石原さとみ主演、野木亜紀子脚本で描くフジテレビ系ドラマ『ポリティカルパン』(毎週水曜22:00~)の第1話が、7日に放送された。

“ダークな政治の金”を狙う女ルパンが、金庫を破る前に国会議員を作る――日本によく似た架空の国・ニッポニアを舞台にしたからこそ可能な大胆な社会風刺と、随所に登場する“タヌキ”が意味するものから、この怪盗エンターテインメントの仕掛けを考えてみたい。

  • 石原さとみ (C)フジテレビ

    石原さとみ (C)フジテレビ

【第1話あらすじ】政治の金を盗むために、国会議員を作るという回り道

日本によく似た国・ニッポニア。大泥棒の如月弥生(石原)は金持ちの家に忍び込んでは盗みを働いていたが、衰退するこの国では泥棒商売もままならなくなっていた。どこかにデカいお宝はないか。そんな時、偶然目にしたワイドショーで、“ダークな政治の金”にまつわる暴露話を耳にする。

弥生はツテをたどり、パウロこと謎の情報屋・乾(渡部篤郎)に会いに行く。“ダークな政治の金”を盗むため、政界に詳しい情報屋を紹介してほしいと願い出る弥生に、男はあきれながらも、その金へ接近するために国会議員になったら紹介してやると条件を出す。

数日後、弥生はクラブで華麗なる政治家一族の娘・小早川雅(河合優実)に接触する。父親の士郎(草刈正雄)は元総理大臣で、現在は政界のキングメーカーである大物政治家だが、娘の雅は夜遊びを繰り返しており、週刊誌をも賑わすほどのトラブルメーカー。

酒を飲ませて仲良くなり、酔った勢いで「私は国会議員になる!」と言わせ、それを動画に。酔った雅はこれをそのままSNSに投稿してしまう。

後日、弥生は雅を乾に引き合わせる。乾は雅が国会議員になることを難しいと言いながらも、ある案を提案する。それは、小早川一族の選挙区で、雅の兄・颯(寛一郎)が予定している千葉17区からの出馬だった。

強引に話を進めていく弥生の手腕で、雅は本当に千葉17区から出馬することに。颯は動揺するが、雅の父で、国自党副総裁の士郎(草刈正雄)は、眼中にないようだった。そして官房長官室の部屋の隠し扉の先には、実際に札束の山が。──政治の怪しい金…。

計画がスタートした弥生は乾と笑い合っていた。その先で何が待っているかも知らずに。

  • 河合優実 (C)フジテレビ

    河合優実 (C)フジテレビ

金庫破りの第一歩が、まさかの候補者づくり

怪盗ものには、盗みまでの段取りを楽しむ面白さがある。見取り図を手に入れ、警備の穴を探し、ときには別人に変装する。ところが『ポリティカルパン』第1話で始まった準備は違った。その第一歩は、国会議員を誕生させること。いきなり無理難題に思えるが、政治の金庫がピッキングだけでは開かないということは、誰もが知るところだろう。

自称・大泥棒の如月弥生が目をつけたのは、政界のキングメーカーの娘・小早川雅。酒の勢いで「私は国会議員になる!」と言わせ、SNSへの投稿をきっかけに、立候補へと話を進めていく。怪盗ものなら予告状を出すところで、こちらは出馬宣言。お宝へ近づくための手続きからして、ひと味違う。この回り道が野木脚本らしい。

しかも弥生の出発点は、世直しの志ではなく「デカいお宝はないか」という欲望だ。国が衰退し、泥棒商売までままならなくなったから、政治の金に目をつける。泥棒にも市場調査が必要という可笑しさの中に、社会風刺を忍び込ませる手腕はさすがと言えよう。

政治という題材には、制度や背景の説明がつきまとう。しかし、この初回は弥生の欲望をエンジンにして進む。雅への接近、SNSへの投稿、選挙区の選定――説明を聞くより先に、作戦の次の一手が気になってしまう。この「知りたい」を「次が見たい」に変える脚本の運びに、野木亜紀子のエンターテインメント性が表れている。