北海道大学産学・地域協働推進機構と、北海道に本社を構えるITソリューション企業のHBAが共催する「北の大地で学ぶ、地域課題解決キャンプ」が、8月31日から9月3日まで開催された(道外学生は9月1日から参加)。道内外から大学生41人が集まり、小樽をテーマに観光の活性化や地域の魅力向上につながるアイデアを考えた。
参加者は、小樽運河で旅行客にアンケートを行うなど、実践的なプログラムを通して思考力や行動力、チームワークを養った。
最終発表では、「土産物店や飲食店で使えるプリペイドカードを販売しては」「冬道の滑り止めの砂を色付きにして景観を楽しく」といった、ユニークなアイデアが披露された。
北大×HBAの産学連携による人材育成事業
同キャンプは、「ソーシャルアントレプレナー育成プログラム」の一環で、今回が2025年に続く2回目の開催となった。
このイベントでは、産学官が連携して学生の学びをサポートした。イベントの活動費用や、道外学生の交通費・宿泊費などはHBAが負担。小樽市の職員もディスカッションなどに参加した。
また、実際に小樽の観光地に足を運び、旅行者や地元の住民、商店主らにインタビューするフィールドワークも行われた。学生たちは地域の魅力や課題を自分たちの目で確かめ、テーマに取り組んだ。
さらに、自治体のITソリューションを手がけるHBAの社員が、リサーチ手法や資料作成についてアドバイス。生成AIの使い方に関するレクチャーも開かれた。
チームの仲間と過ごす濃密な時間
今年は、前回の2倍以上となる41人が参加した。うち北海道外からの参加者は15人で、関東や関西のほか、四国や九州からも集まった。
参加者の所属大学は、北海道大学、北星学園大学をはじめ、一橋大学、都留文科大学、徳島大学、名城大学、東海大学、京都大学、上智大学、福岡工業大学、慶應義塾大学、和歌山大学、立命館アジア太平洋大学、大阪大学、新潟大学、立命館大学、東北大学の全国17大学にわたる。
参加者は8つのチームに分かれ、小樽観光が抱える課題や、その解決策について話し合った。
1日目は道内学生を対象に、情報収集やフィールドワークの手法に関する講義、グループワークを実施。小樽市について調べ、課題の背景を整理した。
2日目には道外学生が合流。講義やグループワークを通して課題を掘り下げ、解決に向けた仮説を立てた。
3日目には小樽でフィールドワークを実施。観光客や地元住民へのインタビュー、小樽市職員とのディスカッションを通して仮説を検証した。その後、調査結果を整理し、課題解決につながるアイデアを膨らませた。
最終日の4日目には、チームごとに取り組みの成果を発表し、審査員が内容を評価した。
学生が感じた小樽の課題、そして解決策とは
グループワークとフィールドワークを経て、学生からは、小樽が通過型の観光地となっており、旅行客の宿泊や滞在時間が少なく、経済効果が限定的であることが課題として挙げられた。
また、旅行客が中心部の観光スポットに集中する一方で、十分に活用されていない観光資源も多いことや、外国人旅行客の増加などに伴うオーバーツーリズムへの懸念も指摘された。
プレゼンテーションでは、こうした課題の解決につながるアイデアが出された。
まず複数のチームから挙がったのは、夜のにぎわいを創出するというもの。現在、季節限定で開かれている夜市(ナイトマーケット)を継続的に開催すべきだという提案が目立った。
また、イベントの中で地域住民と旅行客の交流を生み出し、オーバーツーリズムによる課題の緩和につなげられないかという提案も出ていた。
一方、新しい小樽の魅力を発信するという視点から、坂の多い地形と雪に着目したチームも。雪道の転倒防止のために散布する砂を色付きにすることで、歩行者の安全を確保すると同時に、カラフルな景観をつくり出すというプレゼンにまとめた。
この発表に対して、審査員を務めた小樽市総合政策部長の尾作考則氏が「斬新なアイデアで、市役所に持ち帰って検討したい」と応じる場面もあった。
ガラスで小樽らしさもアピール
審査の結果、最優秀賞に選ばれたのは、ガラス製のプリペイドカードを考えたチーム。土産物店や飲食店の混雑を緩和しつつ、消費を促す仕組みが高く評価された。カードの材質を、小樽になじみの深いガラスにするという独創性もポイントになった。
プレゼンを担当した北大1年の遠藤航さんは、「旅行客にアンケートを実施したところ、観光への満足度が高いほど、支出額が増えてリピートにつながる傾向がありました。一方、お店が混雑していて、ゆっくり買い物や食事ができないという課題が見つかりました。そこでプリペイドカードを販売することで支払いをスムーズにし、地域内での消費につながる仕組みを考えました」と提案のねらいを説明していた。
北海道の景色や味覚も満喫する
大学や出身地が異なる同世代の学生と共同作業をして、視野や価値観が広がるのもこのイベントの魅力。イベント終了後には、チームの仲間と写真を撮ったり、連絡先を交換して別れを惜しむ姿も見られた。
新潟大1年の相馬茉実さんは、大学で地域活動をしていることがきっかけでこのイベントに参加。滑り止めの砂を着色して雪道をカラフルにするというアイデアをメンバーと考えた。
「新潟では雪道に砂をまく習慣がないので、新鮮な驚きがありましたが、『地域のみなさんが不便に感じている坂道や雪を、小樽の魅力に変えられないか』という出発点から、調査やプレゼンに取り組みました。北海道に来たのはプライベートも含めて今回が初めて。ジンギスカンを囲んだ交流会や、フィールドワークの合間の小樽観光も楽しめました」と充実した表情で振り返っていた。









