半導体関連株を中心に大きく上昇してきた株式市場ですが、ここにきて値動きの激しい場面も目立っています。実際、2026年7月には国内外の半導体株ファンドが大きく下落し、あらためて「高いリターンには相応のリスクがある」と感じた方も多いのではないでしょうか。
では、値動きを抑えながら、ある程度のリターンも狙いたい場合はどうすればいいのでしょう。定番のオルカンより値動きが小さく、それでいて好成績を残しているファンドもあります。
そこで今回は、SBI証券投資情報部のシニア・ファンドアナリスト・川上雅人さんに、オルカンより低リスクで、過去3年では高いリターンを残したファンドについて解説してもらいます。
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半導体株急落とインデックスファンドのパフォーマンスは?
2026年7月、半導体関連株ファンドを中心に、基準価額が大きく下落する場面がありました。半導体株は中長期的な成長期待自体は依然として高いものの、今回の下落で値動きの大きさをあらためて実感した投資家も多いとみられます。
2026年7月の1ヵ月リターンをみると、eMAXIS 日経半導体株インデックスが▲29.47%、ニッセイSOX指数インデックスファンド(米国半導体株)<購入・換金手数料なし>が▲18.41%となった一方、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)(愛称:オルカン)は▲1.30%にとどまりました。日本を含む全世界の株式に分散投資するオルカンは、半導体株ファンドと比べて相対的に値動きが穏やかだったといえます。
こうした値動きの大きさへの警戒感の高まりは、足元のSBI証券の販売金額ランキングにも表れています。日本の半導体株ファンドや半導体株の比率が高い日経平均株価連動型インデックスファンドが順位を下げる一方、値動きの振れ幅が相対的に小さいTOPIX連動のインデックスファンドが順位を上げており、「増やしたいが、大きくは下げたくない」というニーズの高まりがうかがえます。
オルカンより低リスク・好成績だった12ファンドに注目
そこで今回は、オルカンよりも値動きが穏やかで、なおかつリターンはオルカンを上回ってきたファンドに着目します。
具体的には、SBI証券で購入可能なNISA・成長投資枠対象ファンド(運用期間3年以上)のうち、値動きの大きさを示す「3年標準偏差(年率)」がオルカンの14.25%を下回り、かつ3年トータルリターン(年率)がオルカンの23.32%を上回るファンドを抽出しました(2026年7月末基準)。
なお、同じマザーファンド(複数の投資信託から集めた資金をまとめて実際に運用するためのファンド)に投資する同一運用会社のファンドが複数該当する場合は、3年リターン最上位のファンドのみを表示しています。該当したファンドの一覧が図表1となります。
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図表1 オルカンよりも低リスクで好成績ファンドの一覧 ※ウエルスアドバイザー等のデータをもとにSBI証券作成(2026年7月末基準)、SBI証券で購入可能なNISA・成長投資枠対象ファンド(運用期間3年以上)でオルカンの3年標準偏差を下回り、かつオルカンの3年リターンを上回るファンドを表示、同じマザーファンドに投資する同一運用会社のファンドは3年リターン最上位ファンドのみを表示、上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません
結果を見ると、国内株式の高配当・バリューカテゴリーが大半を占めました。オルカンは日本を含む全世界の株式に投資するファンドですが、その値動きは米国株式の影響を強く受けます。
今回リストアップされたファンドの多くが国内株式である点は、米国株式との値動きの違いが、リスクを抑えつつリターンを高めることにつながった可能性を示しています。また、単一国株式ファンドであるイタリア株式ファンドや、日本を含む世界の高配当株式に投資するファンドも含まれており、国内株式以外にも選択肢がある点は注目に値します。以下、代表的なファンドについてコメントします。
好成績ファンドの特徴は?
1位はイタリア株式ファンド、リターン・リスクでオルカン超え
イタリアの株式を主要投資対象とする単一国株式ファンドです。単一国株式ファンドは値動きが大きくなりやすい傾向がありますが、直近3年については欧州株、なかでもイタリア株の地合いの良さを背景に、リターン・リスクの両面でオルカンを上回る結果となりました。イタリアの代表的な株価指数FTSE MIBは2026年に入って最高値を更新する場面もありましたが、金利上昇局面での金融株の見直し買いや、欧州各国の防衛費増額を追い風とした防衛関連株の上昇が、株式市場全体を押し上げてきたとみられます。
2~10位は国内高配当株ファンドが中心
2位のニュー配当利回り株オープン(愛称:配当物語)から10位の好配当日本株式オープン(愛称:好配当ニッポン)までの9本は、予想配当利回りの高い国内株式に着目したファンドが多くを占めています。高配当株は株価水準(バリュエーション)が相対的に割安な銘柄が多く、配当という基準価額の下支え要因もあるため、値動きが相対的に穏やかになりやすい傾向があります。
クオンツ運用やバリュー型もランクイン
一方で、ALAMCOクオンツ日本株オープンのようにクオンツ運用(株価や企業業績などのデータを数理的に分析し、一定のルールに基づいて銘柄を選ぶ運用手法)によるファンドや、アムンディ・ターゲット・ジャパン・ファンドのようなバリュー型ファンドも含まれており、必ずしも配当だけに着目したファンドばかりではありません。国内株式カテゴリーが今回の一覧の大半を占めた背景には、こうした値動きの安定性があるといえます。
世界の高配当株ファンドは運用効率で上位に
11位のマニュライフ・新グローバル配当株ファンド(年2回決算型)、12位の世界高配当株式ファンド(資産成長型)は、いずれも日本を含む世界の高配当株式に投資するファンドです。オルカンも「日本を含む世界の株式に分散投資する」という点では同じ土俵にありますが、投資対象を高配当株に絞り込むことで、値動きを抑えながらオルカンを上回るリターンを上げてきました。その結果、3年シャープレシオ(どれだけ効率よくリターンを得られたかを示す指標)はそれぞれ2.34、2.22と、一覧中で1位、2位となっており、運用効率に優れたファンドとなっています。
12本中11本が「高配当・バリュー株」
オルカンよりも低リスクで好成績だったファンド12本の11本が、①国内の高配当・バリュー株(企業の利益や資産などに対して、株価が割安と判断される銘柄)ファンド、②世界の高配当株ファンド、の大きく2つに分けられ、残る1本がイタリア株式ファンドといえます。
値動きの大きい米国株式や半導体関連株などの成長株・テーマ型ファンドとは異なる値動きの特徴を持っており、オルカンやS&P500などのインデックスファンドと組み合わせることで、値動きの分散に一定の効果が期待できる場合があります(ただし、相場環境によっては値動きの方向性が同じになる局面もあり、常に分散効果が得られるとは限りません)。
単一国株式ファンドであるイタリア株式ファンドが1位となった点も、今回のスクリーニングにおいて特徴的な結果といえます。
国内株式なら為替リスクの分散にも
なお、一覧のうちイタリア株式ファンド、マニュライフ・新グローバル配当株ファンド(年2回決算型)、世界高配当株式ファンド(資産成長型)の3本は外貨建て資産に投資するため為替変動の影響を直接受けますが、残る9本の国内株式ファンドは投資対象自体が円建て資産のため為替リスクを負いません(ただし、投資先企業の業績が為替動向の影響を受け、それが株価変動の一因となる場合はあります)。米国株式の比率の高いオルカンと組み合わせる場合、こうした国内株式ファンドは通貨分散の観点からも役割を期待できるといえるでしょう。
3年間の値動きをオルカンと比較
図表2を見ると、2023年7月末を100とした場合、2026年8月10日時点でイタリア株式ファンドは214、配当物語は209とオルカン(192)を上回った一方、マニュライフ・新グローバル配当株ファンドは192とオルカンとほぼ並ぶ水準となっています。
値動きの特徴を見ると、イタリア株式ファンドは2025年4月の急落局面でオルカンより大きく下げる場面もありましたが、その後の戻りが早く、結果として相対的に高いリターンにつながりました。配当物語は下落局面での値動きがイタリア株式ファンドほど大きくなく、比較的着実に上昇を積み重ねてきた点が特徴です。
マニュライフ・新グローバル配当株ファンドは上昇局面での伸びは相対的に穏やかですが、下落局面でも値崩れが小さく、安定的にオルカンと同水準のリターンを確保してきたといえます。
これはあくまで過去3年間の実績であり、今後も同じ傾向が続くとは限りません。特定カテゴリーへの偏りにも留意しつつ、自身の投資目的やリスク許容度に応じて、こうしたスタイルの違いをどのように取り入れるかを検討することが重要といえるでしょう。
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図表2 オルカンよりも低リスクで好成績ファンドのパフォーマンス比較 (2023年7月末=100、2026年8月10日まで)※QUICKデータをもとにSBI証券作成(ファンド名は略称または愛称)、上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません
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『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。
