昨年9月に「TOKACHI ANPANTO GRAVEL(以下、十勝グラベル)」という大会を知り、ミドルコースの60kmを走った。
十勝グラベルは、北海道・十勝エリアの広大な農道やグラベルロードを舞台に開催されるライドイベントだ。筆者の知る限り、これほどフラットなグラベルを長距離にわたって走れる環境は国内でも珍しく、そのスケール感に圧倒された。札幌に住む筆者にとって、それはこれまで経験したことのないライド体験だった。
景色だけ見れば、まるでアメリカのカントリーロードを走っているかのようだ。どこまでも続くフラットダートをハイスピードで駆け抜ける体験は、国内ではなかなか味わえない。
2025年大会の最長コースは60kmだったが、このフィールドならさらに長い距離を走ってみたい――。そして迎えた2026年大会。100km超のロングコースが設定され、迷うことなくエントリーしたのである。
なお、2026年夏に発表されたコースは以下の通りだ。
北十勝ロング 108km 登坂高度769m グラベル率46.6%
「道の駅おとふけ」スタートで、音更町→士幌町→上士幌町→鹿追町を走るコース(エイドステーション4箇所)
北十勝ミドル 82km 登坂高度544m グラベル率49%
「道の駅おとふけ」スタートで、音更町→士幌町→鹿追町を走るコース(エイドステーション3箇所)
不安を抱えながらも迎えた大会当日
今回はメインライドとなる北十勝ロングに参加した。前日の9月21日にはウェルカムライド(27km)、23日にはアフターライド(40km)のファンライドが用意されており、走るだけではなく、3日間を通して十勝観光も楽しめるプログラムとなっている(詳しくは十勝グラベル公式HP参照)。
スタート&ゴール地点となる「道の駅おとふけ なつぞらのふる里」には、スポンサーブースが出展しており、自転車用品やウェアなどの購入も可能だ。
会場は活気に満ちあふれていた。カスタムされたバイクとサイクルウェアに身を包んだ出場者たちは皆かっこよく、特にロングコースの出場者は、レース思考の強いエキスパートが多いように感じた。本大会はレースではないとはいえ、同じペースで走り切れるだろうか……。
今回一緒に走るのは、これまで数々の大会をともに走ってきたバディの宮田氏と、友人3名だ。実は大会当日までに体調を万全に整えられず、やや不安を感じながらのスタートとなったのだが、一緒に走るメンバーたちの笑顔を見ているうちに、その不安はいつの間にか吹き飛んでいた。
108km走り切るにはどうすれば良いか――。実は大会前から、過去の経験を踏まえて作戦を考えていた。
普段のサイクリングでも100kmを超えることは度々ある。だが、大会には制限時間があり、さらにコースの約46.6%(50.4km)がグラベルとなると、いつものサイクリングとは状況が大きく異なる。
そこで、本大会を走り切るために“自分ルール”を設定した。
一つ目は、「自分のペースを維持すること」だ。特に平均速度を普段より速いペースで走り続けると、後半まで持たない。一緒に走るメンバーにも、もし遅れをとるようであれば先に行ってほしいと伝えていた。
二つ目は、「エイドステーションでしっかりエネルギー補給をすること」だ。これは筆者の体質によるものかもしれないが、運動中はまったく食欲が湧かない。どうしてもドリンクやエナジージェルに頼りがちになり、気がつけば空腹感に襲われてしまう。そうならないよう、しっかり固形物を摂ることを心がけた。
三つ目は、「休憩を長く取りすぎないこと」だ。休憩時間が長くなると身体がオフモードに入り、集中力が切れてしまう。これは過去にも経験したことのあるパターンだった。エネルギーの補給を終えたら、速やかに出発する。
この3点を意識すれば、108kmを完走できる自信はあった。
スタート直後から広がる十勝の絶景
第1エイドの「道の駅 ピア21しほろ」までは25kmの道のりだ。
舗装路を数km走ると、いよいよグラベルロードに突入だ。
グラベルを走るために装着したタイヤは、PanaracerのGRAVELKING X1(45C)だ。昨年から使用しているが、舗装路での転がりは軽く、グラベルではしなやかなクッション性を発揮する。さらに、路面への食いつきも良い。
グラベルにおいて、タイヤ選びは極めて重要だ。また、路面状況に合わせた空気圧の設定も、体力の消耗に大きく影響する。
(参考:筆者の体重は73kg。空気圧は前輪1.8bar、後輪2.0barに設定した)
それにしても天気が良い。9月後半の北海道としては暑いくらいだが、空気は乾いていてベタつくような不快感はない。まさに“サイクリング日和”といえる。
一年ぶりとなる十勝のグラベルコースは期待を裏切らなかった。砂埃を舞い上げながら転がるタイヤの感触を、ペダルを通して身体全体で受け止める。
最初のエイドステーションまでは25kmとやや長めだが、アップにはちょうど良い距離だった。
ここではオリジナルの大福とフライドポテトが振る舞われた。
十勝産の小豆で作られた大福とポテトをおいしくいただいたあと、空になったウォーターボトルに水を補給し、軽いストレッチも済ませて出発の準備を整えた。
我々はおそらく先頭グループの最後尾を走っていた。エイドステーションを早めにスタートすることで遅れを取り戻すことができる。とはいえ、走行中にどんどん追い抜かされるので、次のエイドに着くころにはまた最後尾となっていた。
第1エイド「道の駅 ピア21しほろ」から第2エイドの「道の駅 かみしほろ」までの走行距離は約12kmと短い。しかし、この区間は強い向かい風に加え、タイヤが沈み込むような深い砂利道が続き、思ったよりも体力を消耗してしまった。
大会の少し前から体調を崩しており、出走前に薬を服用していた。その影響か、いつもより心拍数が高めだった。それでも、第2エイドまでの距離が短かったことに助けられた。
第2エイドでも、軽い補給を済ませたあと、「行くぞ!」と仲間たちに声を掛けてすぐにスタートした。作戦どおり着実に進めていたが、一緒に走っていた仲間たちは、筆者の勝手な作戦に巻き込まれたかたちだ(笑)。
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【写真左】気が遠くなるほど、どこまでも続く直線道路をお気に入りのバイクで走り抜ける【写真右】筆者のバイクのフレームバッグには、行動食とジェル、サドルバッグには予備のチューブと携帯ポンプ、救急用品が入っている
第2エイドをスタートしてからは、徐々に体調が良くなり、調子も上がっていった。気になっていた心拍数の上昇も落ち着き、135〜145あたりをキープできていた。
意識的にいつもより多めに水分補給をしたことが良かったのだろう。エイドでは十分な水分とエネルギー補給を欠かさないこと。その重要性を改めて認識した。
景色が変わり始める中盤戦
第3エイドまでは約35kmのロングセクションだ。事前に共有されていたコースデータのとおり、少しずつアップダウンが増えていく。
スタート地点から50kmを過ぎたあたりからアップダウンが増え始め、集団も徐々にばらけていく。平坦な道ばかりを走っていると、なぜか坂を登りたくなってくるものだ(サイクリストあるある?)。
写真で見ると迫力のあるアップダウンだが、この景色の中では不思議と苦に感じない。もともとロングコースにエントリーしている参加者は、いずれも経験豊富な強者揃いだ。むしろ、この登り坂にテンションが上がっているようにも見えた。
第3エイド「道の駅うりまく」に到着。
第3エイドでは冷たい蕎麦が振る舞われた。さんざん汗をかいているので、蕎麦つゆの塩分が身体に染み渡る。
ここまでの走行距離は72km。そろそろ脚の筋肉が張り、同じ姿勢で走り続けたことで身体も凝り固まってくる頃だった。
なんとなく始めたヨガ?で身体をほぐしたのだが、これが思いのほか効果てきめんで、一時的ではあるものの身体が軽くなったように感じた。
この楽しい時間をもう少し過ごしたいところだが、身体もリフレッシュできたので、すぐにスタート準備に入る。
ここまで何とか先頭グループでの走行を維持してきた。しかし、スタート時はグループの先頭を走っても、次のエイドに到着する頃には最後尾になっているので、必然的に休憩時間は短くなってしまう。ただ、それも最初から想定していたことだ。自分で決めたルールを崩さず、次のエイドに向けて出発した。
第4エイドとなる「南中音更会館」までは16kmだ。
最後のエイドとなる「南中音更会館」では、おなじみのオリジナルあんぱんが振る舞われた。これが実においしく、牛乳との相性も抜群だった。
ほかの菓子は袋に詰め、フレームバッグにしまって走りながら食べることにした。
十勝グラベル108km完走、その先にあったもの
第4エイドからゴールまでの距離は残り20km。いよいよラストステージだ。
しかし、この最後の20kmこそが本大会の真骨頂である。アップダウンはさらに激しさを増していく。
最後の区間で、いくつの坂を越えたことだろう。
平坦の多いコースとはいえ、すでに88kmの砂利道を走ってきた脚だ。ペダルを回しながらでも、ふくらはぎと太ももの筋肉が強張っているのがわかる。
最後の登り坂は、足が攣らないよう慎重に、ゆっくりとしたペースで登った。そして無事に登り終えることができた。
グラベル区間を走り終え、舗装路に入ってゆっくりとペダルを回していると、その先にゴールゲートが見えてきた。身体は疲れているはずなのに、「もう少し走っていたい」と思ってしまう。この感情は、ほかの大会でゴールを迎えるときも同じだ。
少し後方を走っていた仲間と合流し、無事に制限時間内でゴールゲートをくぐることができた。
十勝グラベルは、北海道を代表するグラベルライドイベントの一つといっていいだろう。 ライドイベントへの参加経験がない人にとって、108kmは少々ハードルの高い距離かもしれない。しかし、ミドルコース(82km)やウェルカムライド、アフターライドも用意されている。自分の実力に合ったコースを選べば、きっと満足できるイベントだと自信を持っておすすめできる。
まだ正式な発表はないが、2027年大会の開催にも期待したい。このイベントへの参加を目標にトレーニングに取り組んでみるのも良いだろう。その価値は十分にあるはずだ。
筆者にとって、今回が2回目の十勝グラベル出場だった。来年の活動計画はまだ決まっていないが、できればウェルカムライドやアフターライドにも参加したいと思っている。
最後に、この場を借りて運営スタッフの皆さまにお礼を伝えたい。
「このような素晴らしい機会を作っていただき、感謝申し上げます。サポートライダーの皆さまのおかげで、安全かつ安心して最後まで走り切ることができました。ありがとうございました!」














