「フィジカルAI」が駅員になる――大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)、KDDI、AVITAは8月28日、フィジカルAIを活用したヒューマノイドをOsaka Metroの接客案内サービスに導入する実証実験を実施することを発表した。実証期間は8月31日から9月15日まで。
今回の実証実験は、梅田駅と谷町九丁目駅の2カ所に、Osaka Metroの制服を着用した「ヒューマノイド駅員」を設置し、駅構内や乗り換えルート、周辺の観光情報などを案内するもの。
ヒューマノイドにはGoogleの生成AIモデル「Gemini」が搭載されており、自然な対話や多言語でのコミュニケーションにも対応するという。
GemiGemini搭載「ヒューマノイド駅員」、60言語に対応
今回の実証では、KDDIとAVITAが開発したヒューマノイドをOsaka Metroの駅構内に設置し、「ヒューマノイド駅員」として接客案内業務に従事させる。
このヒューマノイドは、駅構内の案内や乗り換えルートの説明に加え、周辺のおすすめ観光情報などを利用者に案内。利用者一人ひとりの質問内容に応じた自然で柔軟なコミュニケーションを行う。
多言語でのやり取りにも柔軟に対応できるのが特徴で、英語・中国語をはじめとした観光客が多い国の言語に加えて、スワヒリ語といった言語でも対応可能で、対応できる言語は全て合わせて60言語となっている。
今回設置されているヒューマノイドは、大阪大学教授でAVITA代表取締役社長の石黒浩氏がデザインしたヒューマノイドを基に、機能を刷新したもの。
今回の機体ではGeminiを搭載し、利用者の声のトーン、話すスピード、抑揚、感情のニュアンスをリアルタイムで検知する機能を備えており、音声認識から応答までを直列処理することで超低遅延の応答を実現し、発話内容だけでなく、非言語情報も踏まえた自然なコミュニケーションを目指す。
機能だけでなくメイクにもこだわったそうで、性別を感じさせない両性的な雰囲気かつ、親しみをもって接してもらうために、トレンドを押さえたメイクで表情を作り上げている。
また、ヒューマノイドの手元に設置されたディスプレイにはQRコードを表示するのも今回の実証の特徴的なポイント。
利用者がQRコードをスマートフォンで読み取ると、目的地までの詳細な路線案内図などを端末に持ち出せる。ヒューマノイドとの会話だけで案内を完結させず、その後の移動までスマートフォンでサポートする仕組みだ。
梅田駅と谷町九丁目駅で実証
今回の実証は2つの期間に分けて行われる。
8月31日から9月6日までは、Osaka Metro御堂筋線梅田駅北改札を出てすぐの「Metro Opus 梅田店」にて、続いて9月9日から9月15日までは、Osaka Metro谷町線・千日前線谷町九丁目駅東改札東側にある「Metro Opus 谷町九丁目 east」で実施される。営業時間は期間中、毎日11時から20時までだ。
今回の実証では、単にヒューマノイドが技術的に案内できるかどうかだけではなく、実際の駅利用者がヒューマノイドによる接客をどのように受け止めるかも検証する。
Osaka Metroは、駅での接客案内サービスに関するノウハウや知見を提供するとともに、ヒューマノイドを駅員として活用した場合の需要や利用者の受容性を確認する。
一方のKDDIは、通信技術やAIデータセンターなどのアセットを活用してヒューマノイドを稼働させるインフラを構築し、実証の企画・運営を担当。AVITAはヒューマノイド本体の開発に加え、コミュニケーション技術や対話システムの開発・実装を担う。
駅での実務ノウハウを持つOsaka Metroと、通信・AI基盤を持つKDDI、アバターやロボティクス技術を持つAVITAが、それぞれの知見を組み合わせる構成となっている。
なぜ駅にフィジカルAI? 背景に人手不足
今回の取り組みの背景には、人手不足への対応がある。3社は「少子高齢化などを背景として、さまざまな業界で労働力の確保が課題となる一方、生成AIや産業用ロボットをはじめとするデジタル技術が急速に進化し、日常生活での活用が広がっている」と説明。
Osaka MetroはこれまでもAI技術を活用した取り組みを進めており、今回の実証を通じて、多様な利用者に対するサービス向上の可能性を探る。将来的にも質の高い顧客体験を継続して提供することを目的として、ヒューマノイドを駅で実際に稼働させ、その有用性や課題を確認する。
一方で、KDDIとAVITAは、KDDIが持つ通信・AI基盤と、AVITAが持つアバター・ロボティクス技術を組み合わせた国産ヒューマノイドを、幅広い接客・案内業務で活用することを目指している。両社は2026年3月にフィジカルAI領域で戦略的事業提携を開始し、同年7月には共同開発するヒューマノイドとGeminiの連携を開始している。
今回のOsaka Metroでの実証は、こうした技術を実際の公共交通の現場で検証する取り組みとしての運用となる。
駅以外の接客・案内業務への展開も
今回の実証では、駅構内や乗り換えルート、観光情報などの案内に加え、多言語コミュニケーションやQRコードを使ったスマートフォンとの連携など、フィジカルAIを接客・案内業務に活用する可能性を検証する。
3社は実証を通じて、実運用に向けた課題を探る。Osaka Metroは駅でのサービス向上につなげるほか、KDDIとAVITAは、駅に限らず幅広い接客・案内業務へのヒューマノイドの展開を目指す。


