長く続いた「金利のない世界」から状況は大きく変わり、2026年6月には日本銀行が政策金利を1%程度に引き上げました。普通預金でも年1%の商品が登場するなど、いよいよ「金利1%時代」が現実のものになっています。
「金利が1%になったからといって、私たちの生活に何か影響があるの?」と思う人もいるかもしれません。しかし、金利が上がると、預けている人には追い風、お金を借りている人には逆風になります。これまで以上に、お金を「どこに預けるか」「どう借りるか」「どう運用するか」で差がつく時代になってきました。
そこで今回は、金利上昇が家計にどのような影響を与えるのかを確認しながら、「預金」「住宅ローン」「資産運用」の見直しポイントを解説します。
普通預金でも利息を実感できる時代に
大手3行の普通預金の金利は、長く続いた超低金利から上昇し、現在は年0.40%となっています。100万円を1年預ければ、利息は4,000円(税引前)つきます。
超低金利時代には、普通預金の金利が年0.001%という時期もあり、100万円を1年預けても利息はわずか10円でした。現在の年0.40%なら、その400倍です。
さらに、銀行によっては普通預金金利が年1.0%という商品も登場しています。預ける銀行によって受け取れる利息に差がつくようになり、以前よりも預金金利を比較して銀行を選ぶことが重要になっています。
*定期預金なら年1%以上も
定期預金に目を向けると、大手3行の1年定期は0.5%、5年定期は1.0%、10年定期は1.25%となっています。
※2026年8月31日現在
たとえば、100万円を年1.0%の5年定期に預けた場合、1年あたりの利息は1万円(税引前)です。超低金利時代にはほとんど期待できなかった利息が、元本保証の定期預金でも受け取れるようになっています。
*個人向け国債は年2%前後に
元本割れせず、利子も期待できる商品として、個人向け国債も注目されています。証券会社や銀行、郵便局などの金融機関で1万円から購入でき、利子は半年ごとに受け取れます。
2026年8月募集分の利率は、次のとおりです。
- 変動10年 (第197回): 1.87%
- 固定5年 (第185回): 2.06%
- 固定3年 (第195回): 1.71%
現在は固定5年の利率が変動10年を上回っています。ただし、固定5年は購入時の利率が満期まで変わらないのに対し、変動10年は半年ごとに適用利率が見直されます。今後さらに金利が上昇すれば、変動10年の適用利率も上昇する可能性があります。
生活費や近いうちに使うお金は普通預金、当面使う予定のないお金は定期預金や個人向け国債など、お金を使う時期や目的に合わせて置き場所を分けるとよいでしょう。
住宅ローンは金利上昇で負担増に
金利上昇は、預金などでお金を運用する人には追い風となりますが、住宅ローンなどでお金を借りている人には負担増につながります。
実際、住宅ローンの変動金利も上昇しています。三井住友銀行の変動金利型の金利水準の推移を見ると、2009年1月から2024年9月まで年2.475%だったものが、2024年10月に年2.625%、2025年4月に年2.875%、2026年3月に年3.125%と、段階的に上昇しています。
三菱UFJ銀行は、短期プライムレートの引き上げを受け、2026年9月から住宅ローンの変動金利の基準金利を見直すとしています。
変動金利で住宅ローンを借りている人は、今後さらに金利が上昇した場合、毎月の返済額や総返済額がどの程度増えるのかを確認しておきましょう。そのうえで、家計や住宅ローン控除の状況なども踏まえ、繰り上げ返済や借り換えも選択肢として検討するとよいでしょう。
リスクをとった投資も必要?
「普通預金でも年1%が可能なら、わざわざリスクをとって投資をする必要はないのでは?」と思うかもしれません。しかし、預金と投資は役割が異なります。
預金は、元本割れを避けたいお金の置き場所として適しています。一方、株式や投資信託には価格変動のリスクがあるものの、長期的な資産形成では預金を上回るリターンが期待できます。
また、預金金利が1%でも、物価が年2%上昇すれば、お金の実質的な価値は目減りします。預金金利が物価上昇率に追いつかない状況では、預金だけでなく、投資を取り入れて資産を育てることも重要になってきます。
そのため、「預金か投資か」の二者択一ではなく、近いうちに使うお金や生活防衛資金は預金、数十年先に使う老後資金などはNISAを活用して投資信託で積み立てるなど、使う時期や目的に応じて置き場所を分けることが大切です。
余裕資金100万円があったらどこに回す?
ここからは実践編として、余裕資金が100万円ある場合、どこに振り向けるとどの程度の効果が期待できるのか、1年間で比較してみましょう。
<試算条件>
・2026年8月時点の金利を使用
・個人向け国債は2026年8月募集分の初回適用利率が1年間続いたと仮定
・住宅ローンの適用金利は年2.0%と仮定
・NISAでの資産運用は全世界株式への投資を想定し、年5%で試算
同じ100万円でも、どこに振り向けるかで効果は大きく異なります。
単純に金額だけを比べれば、年5%で運用できた場合のNISAが最も大きくなります。ただし、5%はあくまで試算上の利回りであり、実際の運用成果はその年の相場によって大きく変わります。元本割れする可能性もあるため、預金などとは分けて考える必要があります。
一方、普通預金や定期預金、個人向け国債は、安全性を重視したお金の置き場所です。100万円を1年預けた場合でも、定期預金なら約8,000円、個人向け国債なら約1万5,000円の利息・利子が期待できます。超低金利時代と比べると、安全性を重視しながら一定の収益を得られるようになったことは大きな変化です。
住宅ローンの繰り上げ返済も、金利上昇局面では利息負担を抑える有力な選択肢です。ただし、住宅ローン控除を受けている場合は、繰り上げ返済によって控除額が減る可能性があります。次項で詳しく見ていきましょう。
住宅ローン控除があるから繰り上げ返済は待つべき?
住宅ローン控除の適用要件を満たしていれば、住宅の種類や入居年などに応じた借入限度額の範囲内で、年末の住宅ローン残高の0.7%を所得税などから控除できます。ただし、繰り上げ返済によって償還期間が10年未満になると、それ以降は住宅ローン控除を受けられなくなります。また、繰り上げ返済によって年末のローン残高が減れば、控除額が少なくなる可能性もあります。そのため、「控除期間が終わってから繰り上げ返済しよう」と考える人もいるでしょう。
しかし、金利上昇局面では、住宅ローン控除を最大限受けることを優先するのが必ずしもよいとは限りません。控除があと数年残っていても、その間に変動金利がさらに上昇すれば、増える利息が控除によるメリットを上回る可能性があるためです。
余裕資金を手元に残して運用するメリットよりも、繰り上げ返済によって減らせる利息のほうが大きくなれば、控除期間中でも繰り上げ返済を検討する余地があるでしょう。
変動金利で住宅ローンを借りている人は、金利が変わるたびに、「ローンの金利負担」「住宅ローン控除のメリット」「預金や国債など安全資産の税引後利回り」を比較してみることが大切です。
金利1%時代は「お金の置き場」を見直す
超低金利時代には、お金をどこの銀行に置いても大きな差はありませんでした。しかし、金利が上昇した今は、お金の置き場所によって得られるメリットに差が生まれるようになっています。
すぐに使うお金は普通預金、当面使わないお金は定期預金や個人向け国債、長期の資産形成にはNISAというように、使う時期や目的に応じて置き場所を分けるとよいでしょう。また、住宅ローンを組んでいる人は、金利上昇に備えて、必要に応じて繰り上げ返済や借り換えなども検討していきましょう。
何もしなくても預金の利息にほとんど差がつかなかった時代から、自分で選ぶことで差がつく時代へと変わり始めています。お金の置き場所をこの機会に見直してみることをおすすめします。

