「宝くじが当たっても、家族でお金を出し合って買ったと説明すれば贈与税はかからない」。SNS上で、こうした趣旨の投稿が話題を集めました。家族で当選金を分けられたら……と考える人は多いかもしれませんが、「共同購入だった」と説明すれば、本当に贈与税はかからないのでしょうか。
本記事では、宝くじの当選金にかかる税金の仕組みと、家族で当選金を分ける際の注意点を、FPの視点から解説します。
宝くじの当選金に税金はかかる?
宝くじで高額当選したら、まず気になるのが「当選金に税金はかかるのか」という点でしょう。実は、当選者本人が受け取る当選金には所得税はかかりません。
宝くじについて定めた「当せん金付証票法」の第13条では、当せん金付証票(宝くじ)の当せん金品には所得税を課さないと規定されています。当選額が1万円でも数億円でも、この扱いは変わりません。
当選金が非課税とされている背景には、宝くじが公共的な目的で発売されていることがあります。宝くじを発売できるのは、都道府県と指定都市に限られます。売上金のうち当選金に回るのは、発売総額の5割以下と法律で決められており、残りの多くは収益金として発売元の自治体に配分され、公共事業などの財源に充てられます。つまり、購入代金の一部が、すでに公共のために使われる仕組みになっているのです。
ただし、非課税とされているのは、当選金に対する所得税です。贈与税は原則として個人からもらったすべての財産にかかり、例外として贈与税がかからない財産の中に、宝くじの当選金は含まれていません。そのため、当選金を家族に分ければ、受け取った家族に贈与税がかかる場合があります。
「家族で出し合った」ことにしても贈与税は逃れられない
では、冒頭の投稿のように「家族でお金を出し合って買った」と説明すれば、贈与税はかからないのでしょうか。ポイントは、それが事実かどうかです。
本当に共同購入していたなら贈与にはならない
贈与とは、ある財産を無償で相手に与えることをいいます。購入前から家族でお金を出し合い、宝くじを共同で買っていたのであれば、当選金のうち各自の出資割合に応じた部分は、もともと各自のものです。出資割合どおりに受け取る限り、誰かから無償でもらったお金ではないため、贈与には当たりません。
宝くじ公式サイトのネット購入にも「共同購入」の仕組みがあり、当選した場合は各メンバーの購入枚数の比率に応じて当選金が分配されます。
当選後に「共同購入だった」ことにするのは仮装
一方、1人で買った宝くじが当たった後に、家族で口裏を合わせて共同購入だったことにするのは話が別です。実態としては当選者の財産を家族に渡しているため、贈与税の対象になります。
しかも、事実と異なる説明で贈与税を免れようとすると、重いペナルティを受けるおそれがあります。国税庁は、事実をねつ造する、虚偽の契約書を作成する、虚偽の答弁をするといった行為を、重加算税の対象となる「仮装・隠ぺい」の例として挙げています。仮装・隠ぺいをして贈与税を申告していなかった場合は、本来の贈与税に加えて、その40%にあたる重加算税が課される可能性があります。さらに、納付が遅れた日数に応じて延滞税もかかります。
税務署は、当事者の説明だけでなく、事実関係を総合的に見て判断します。共同購入だったと主張するには、誰がいくら出したのか、当選したらどう分けるのかといった購入前の取り決めを、客観的に示せることが必要です。こうした裏付けがないまま、1人が当選金を受け取ってから家族に分けた場合は、当選者から家族への贈与として扱われることになります。
親から子へ3,000万円を渡した場合
仮に、親が当選金から18歳以上の子(贈与を受けた年の1月1日時点)に3,000万円を渡した場合、暦年課税で計算した贈与税は次のとおりです。
(3,000万円-110万円)×45%-265万円=1,035万5,000円
これを申告せず、仮装と認定されると、重加算税だけで約414万円が上乗せされ、さらに延滞税もかかります。当初の贈与税よりも大きな負担につながるおそれがあるため、当選金を家族に渡す場合は、正しく申告することが大切です。
当選金を家族と分けるときの贈与税の目安と注意点
前章では仮装・隠ぺいをした場合の負担を見てきました。ここからは、当選金を正しく申告して家族と分ける場合にどの程度の贈与税がかかるのかを、1,000万円を渡すケースで確認します。あわせて、贈与税を抑えて分けるための方法も解説します。
1,000万円を渡したときの贈与税
3,000万円が当選し、そのうち1,000万円を家族に渡したとします。贈与税の額は、誰に渡すかによって変わります。父母や祖父母から18歳以上(贈与を受けた年の1月1日時点)の子や孫に渡す場合は「特例税率」で計算します。配偶者や兄弟姉妹などに渡す場合は「一般税率」で計算します。
なお、贈与税の申告と納税は、原則として贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、受け取った人が行います。
共同購入するなら「購入前」の準備を
家族で当選金を分けたいなら、当選してからではなく、購入する段階で準備しておくことが大切です。宝くじ公式サイトの「共同購入」を利用すれば、当選した場合に各メンバーの購入枚数の比率に応じて当選金が分配されます。ただし、共同購入できるのはジャンボ宝くじ(ジャンボミニを含む)と全国通常宝くじに限られます。
売り場で購入する場合は、誰がいくら出したのか、当選したらどう分けるのかを、購入前に記録として残しておくとよいでしょう。また、代表者1人が当選金を受け取り、後から分けると、代表者から他の人への贈与とみなされる可能性があります。当選金を受け取る際は、共同購入者全員で手続きするか、代表者が受け取る場合には必要な委任状を用意するなど、事前に銀行へ確認しておきましょう。
さらに、高額当選金を銀行で受け取る際は、当せん証明書の発行を依頼し、入金の記録とあわせて保管しておくと、後で資金の出所を説明する際に役立ちます。
共同購入でない場合は制度を活用して分ける
1人で購入した宝くじの当選金を家族に渡す場合は、贈与税の仕組みを踏まえて分けることになります。
暦年課税では、1年間(1月1日から12月31日まで)に受け取った贈与の合計が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。
60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与であれば、「相続時精算課税」を選ぶこともできます。この場合、年110万円の基礎控除に加え、その父母や祖父母からの贈与は累計2,500万円まで特別控除が受けられます。贈与税は、これらを超えた部分にだけ一律20%でかかります。ただし、贈与した人が亡くなったときに、受け取った財産(基礎控除分を除く)が相続財産に加えられ、相続税で精算されます。
このほか、夫婦や親子などの扶養義務者が、家族の生活費や教育費として通常必要と認められる範囲で、必要な都度直接支払う分には、贈与税はかかりません。ただし、生活費や教育費の名目で受け取ったお金でも、預金したり、株式や不動産の購入資金に充てたりすると、贈与税の対象になります。
宝くじの当選金は扱い方に注意したい
宝くじの当選金に所得税はかかりませんが、受け取った後に家族へ渡せば、原則として贈与税の対象になります。当選後に「家族で出し合って買った」ことにしても贈与税は避けられず、重加算税などが課されるおそれもあります。家族で分けたいなら購入前に共同購入の形を整え、1人で購入した場合は暦年課税などの制度を活用して分けましょう。迷ったときは税理士や税務署に相談すると安心です。

