10月3日、札幌発着の日帰りバスツアー「北海道電力 石狩川水系空知川の3つの水力発電所を巡る」を北海道電力と日本旅行北海道が共同で企画し、北海道オプショナルツアーズがツアー実施を担当して開催した。
十勝岳連峰を源流とし、石狩川最大の支流である空知川。この流域で活躍する芦別発電所・野花南発電所・滝里発電所という、特徴の異なる3つの水力発電所およびダムを一度に巡る体験型ツアーだ。
通常は発電所から離れた札幌から操作を行い、施設自体は無人で運転されている水力発電所や、関係者以外立ち入ることができない発電設備やダムの内部(監査廊)も見学できる特別プログラムで実施された。水力発電のダイナミズムと、ほくでんの安定供給を支える現場の工夫に触れた一日の模様をレポートする。
昭和28年建設! 歴史と地域貢献を支える「芦別発電所・芦別ダム」
札幌・さっぽろテレビ塔前をバスで出発し、約2時間半。最初に到着したのは、空知川の最も下流に位置する「芦別発電所」および「芦別ダム」だ。
1953年2月に運転を開始したこの発電所は、最大出力1万kW、最大使用水量は84.0m3/sという規模を誇る。上流から流れてくる水量の変動を芦別ダムで調整し、下流へ流す水量を適切に整える重要な役割を担っており、点検等の作業以外は、発電所を停止することがないという。
現場担当者の案内のもと発電所内へ入ると、昭和の建設当時の面影を残す重厚な構造が目を引く。
また、取水口で流木などをせき止めるスクリーンや、それらを取り除く自動除塵機なども間近に見学でき、長年大切に設備を使い続ける技術者の情熱が感じられた。
地下探検気分!? ひんやり静かな「野花南ダム」内部の監査廊へ
昼食に芦別名物の「ガタタンチャーハン」を堪能した一行が次に向かったのは、1971年8月に運転を開始した「野花南発電所・野花南ダム」。最大出力3万kW、最大使用水量は175 m3/sと、空知川の発電所の中で最も大きな水量を扱う発電所だ。
野花南ダムでは、普段は決して立ち入れないダムの内部通路「監査廊(かんさろう)」へ潜入する特別体験が待っていた。ら旋階段を下りていくと、外とは空気が一変し、ひんやりとした静寂に包まれた。
監査廊内には、漏水量や、ダムを下から押し上げる水圧である「揚圧力」を測る計器があり、日々の計測で、堤体に異常がないかを厳重にチェックしている。巨大なコンクリート構造物を安全に維持するための地道で高度な管理体制を目の当たりにし、参加者からも感嘆の声があがっていた。
発電所内では、2020年に更新されたタッチパネル式の制御盤を見学。異常を未然に防ぐ予防保全の仕組みや、万が一流木などが挟まった際の迅速な復旧手順など、安定供給を裏で支える安全対策の真髄を学ぶことができた。
また、驚かされたのは、発電機の起動スピードだ。札幌から遠隔操作でき、なんと起動指令からわずか約3分で送電可能な状態になるという。
こうした水力発電の俊敏なレスポンスが、天候によって発電量が左右される太陽光や風力発電の出力変動を補っている。水力発電は、電力の安定供給に欠かせない存在であることが体感できた。
巨大部品の迫力!空知川最大出力の「滝里発電所」と水車メカニズム
ツアーの締めくくりは、1999年7月に運転を開始した空知川で最大の出力を誇る「滝里発電所」(最大出力5万7000kW、最大使用水量150 m3/s)だ。国交省管轄の多目的ダムである滝里ダムから約3kmの水路で水を導いて発電する「ダム水路式」を採用している。
比較的広々とした建屋内では、直近の分解点検(オーバーホール)を終えたばかりの設備が出迎えてくれた。
専門スタッフが、実物と写真を用いながら、水がケーシング(渦巻き状の流路)を通ってランナ(水車の回転部分)を回し、発電機へエネルギーを伝える仕組みを分かりやすく解説してくれた。特に、わずか数ミリの隙間に精密に巨大部品を吊り込む職人技のような据付作業や、老朽化に応じたリプレイス(設備更新)の取り組みについての話は興味深く、参加者からも次々と質問が飛んだ。発電時にCO2を排出しないクリーンな再生可能エネルギーとして、水力発電を次世代へ引き継ぐためのたゆまぬ努力が伝わってきた。
ツアー誕生の舞台裏:資産を活用した「地域貢献」と「ファンづくり」
「普段見られない設備や巨大な建造物に興味があって、“大人の社会科見学”の感覚で参加しました。普段何気なく使っている電気がどのように作られているのか、実際の現場や設備を間近で見ることができてとても勉強になりました!」
そう笑顔で語ってくれたのは、今回参加した女性のお一人。発電所やダムの内部という非日常の空間を五感で体感し、知識や発見を得られる貴重な機会として、参加者の満足度は非常に高い様子だった。
実はこのインフラツアー、ほくでんが「自社の資産を活用して地域に人を呼び込み、発電で関わる自治体への地域貢献と、北海道電力のファン拡大につなげたい」という強い想いから企画・継続しているものだという。今回のツアーは北海道電力と日本旅行北海道が共同で企画し、北海道オプショナルツアーズがツアー実施を担当。北海道電力は、安全管理を徹底し、現場社員の協力のもとで特別な見学を実現させている。
「私自身がダム巡りを趣味としていました。職員にとっては日常の点検作業であっても、外部の方にとっては非常に価値のある体験になります。本ツアーが地域の魅力発信や交流につながり、電力への関心も高めていただくきっかけになればうれしいです」と企画立案者の小関さんは話してくれた。
今回のツアーを通して強く感じたのは、水力発電が単に「水で電気をつくる」だけにとどまらないという点だ。雨や雪が森に蓄えられ、川となって流れ、発電に使われた後も再び河川へと戻り、自然の循環へと還っていく。
発電時にCO2を出さないクリーンで安定した電源として、100年以上前から北海道の暮らしを支えてきた水力発電。2050年カーボンニュートラルという高い目標に向け、歴史ある設備を守り、最新技術で磨き上げながら挑み続ける現場の姿がそこにはあった。










