「ドラマや映画は2倍面白くなった」――。ABEMAオリジナルドラマ『バカンスの法則』(毎週 月・水・金 20:00〜配信)で、連続ドラマ作品での本格的な演技に挑戦したAマッソの加納愛子。小説や脚本を手がける“作り手”としての視点から、創作への思いやドラマ制作への意欲、作品との向き合い方について語った。(前後編の後編)

  • 加納愛子 撮影:佐藤容平

    加納愛子 撮影:佐藤容平

ドラマ監督挑戦に加納愛子が抱く意欲

――加納さんは小説を書かれたり、ドラマの脚本も手がけられています。お話を伺っていると、演じる側だけではなく、演出やプロデューサーのような制作側の視点も持たれているのかなと感じました。今回、東村さんは企画・脚本だけでなく、監督も務められていますが、加納さんも将来的に監督に挑戦してみたいという思いはありますか?

めちゃくちゃありますね。ドラマは作ってみたいです。

――取材が決まってから小説も読ませていただいたのですが、本当に面白かったです。ああいう日常の核心を突くような内容がドラマになっても、すごく面白いだろうなと思いました。

わざわざすみません! ありがとうございます。

――ドラマの脚本は小説やコントとは書き方も違うと思うのですが、脚本を書いてみていかがでしたか?

コンビなので、3人以上が会話するセリフを書くことって今までほとんどなかったんです。15年くらいコンビでやってきましたけど、その筋肉は全然ついていないと思うので、本当に勉強させてもらうつもりで書いていました。

小説は、ある程度自分の何かを投影しているものが多いかもしれません。でも今後、「こういう作品を書いてください」と言っていただけるのであれば、新しい自分の引き出しや可能性を広げながらやってみたいという気持ちはあります。

小説を書くときに加納愛子が考えていること

――加納さんが脚本を担当した『お笑いインスパイアドラマ ラフな生活のススメ』(NHK総合)と『スナック女子にハイボールを』(中京テレビ)は、企画があって執筆されたものだったのでしょうか。

そうですね。どちらもそうでした。

――自分の中にあるものを投影して創作する場合と比べて、企画ありきで書く脚本はまた違った難しさがあるのかなと思いました。

難しいですけど、その分やりがいもありますね。自分でコントを作るのとはまた全然違う仕事をさせてもらっているなという感じです。

――もし、ご自身で企画からドラマを作る機会が訪れたら、やってみたいことはありますか?

どうなんだろう。でも、やっぱりコメディには挑戦したいですね。

――先ほど、脚本を書く面白さについて伺ったのですが、コントと小説もまた創作するという大枠こそ同じであれ、使う頭は大きく違うものという印象があります。

コントは笑いなので、それが本心かどうかはあまり関係ないところもあるんですけど、小説は「自分はこの感情にすごく固執しているな」とか、「なんでこんな思い出を大事にしているんだろう」とか、自分でも名前をつけられていない感情に向き合うことがあります。

書くことで答えが見つかるんじゃないかと思って書くこともありますし、早く書いてしまって、そこにこだわっている自分ではなくなりたいと思うこともあります。いろいろですね。

脚本を書くようになって「なるほどな」という面白さも加わった

――加納さんが本を紹介されているインタビューを拝見したのですが、映画やドラマで「この監督が好き」という方はいらっしゃいますか?

詳しいわけではないんですけど、大学時代によく観ていた石井克人監督の作品はすごく好きですね。ふざけているというか、ドタバタコメディではないんですけど、じんわり温かくて面白い。その根っこには愛があるような作品が好きです。

――大学時代にご覧になっていたんですね。

そうです。映画サークルに入っていたときに、先輩に教えていただいて観始めたのが最初ですね。

――今も、新作が公開されたら観たいと思う監督はいらっしゃいますか?

『炎上』(26)も観たんですけど、長久(允)さんの作品は好きですね。長久さんとは一緒にライブを作ったこともあって、作風が好きです。

――脚本を書くようになってから、映画やドラマの見方に変化があったりするものですか? 自分が作り手になることで、純粋に作品そのものを楽しめなくなるようなこともあるのかなと思いまして。

私は、逆かもしれないですね。確かに、お笑いはどうしてもいろいろ考えながら観てしまうことがあると思います。賞レースを観ていても、(出場している芸人が)友だちだったりするので、悲喜こもごもがある。でも、ドラマや映画は2倍面白くなった感じというか。作品そのものの面白さに、撮り方を意識して観ることで「なるほどな」という面白さも加わりました。

――作り手として得るものがあり、むしろプラスに働いているんですね。いつか加納さんが作るドラマを観られるのが楽しみです。では最後に、『バカンスの法則』の見どころを教えてください。

チェ・ジョンヒョプさん演じる西上がキーパーソンとして登場しますが、基本的には別荘で騒いでいる若者たちの話なので、「こういうところに行きたいな」と、自分の休日と重ねながら気軽に楽しんでもらえたらと思います。セリフ回しが本当に軽やかですし、1話15分と短いので、気軽に観ていただきたいですね。

■プロフィール
加納愛子
1989年2月21日生まれ、大阪府出身。2010年に村上とお笑いコンビ・Aマッソを結成。作家としても活動し、エッセイ『イルカも泳ぐわい。』(筑摩書房)、『行儀は悪いが天気は良い』(新潮社)、小説『これはちゃうか』(河出書房新社)、『かわいないで』(文藝春秋)などを刊行。脚本も手がけるなど創作の幅を広げている。
■ABEMAオリジナルドラマ『バカンスの法則』
『バカンスの法則』は、多忙な日々に疲弊した主人公・星野緑(橋本環奈)が、海辺の別荘で過ごす“非日常のバカンス”のなかで、ミステリアスな管理人・西上(チェ・ジョンヒョプ)と出会い、恋に落ち、人生の大切な時間を取り戻していくひと夏の“デトックス・ロマンス”を描く。『海月姫』などのマンガで知られる東村アキコ氏が、原作・脚本・監督を務める。