だからこそ、後編で早川さんに訪れる結末には、強く心を動かされたという。
「早川さんは“ギブ&ギブ”を貫いて、自分が得をする生き方をしてこなかった人。だからこそ最後には、目に見えない何かが味方してくれる気がしたんです。リアルなのにすごくドラマチックで、めちゃくちゃ感情移入しながら見入ってしまいました。誰かに何かを与えるには自分が幸せである必要があるけど、“情けは人の為ならず”という言葉の通り、全部循環しているのだと、今回の映像を見てしみじみ感じました。
冬馬さんの真の人間性みたいなものも、後編でさらに深掘りされていくにつれ、明らかになりますし。生きていく上で本当に大切なのは、何事もひとり占めしようとせず、いかにそれを上手く回していくか、ということなのかもしれないですね」
「人様の人生から皆さんに結んで、自分の人生にも落とし込みたい」
そして最後に、『ザ・ノンフィクション』を好きな理由を語った。
「自分と価値観が違う人と出会うと、つい一線を引いてしまいたくなるんですけど、“分からないもの”と出会った時は、素直に“分からない”と認めればいい。その上で、少し視点を変えたり背景を知ったりすることで、それまで見えなかったことまで見えてくる。それが人生を豊かにする秘けつだと、ある人に教わったことがあるんです。“人と話す時の眼差しや志が1ミリ変わるだけで、距離感ってこんなに変わるんだ”と気付いてから、自分が知らなかった世界をシェアできることに喜びを感じるようになったんです。
私が『ザ・ノンフィクション』を見るのが好きなのも、自分とは違う世界で暮らしている人たちの人生に触れられる貴重な機会だから。形は違えども、野方文化マーケットみたいな世界はきっと皆さんの回りにも存在しているはず。人様の人生から皆さんに結んで、自分の人生にも落とし込みたいですね」
●井手上漠
2003年1月20日生まれ、島根県隠岐郡海士町出身。18年に「第31回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でDDセルフプロデュース賞を受賞し注目を集める。モデル、タレントとしてテレビや雑誌などで幅広く活動し、21年にはフォトエッセイ『normal?―普通って何?―』を出版。22年にはジェンダーレスファッションブランド「BAAKU」をプロデュースし、25年には美容本『自信がつく美容、美容でつく自信』を刊行した。11月13日全国公開、映画『呪いのスマホ』では篠宮かおる役を演じる。

