計画では、コンテンツ制作を担うプロデューサー人材の増強も掲げられている。

これについて石原氏は、具体的に倍増させるかどうかは別としながらも、少なくとも増やしていきたいとの意向を表明。「プロデューサーは“最も芸術家に近い事務職”だと思います」と、独自の職業観を示した。

才能を持ったクリエイターたちと結びつくためには、プロデューサー自身にもセンスが必要だといい、人材を増やすことで社外のクリエイターと出会う機会が広がり、社内のクリエイターの能力を生かす可能性も高まると説明。実際にキャリア採用によって制作部門の人材が増えており、外部プロデューサーとの協業も進めるとしている。

また、作品を多角的に展開して収益を上げる仕組みを構築する一方で、コンテンツ制作そのものの考え方は変わらないと強調。

クリエイターが面白いものを作ることに集中し、制作以外のスタッフが様々な方法で利益を生み出す仕組みを設計する体制を目指す考えを明かした。

会社の垣根を越えた人事交流や共同制作を推進

今後のフジテレビの制作体制について、石原氏は、視聴環境が大きく変化したことを踏まえ、地上波だけでなく世界中の様々なプラットフォームに向けて作品を作る「コンテンツスタジオ」としての役割を重視する。

「面白くて、世界中を“あっ”と言わせるものを作ってやる、という気構えでいたいと思っております」と意欲を示し、2025年7月に新設されたスタジオ戦略本部を通じて、社内のクリエイターが臆せず挑戦できる制作環境を整えたいとした。

さらに、グループ各社との連携については、会社の垣根を越えた人事交流や共同制作を進め、よりスムーズに協業できる仕組みを構築する方針。将来的には、ハリウッドのメジャースタジオのように、フジテレビやグループ会社が手がけた作品なら安心して楽しめると思ってもらえるブランド力を獲得したいという。

そして、新たなコンテンツ開発に向けては、従来のようにヒットした作品を後から多角展開するだけでなく、最初から大規模な「フランチャイズ型IP」として育てることを想定したプロジェクトも立ち上げたいと構想を明かし、「クリエイターたちの企画に大いに期待しています」と述べた。