8月31日に行われた「北海道新幹線建設促進札幌圏期成会」の総会で、鉄道・運輸機構が工事進捗状況を報告。報道等で「トンネル工事全体の進捗率は93%」と報じられた。その資料が鉄道・運輸機構の公式サイトに「最新の工事進ちょく状況」として公開された。トンネル工事に加えて、橋りょう・高架橋等の工事と軌道工事の進捗も記載されている。
トンネル区間は地質不良区間との戦いに
北海道新幹線の延伸区間となる新函館北斗~札幌間は約212km。このうちトンネル区間は合計で約169km。全体の約79%がトンネルとなっている。トンネルは合計17本あり、長大なトンネルは複数の工区に分けられ、合計40工区ある。
トンネル17本のうち、後志、二ツ森、ニセコ、宮田、昆布、国縫、豊野、幌内、立岩、野田追、磐石、二股の12本は掘削を完了し、路盤整備、内装、軌道敷設、架線設置などの工事を進められる段階に。トンネル総延長のうち約93%にあたる157kmの掘削が行われた。
9月の時点で未完了のトンネルと工区の状況は以下の通りとなる。
札樽トンネル札幌工区
市街地地下を進むルートで、函館本線盛土区間やマンション、ガススタンド、跨線橋の基礎部分が近いため慎重に進めている。地質不良区間で凍結工法を採用し、地下水などを凍らせるため地中に凍結管を埋めている。1カ月の掘削延長は22m。
札樽トンネル銭函工区
新函館北斗方は地質不良区間が継続中。1カ月の掘削延長は54m。
札樽トンネル石倉工区
2026年4月6日にトンネル構内へ土砂流入が発生し復旧作業中。掘削停止により1カ月の掘削延長は0m。
羊蹄トンネル有島工区
掘削進路上に岩塊に当たりシールドマシンが停止。地上から9区間でボーリング調査を行い、シールドマシンの掘進に支障となる岩塊を確認した。そこで到達立坑からNATM工法で掘削し、岩塊を撤去しながら掘削している。
山岳トンネルで採用されるNATM工法なら、岩盤の状況に応じて発破などを用いて掘削できた。それにもかかわらず、有島工区でシールド工法を採用した理由は、この地域が火山活動によって形成され、未固結の土砂・礫・火山灰などが複雑に混在しているから。しかも地下水が豊富で、地下水位も高い。
NATM工法でこのような軟弱地盤を掘削する場合、地盤改良のために補助工法を多用する必要がある。そこで掘削部分を密閉できるシールド工法を採用し、シールドマシンで掘削しながら、場所打ちコンクリートによる一次覆工、防水処理、二次覆工などを行ってトンネルを完成させる方法を取り入れた。これをSENS工法という。
SENSは「Shield・ECL(場所打ちライニング)・NATM・System」の略。NATM工法とシールド工法のハイブリッドともいえる。シールド工法は掘削後にセグメントという部品を組み合わせ、筒状にトンネルを構築する。SENS工法はシールドマシンで掘削し、場所打ちコンクリートによる一次覆工などを組み合わせてトンネルを構築する。セグメントの製造と組立てが不要になるため、シールド工法より低コストだという。
有島工区は地盤の特性から、シールドマシンによる掘削が採用された。ところが、シールドマシンの弱点となる岩塊が現れた。到達立坑からNATM工法でサブトンネルを掘削し、ひとつひとつ岩塊を取り出す作業が行われている。1カ月の掘削延長は36m。
内浦トンネル東川工区
地質不良区間により進捗が低下した。1カ月の掘削延長は8m。
渡島トンネル南鶉工区
地質不良区間継続中。1カ月の掘削延長は26m。
渡島トンネル台場山工区
地質不良区間継続中。3交代制で24時間の掘削中。1カ月の掘削延長は27m。
全体的に地質問題が影響している。工期の遅れが大きく報道された羊蹄トンネルも、SENS工法を採用した経緯と状況を考慮すれば、筆者としては納得できる。
高架橋工事はおおむね順調、悩みは人手不足か
高架橋と橋りょうを合わせた土木工事の総延長は合計42.9km。うち13.9kmが施工済みで、進捗率は約32%。高架橋は基礎工事、橋脚施工、桁設置など複数の工程を経て完成するため、工区によって進捗に差があるものの、今後も順調に数値が増えていくと思われる。一方で資材確保と人手不足の影響が現れる工区もあり、現場作業以外の要因で工事が遅れている。
進捗が低下している工区の原因をまとめると、以下の通りとなる。
新小樽(仮称)駅高架橋外1箇所
地盤状況を踏まえた補強工事が追加され進捗低下。
琴平高架橋
基礎施工時に地中に大きな石が見つかり、撤去作業が追加された。こうした地盤状況を踏まえて構造物の設計を見直したため進捗低下した。
倶知安駅高架橋
冬季間の生コンクリートの確保が困難、作業員の需給逼迫で進捗低下。
岩尾別高架橋
基礎施工時で地中に大きな石が見つかり、撤去作業が追加された。
宮田高架橋外1箇所
作業員の需給逼迫で進捗低下。
長万部駅高架橋
駅部の大型構造物における生コンクリートの需給逼迫により進捗低下。
国縫高架橋
地盤状況を踏まえた補強範囲の見直し、作業員の需給逼迫により進捗低下。
いずれも生コンクリートと作業員について、「需給逼迫」と表現している。これは、「確保困難」とすれば現場に原因があるように受け取られかねないからだろう。資材不足も人材不足も社会全体の問題となっており、土木建設業界において共通の悩みといえる。
軌道工事はこれから本格化
9月1日付「最新の工事進ちょく状況」の中で、軌道工事についても報告されている。現時点では、トンネルや高架橋と比べて進捗率が低い。軌道工事はトンネルや高架橋などの土木工事の進捗を受けて進められるためである。
軌道工事は「基準器設置」「一次溶接」「仮軌道設置」「軌道スラブ建設」「モルタル注入」「レール敷設」「二次溶接」「レール面整正」の順に進む。軌道工区はトンネルや高架橋のような区間分けではなく、いわばチーム制のようになっているのかもしれない。
基準器設置工区は全線にわたる。基準器の「軌道用高低縦距測定器」は、レールの位置と高さ、向きをミリ単位で正確に決める装置。レール溶接は2チームに分かれ、札幌側と新函館北斗側を担当する。軌道建設は5チームに分かれており、区間ごとの分担はこのチームが担う。
レールは25m単位で輸送され、軌道基地で「一次溶接」作業を行い、200mレールになる。これを軌道敷設現場で溶接して、さらに長いレールを作って敷設される。
鉄道・運輸機構によると、北海道新幹線のレールは2024年10月に北九州市の工場で製造され、船で函館港に輸送し、保管した後、2025年9月から軌道基地への搬入が始まったという。軌道基地で25mレール8本を溶接し、200mレールにして敷設現場へ輸送。そこでさらに溶接しながらロングレール化し、敷設していく。
これとは別に、2025年4月に北九州市からの貨物列車に150mレールを搭載し、4日間かけて函館本線長万部駅に輸送する取組みも始まった。新幹線の25mレールは、もともと製鉄所で作った150mレールをトレーラーなどで輸送しやすいように25mに切断していた。150mレールをそのまま輸送することで、切断と溶接の工程を省略できる。
鉄道・運輸機構の「北海道新幹線 最新の工事進ちょく状況」は毎月1日現在の状況が公開されている。開業を楽しみに待ちつつ、月に1度、進捗をチェックしてみたいと思う。



