KDDIとローソンは9月1日、オフィス空間に特化した出店モデル「オフィスローソン」を京セラ本社に導入し、「ローソンS京セラ本社ビル店」を開店した。

。大掛かりな工事を必要としない「ユニット型店舗」と、専用アプリを利用したスマホレジを組み合わせることで、通常のコンビニよりも柔軟にオフィスへ導入できる点が特徴だ。両社は今回の実証を踏まえ、2027年度中の事業化を目指す。

  • 11階に構えられた「ローソンS京セラ本社ビル店」「ローソンS京セラ本社ビル店」

    11階に構えられた「ローソンS京セラ本社ビル店」

商品棚を組み合わせる「ユニット型店舗」店

オフィスローソンは、従来型のコンビニのように一定規模の店舗区画を用意するのではなく、商品棚などを「ユニット」として組み合わせ、設置場所の広さや利用者のニーズに応じて売場を構築する出店モデルだ。

おにぎりや弁当などを取り扱う米飯ユニット、飲料を扱う要冷商品ユニットなどを組み合わせることができるため、オフィスや事業所ごとに異なるスペースや需要へ対応できるのが特徴。大掛かりな給排水工事なども不要で、従来型店舗と比較して低コストかつ短期間で開店できるとしている。

オフィスローソンはこれまで、東京・高輪のKDDI本社、大阪、新宿、多摩センターなど、KDDIの事業所内での実証を中心に展開されており、今回の京セラ本社への導入は、他企業のオフィスへ広げる初の事例となる。

京セラ本社では、食堂がある11階と12階の2フロアに売場を設置している。京セラ 総務人事部 総務部の伊藤氏によると、利用シーンに応じて品揃えを変えており、オフィス全体で同一の商品構成にするのではなく、フロア単位の利用実態に応じて売場を設計したという。

「昼食時に利用者が集中する11階では、お弁当やおにぎりなど食事系の商品を中心に展開しています。その一方で、打ち合わせや作業スペースとして利用される12階では、コーヒーや軽食、菓子などを中心に配置しました」(伊藤氏)

  • 12階は小型店舗で軽食やコーヒーが並ぶ

    12階は小型店舗で軽食やコーヒーが並ぶ

店舗面積は約89.56平方メートル、約27坪で、営業時間は午前7時30分から午後8時まで。土日祝日は休業する体制で運営していくという。

スマホで商品をスキャン、そのまま決済

オフィスローソンでは、店舗に一般的な有人レジを設置せず、利用者自身がアプリで商品のバーコードをスキャンし、スマートフォン上で決済する仕組みが採用されており、KDDIが開発した専用の「オフィスローソンアプリ」が活用される。

  • オフィスローソンアプリで商品の購入が行える

    オフィスローソンアプリで商品の購入が行える

アプリ上の決済に特化している背景にあるのが、出社回帰に伴うオフィス周辺の混雑だ。

KDDIとローソンによると、コロナ禍以降、多くの企業で社員の出社が増え、オフィスで昼食や買い物を効率良く済ませたいという需要が高まっている一方で、昼休みにはオフィス周辺のコンビニや飲食店へ利用者が集中し、レジ待ちなどによって買い物に時間がかかるケースもあるという課題があったという。

これまでのKDDIの拠点で実施されてきた実証においては、スマホレジを利用することで、混雑時間帯でも店舗での買い物を短時間で完了できることが確認できているという。

また、社員IDとの連携により、企業が福利厚生として社員向けクーポンを配布するといった利用方法も可能で、単に無人店舗を設置するのではなく、デジタル技術と企業の福利厚生施策を組み合わせられる点もオフィス向け店舗の特徴となっている。

商品補充や在庫管理も、店舗ごとに従来型コンビニと同じ運営体制を用意するのではなく、近隣店舗などと連携して行う仕組みを採用している。そのため、店舗設備や運営負荷を抑えながら、小規模な需要でも出店できるモデルの構築を進めている。

京セラでは「往復15分」の買い物負担解消へ

今回、実証フィールドを提供した京セラでは、以前から社員から社内へのコンビニ設置を求める声があった。

同社では社員食堂を運営しているものの、勤務時間や働き方の多様化に伴い、必要な時間に食事や飲料を購入できる環境の重要性が高まっているそうで、オフィスローソンについては、都市部のオフィスに限らず、将来的には交代勤務を行う地方の工場などでも、新たな従業員サービスにつながる可能性があるとしている。

京セラ本社では、従来、社員がコンビニを利用する場合に社外へ出る必要があり、店舗との往復に約15分の時間がかかっていた。今回の店舗は、こうした移動時間を削減し、必要な商品を社内で購入できる環境を整える狙いもある。

オフィス内コンビニへの需要があっても、従来型店舗では一定の売場面積や工事が必要となるため、必ずしも採算やスペースの条件を満たせるとは限らない。オフィスローソンは、ユニット型にすることでこうした出店条件を緩和し、従来は店舗を設けにくかった場所への展開を想定している。

2027年度中の事業化へ、他企業にも展開

KDDIとローソンは2025年7月、高輪のKDDI本社でオフィス環境に特化した実験店舗を開始した。その後、大阪や新宿などへ対象を広げ、営業時間や店舗構成など異なる条件で実証を進めてきた。2026年4月には多摩センターで、現在のオフィスローソンの中核となるユニット型店舗の検証を開始している。

今回の京セラ本社への導入では、KDDIグループ外の企業で実際に運用し、利用状況や商品構成、運営方法などを検証していく。両社は今回の得られた結果を踏まえ、2027年度中にオフィスローソンを事業化し、他企業のオフィスなどへの展開を進めていく方針だ。