KDDIグループは5月12日、決算会見を開き、2026年度~2028年度を対象とする新中期経営戦略「Power-to-Connect 2028」も披露した。AIを使うのではなくAIが当たり前になる「AI前提社会」において、代替性が低くAIに壊されにくい価値で差別化を図る。

KDDI、「AI前提社会」に向けブランド刷新

KDDIは2000年の発足以来、ブランドメッセージとして「Designing The Future」を発信してきた。これは、通信インフラ企業として未来を切り開くという意思を表している。

2019年からは「Tomorrow, Together」とし、共創によって新しい明日を描くフェーズに入ったことを表現した。

同社は今回、新中期経営戦略の策定に伴い、新たなブランドメッセージ「Spark Your Journey」を発表。「Spark」は夢中になれる何かに出会えた瞬間に胸の奥で生まれる小さなときめきを、「Your Journey」はユーザーが歩む人生の旅路をそれぞれ表している。

松田氏は、「"Designing The Future"では未来、"Tomorrow, Together"では明日としてきた表現を、今回はJourneyという時間軸を持った表現に進化させた。お客様一人一人の人生(Journey)そのものに寄り添い、その挑戦に火をともし、後押しをする存在でありたいという強い決意を込めた」と、新たなブランドメッセージを紹介した。

  • KDDI 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏

    KDDI 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏

  • KDDIの新たなブランドメッセージ

    KDDIの新たなブランドメッセージ

「Fusion」戦略で通信・AI・リアルを融合

新中期経営戦略において重要なテーマが、核融合(nuclear fusion)をイメージしたという「Fusion」だ。KDDIがこれまでに培ってきたauショップやローソンなどの顧客接点、基地局を含むインフラ、多様なスキルと経験を持つ人材を強みとし、異なる分野の融合によって事業を強化する。

  • 「Fusion」を軸とする価値創造手法

    「Fusion」を軸とする価値創造手法

価値創造の中核となるのが、店舗網などリアルなアセットとテクノロジーを活用する「Real-Tech Fusion」。これにより、人間が持つ信頼や共感をユーザーに届け、新たな体験価値を創出する。

  • Real-Tech Fusionのサービスイメージ

    Real-Tech Fusionのサービスイメージ

データセンターや海底ケーブルに1.2兆円投資

Real-Tech Fusionの土台を支えるのが「Infrastructure Fusion」。ここでは、通信ネットワークにAIによって付加価値を乗せていく。同社のインフラ戦略の象徴である「デジタルベルト構想」を具現化し、価値を支えるインフラを実現する。

既存のデータセンター(堺・宮崎・多摩・小山)に加え、新たに関西や中部地区をオール光で結ぶ「陸」、アジアとアメリカを一直線で結ぶ大容量・低遅延の光海底ケーブルの「海」、宇宙産業の発展とともに重要性を増す地球と宇宙間の通信「空」の各領域を網羅した通信網を構築する。

2040年頃までを見据えた長期的な視野で設計を検討しており、今後3年間で約1.2兆円を投資する予定。

  • Infrastructure Fusionは「陸・海・空」でネットワークを構築

    Infrastructure Fusionは「陸・海・空」でネットワークを構築

同様に、Real-Tech Fusionの実行力を牽引するのが「HR Fusion」。既存の人材や技術者が新たな専門スキルを習得し、さらに国内外のグループ各社で実践経験を積むことで、社会実装を担う「両利きの人材」へと進化することを推進する。

「グループ会社の成長が中期経営戦略をけん引する」(松田氏)として、グループ全体でAI人材3000人、セキュリティ人材2000名の体制を構築する。さらには、販売会社での営業品質向上、中堅・中小企業向けのDX支援人材のスキル向上など、全国各地でファンを増やす取り組みを強化するという。

「核融合において難しいのは、超高温・超高密度な状態を作り続けること。単純な足し算ではなく、高いエネルギー状態を生み出すための環境づくりや経営基盤が重要」(松田氏)

  • 社員登用など待遇・報酬面でも人材育成を支援するという

    社員登用など待遇・報酬面でも人材育成を支援するという

3つの事業セグメントで成長加速

KDDIが新たに定めた中期経営戦略の重要なテーマは、「持続的な成長」と「クオリティ向上」の2点。この両輪で企業価値の向上を図る。

持続的な成長に向けては、デジタルベルト構想によるインフラ価値の向上や、AIを活用した各事業領域の成長、上記の「Fusion」による新たな価値創造によって、主力事業の成長を促す。

クオリティ向上においては、CAPEXコントロール、規律ある成長投資と事業ポートフォリオの見直し、機動的な自己株式取得などを実施する。

また、同社は成長コミットメントを強化するため、事業セグメントの役割を明確化。通信やインフラを担う「テレコムコア」に加え、高成長をけん引する「ビジネスグロース」と「パーソナルグロース」を設定し、3つのセグメントの相乗効果を見込む。

  • 3つのセグメントで役割を明確化

    3つのセグメントで役割を明確化

テレコムコアは2029年3月期までの安定成長、ビジネスグロース・パーソナルグロースは両セグメント共にCAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)2桁成長を実現することで、全体としてCAGR 5%を目指すとのことだ。

  • 全セグメントで成長と事業構造の変革を目指す

    全セグメントで成長と事業構造の変革を目指す

AI・金融・ローソンなど5つの成長領域を強化

テレコムコアでは、前中期経営戦略の中で増収企業に転じたモバイル事業の成長をさらに加速させる。事業成長のポイントは、これまでの施策に引き続きLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を重視した構造改革。販促の価格競争を脱し、価値共創へと主戦場を移す。

松田氏は「AI活用によるマーケティングの高度化という攻めと、コスト効率化という守りを実現していく」と方針を語った。

パーソナルグロースではコアとなる顧客基盤をベースに、「金融」「エネルギー」「デバイス」「ローソン・Pontaパス」「グローバル」の5領域でCAGR 2桁成長を目指す。

金融領域では既存のWeb2時代の金融に加え、Web3など次世代型の金融サービスにも着手する。同日には暗号資産取引所「Coincheck」を持つコインチェックとの資本業務提携を発表しており、今夏をめどに「暗号資産ウォレット」の提供を開始する予定だ。

  • パーソナルグロースセグメントが注力する領域の例

    パーソナルグロースセグメントが注力する領域の例

ビジネスグロースも同様に、「AIインテグレーション」「サイバーセキュリティ」「Connected」「データセンター(AI・コネクティビティ)」「AI-BPO」5領域を設定。CAGR 2桁成長を目指す。

特にAI・データセンターの需要が急増する中、国内外でデータセンターの構築と運営を手掛けてきた実績を生かして、事業拡大を加速する。インフラ基盤を強化するため、国内外において今後3年間で約3000億円規模の投資を計画しているとのことだ。

  • ビジネスグロースセグメントが注力する領域の例

    ビジネスグロースセグメントが注力する領域の例

今後3年間で1兆円規模の成長投資

クオリティの向上を実現するため、KDDIはリターンに基づく戦略的なキャピタルアロケーション(資本配分)を進める。新中期経営戦略においては、営業キャッシュフローを最大化し、設備投資はCAPEX to Sales 12%以下にコントロールする。

  • キャピタルアロケーションの方針

    キャピタルアロケーションの方針

規律をもった成長投資を掲げる同社だが、今般発生したグループ会社による不適切取引事案を受け、「改めて、出資時およびPMI(Post Merger Integration:買収後経営統合)の過程でレビューを強化する」(松田氏)としている。今後3年間で1兆円規模の投資を行う予定。

  • 健全な投資を実現するという

    健全な投資を実現するという

加えて、同社はauフィナンシャルホールディングスの株式上場の検討を開始したことを発表した。同ホールディングスのさらなる成長や、金融事業の公益性などを考慮した結果だという。なお、KDDIは上場後も主要株主として同ホールディングスの持続的な成長を支援する。

27年3月期業績予想、売上高は5.6%増の6兆4100億円

新中期経営戦略の1年目である2027年3月期の業績予想は、売上高が対前年比5.6%増の6兆4100億円、調整後営業利益が同5.0%増の1兆2100億円、調整後当期利益は同2.7%増の7310億円だ。

営業利益は、従来のモバイル事業を軸とするテレコムコアセグメントが285億円増と成長を見込んでいる。パーソナルグロースセグメントは成長率10.3%(226億円増)、ビジネスグロースセグメントは18.0%(141億円増)と、成長事業においては2桁成長を目指す。

  • 2027年3月期の業績予想

    2027年3月期の業績予想