「カッパを見に行きたい」――幼い娘の願いを聞いた父親は、驚くこともなく動物園へ連れて行ってくれた。しかし、どれだけ探してもカッパは見つからない。それから何十年もの時を経て、女性は自分が信じていたことの真実を知る。25日放送のTBSラジオのラジオ番組『安住紳一郎の日曜天国』(毎週日曜10:00~11:55)で紹介された、亡き父との思い出をめぐるリスナーの投稿に、安住紳一郎アナウンサーも思いを巡らせた。

  • 安住紳一郎アナウンサー

    安住紳一郎アナウンサー

「今日はカッパはいなかったね」父が帰り道にかけた言葉

この日のメッセージテーマは「私の勘違い」。神奈川県湯河原町に住む女性から届いたのは、「私は40歳くらいまでカッパは動物園にいる生き物だと思っていました」という、長年の思い込みにまつわる体験談だった。

幼い頃、茅ヶ崎に住んでいた女性は、ある日、父親に「カッパを見に行きたい」とお願いした。すると父は、娘の言葉に驚く様子も見せず、そのまま動物園へ連れて行ってくれたという。

女性は動物園の中を歩きながら、檻の前でカッパが出てくるのを待った。「カッパはたぶん、水辺の動物舎にいる」と考え、あちこちを探し回ったものの、どこにも姿は見当たらなかった。

結局、カッパに会えないまま帰ることになり、女性は少しがっかりしていた。そんな娘に父がかけたのは、「今日はカッパはいなかったね」という、ごく自然な一言だった。

女性は「父の言い方があまりにも自然だったので、まさかカッパは動物園にいるという前提から間違っているとは思いませんでした」と振り返る。

カッパが動物園にいると信じたまま、女性は大人になった。父との動物園での出来事が、何十年にもわたってその思い込みを支えていた。

40歳頃に知った真実 19歳で亡くなった父への感謝

転機が訪れたのは、40歳くらいの頃。職場で妖怪の話になり、周囲の人たちが順番に妖怪の名前を挙げていたときだった。その中の一人が「カッパ」と口にした瞬間、女性は「心の中で静かに、しかし大きな衝撃を受けました」という。

「カッパって妖怪なんだ……」

周囲には何食わぬ顔をしていたものの、内心では、幼い日に父と訪れた動物園の記憶と、何十年も信じ続けてきた思い込みが崩れていった。改めて考えると、カッパを実際に見たこともなければ、テレビで話題になっているのを見たこともなかった。

ただ、女性には、どうしても確かめられないことがあった。父親は女性が19歳のときに亡くなっており、あの日の出来事を直接聞き直すことはできないのだ。

女性は、父が自分の勘違いに気づいていたのではないかと考えている。それでも子どもの夢を壊さないように、あえて何も言わず、「今日はカッパはいなかったね」と話してくれたのではないか、と。

「父は私の勘違いを正すよりも、私の小さな夢を守ることを選んでくれたのです」

自分が父親の立場だったら、カッパは妖怪だとすぐに訂正してしまったと思う。だからこそ、今、あの日の父に伝えたい言葉があるという。

「お父さん、あの時はカッパを見つけられなかったけど、私の夢を守ってくれてありがとう」

さらに女性は、カッパが動物園にいなかったことよりも、父が自分を動物園へ連れて行ってくれた優しさを改めて感じるとつづり、「ユーモアのある優しい父でした」「もっと長生きしてほしかったです」と、亡き父への思いを寄せた。

そんな投稿を聞いた安住アナは、「お父さんもカッパは実在の動物だって信じていたっていう、その世界線まであると思うよ」と、もう一つの可能性を想像。

さらに、天国の父親が娘の勘違いを知って、「えっ、嘘!」と驚いているかもしれないとユーモアを交えて語った。

父親が何を思って娘を動物園へ連れて行ったのか、その答えはもう分からない。それでも、幼い日の何げない一日が、何十年もの時を経て、父への感謝を伝える大切な思い出になっていた。

【編集部MEMO】
TBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』は、安住紳一郎アナウンサーとアシスタントの中澤有美子アナウンサーが届ける毎週日曜の生放送番組。リスナーの体験談を紹介するメッセージコーナーも人気を集めている。次回、11月1日のメッセージテーマは「最近、ドキドキしたこと」、焚き火マイスターの猪野正哉氏がゲスト出演する予定。メッセージが採用されると、オリジナルポストカード「途中下車シリーズ 北九州・旦過市場」がプレゼントされる。