テレビやラジオは、どうすれば若い世代から信頼されるのか――8月に行われた放送倫理・番組向上機構(BPO)青少年委員会が開催した中高生モニターとの意見交換会で、「どんな時に、テレビ・ラジオを信頼できる/信頼できないと感じるのか」「信頼するために、こうしてほしい」をテーマに議論が行われた。

事前アンケートでは、「複数の視点で検証し、複数の意見を提示すること」が62%で最多に。「根拠・出典を示すこと」が38%、「やらせや過度な演出、過剰な取材をしないこと」が35%と続き、AIによるフェイク動画も身近になった時代ならではの意見も相次いだ。

  • BPO事務局が入る千代田放送会館

    BPO事務局が入る千代田放送会館

62%が「複数の視点」 38%が「根拠・出典」

BPO青少年委員会は、今年度の中高生モニター30人に事前アンケートを行い、26人から回答を得た。

自由記述を事務局が分類したところ、「複数の視点で検証し、複数の意見を提示すること」が16人・62%で最多。「根拠・出典を示すこと」が10人・38%、「やらせや過度な演出、過剰な取材をしないこと」が9人・35%、「現場の取材が徹底されていること」が4人・15%、「間違いがあればきちんと訂正すること」が3人・12%、「その他」が2人・8%だった。

中学3年の女子生徒は「一つの視点だけでは他の可能性を見落とすことがあり、視聴者にもさまざまな意見があります。複数の立場や見方に合わせた報道がされていると、信頼しやすいと思います」と指摘。

高校1年の女子生徒も、海外情勢の報道で一方の意見が多く、もう一方の視点が少ないと感じた経験から「情報の公平さを保つには、どちらの立場からも報道することが大切だと思います」と話した。

また、高校1年の女子生徒からは「専門家が複数人いても、同じ立場の専門家だけが選ばれていれば、多角的とは言えません」との声も。単に人数をそろえるのではなく、どのような立場からの意見なのかを見ることの重要性を訴えた。

「最後にそれを判断するのは、やはり自分」

吉永みち子委員長は、テレビでコメントする立場から「コメントするということは、ある一つの意見を言っているということでもあります」と説明。「今は『これが正しい』と簡単には言えない時代ですよね」と語った。

公平にしようとして、右、左、上、下とさまざまな視点を並べても「最後にそれを判断するのは、やはり自分なのです」とし、自分にとって何が譲れないのか、どの視点から物を見るのかという“基軸”を持つ必要性を指摘した。

吉永委員長自身は「戦争は絶対嫌だ」という思いを一つの軸として挙げ、「お互いが自分の軸足を定めたうえで議論していけば、そこから新しい、いい流れが出てくるのではないかと思います」と述べた。

「訂正放送はテレビの強み」

テレビならではの信頼の築き方を評価する声もあった。

中学3年の女子生徒は「訂正放送の時間を設けていることは、ネットニュースにはないテレビの強みだと思います」とし、「間違ったことをきちんと訂正し、正しい情報を届けようとする姿勢が見えること」が信頼につながるとした。

一方、中学2年の女子生徒は、事件の被害者や被災者などに取材が集中することについて「さらに負担になると思います」と指摘。局同士で取材内容を共有するなど、取材対象者への配慮も必要ではないかと提案した。

AI時代だからこそ「現場に行ってほしい」

生成AIによってフェイク動画を作ることが容易になった時代だからこそ、テレビには現場取材を期待する声も上がった。

中学3年の女子生徒は「AIなどでフェイク動画が作れる時代だからこそ、現場に行き、現場の素材を使ったニュースをしてほしいです」と要望。「徹底した取材が、本当の意見や事実への信頼につながると思います」と語った。

池田雅子委員は、報道現場では「事実を伝えることが本当に肝」とした上で、放送法第4条第1項に、政治的に公平であること、報道は事実を曲げないこと、意見が対立する問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにすることが定められていると説明。

中高生が自然に「複数の視点が大事」「事実をちゃんと伝えてほしい」「間違ったら訂正してほしい」と挙げたことについて「とてもいい感覚だと思いました」と評価した。

「テレビを見る目が少し変わった」

この日はフジテレビで実際の報道現場も見学し、事後アンケートでは、テレビへの印象が変わったという声が相次いだ。

中学1年の女子生徒は「画面に出ているニュースの裏側で、多くの人が相談しながら支えていることを知り、テレビを見る目が少し変わりました」と回答。

中学2年の女子生徒も、実際に原稿を読んだ場合に何秒かかるかまで考えながら伝えていることを知り、「これは確かにプロの仕事なんだなと実感できました。ニュースを見るときの印象が変わりました」と振り返った。

別の中学2年の女子生徒は「今年の夏一番の思い出でした!」とし、テレビ制作の裏側に多くのスタッフの努力があることに加え、細かいところまで決める「メディアとしての責任感」も感じたという。

もともと放送に強い関心があったわけではないという高校1年の女子生徒は「自分の知らない世界は、こんなにも面白く、どこまでも広がっているのだ」ということが最も印象に残ったと回答。モニター会議が終わる頃には「将来、チーム一丸となって一つのものを作り上げるような仕事に就けたらいいな」と考えるようになったとして、「私の価値観や将来への考え方を大きく変える経験になったことは間違いありません」と振り返っている。

【編集部MEMO】
BPO青少年委員会では、中学生・高校生を対象に「中高生モニター」を年度ごとに公募。モニターはテレビ・ラジオ番組について意見や感想を寄せ、その内容は委員会での議論の参考となるほか、各放送局にも送られている。