「1,000円ぽっちの投資なんて、やっても意味がない」——SNSでそんな言葉を見かけたことはないでしょうか。
物価は上がり続ける一方で、手取りは思うように増えない。将来のために何か始めたいと思っても、「まとまったお金がない」「何から始めればいいかわからない」と、一歩を踏み出せずにいる人も多いと思います。
今回お話を伺ったのは、2人の子どもを育てながら投資を行い、億り人となったママ投資家のちょる子氏。これから投資を始める人に向けて、ちょる子氏は「大きなお金がなくても、投資は始められる。まずはポイント投資からでもいい」と話します。
働きながら無理なく投資を始め、続けていくにはどうすればいいのか、そのコツをちょる子氏に伺いました。
少額でも投資してみると、ニュースが「自分ごと」に変わる
——ちょる子さんは、日々さまざまな経済ニュースをご覧になっているそうですね。最近、投資の観点から印象に残っているものは何でしょうか?
食品の消費税減税です。2027年の春から2年間、8%が1%に引き下げられるという方針が出ました。今は消費が全体的に弱いので、これで少しでも家計に余裕が生まれればいいなと見ています。食品や日用品のように景気に左右されにくい銘柄(ディフェンシブ銘柄)には、追い風になる可能性もあると思います。
一方で、減税をすればその分、世の中に出回るお金は増えます。お金の量が増えると円の価値は下がりやすい、というのが市場の一般的な見方です。いわゆる円安です。円が安くなると海外から買う原材料は高くつくので、企業のコストが上がり、いずれは商品の値段に跳ね返ると考えられています。
——同じニュースでも、「消費税が減税されて嬉しいな!」で終わってしまう人が多そうですよね。
それが普通だと思います。違いがあるとすれば、そこにアンテナが立っているかどうかだけです。詳しい知識があるとか、頭がいいとか、そういうことではありません。 このアンテナは、実際に自分のお金を入れると立つんですよ。資産が増えたり減ったりすると、「なぜ今日は株価が下がったんだろう」「このニュースが影響しているのかな」と、嫌でも気になりますよね。そこから企業について調べたり、経済の動きを知ったりして、少しずつ知識も増えていく。私も、マーケットを見続けるうちに感覚が身についていきました。
だから、最初に全部勉強してから始めるのではなく、少額でも実際に投資してみることで見えてくるものがあると思います。
「インデックス投資は全人類やったほうがいい」なぜ、貯金だけでは足りないのか
——初心者は、何から買えばいいのでしょうか?
特定の企業の株を買う個別株投資や、日経平均やS&P500といった株価指数に連動するインデックス投資あたりが始めやすいのではないでしょうか。今は1株から買える証券会社も多いので、銘柄によっては数百円から始められます。まとまったお金がないと始められない、ということではないんです。
——ちょる子さんが今から投資を始めるなら、個別株とインデックス投資のどちらを選びますか?
インデックスです。というより、インデックスは全人類やったほうがいいと思っているんですよ、私。もう今すぐやったほうがいい(笑)。
「株主優待が欲しい」「配当金が欲しい」「この企業が好きで詳しくて応援したい」「指数以上の値上がりを狙いたい」などの理由があれば、個別株を買うのはありですが、どれにも当てはまらないのであれば、無理にやらなくていいと思います。
——なぜ、そこまでインデックス投資を強く勧めるのでしょう。
今の日本がインフレだからです。日銀が出した物価上昇率(除く生鮮食品)は2.8%です。金利が上がっているといっても1%程度。物価が毎年2.8%上がっていくとしても、給与が同じように2.8%上がっているわけではありませんよね。物価の上昇を差し引いた実質的な手取り(実質賃金)は10か月以上連続でマイナスが続いて、ガソリン減税でようやくプラスになったと言われるような状況です。
しかも日本は高齢化で働く世代が減っていきます。納税者が減れば、一人ひとりの社会保険料の負担が重くなる可能性もあります。そこに円安も重なります。こうした状況を考えると、現金だけで持っているのではなく、一部をリスク資産に振り分けることも選択肢の1つだと思います。現金の価値は目に見えないところでどんどん目減りしていく可能性があるので。
——「現金の価値が減っている」と実感する場面はありますか?
分かりやすいのが、身近な商品の値段です。例えば、2008年に私が食べていたツナマヨおにぎりは税込105円でしたが、近年の物価高の影響もあり、今は約200円とほぼ倍になっています。
この話からも分かりますが、昔1万円で買えていたものが、今は1万円では買えないんです。「みんなが株をやるべきだ」という話ではありませんが、現金だけで持っておくのは、それはそれでリスクになることもあるんです。
——具体的にインデックス投資の中でも、ちょる子さんならどの指数を選びますか?
S&P500と日経平均とTOPIXの3つです。S&P500はアメリカの主要な約500社、日経平均は日本を代表する225社、TOPIXは東証プライム市場を幅広くカバーする指数です。例えば、今の私が毎月1万円を積み立てるとしたら、S&P500に4,000円、日経平均に3,000円、TOPIXに3,000円を割り振ります。
——日経平均やTOPIXなど、日本に関連した指数が多いですね。
日本の指数を多めにしているのは、日本には半導体に強い企業が多く含まれているからです。
一般的にインフレとデフレは50年周期で入れ替わると言われていて、日本のインフレはまだ始まったばかり。インフレの局面では、テクノロジー分野が伸びる傾向にあります。物価が上がっていくということは、来年つくるより今年つくったほうが安いということなので、企業は設備投資を急ぎ、研究開発にもお金を回すようになると私は見ています。そうなったときに必ず必要になるのが半導体です。そして半導体に強い企業の比率が高いのが、日経平均なんです。
——TOPIXを選ぶ理由は、また別にあるのでしょうか?
TOPIXについては、日本にはまだ株価が実力より安く見られている企業が多い、ということがあります。
2023年に東京証券取引所が、いわゆるPBR1倍割れ改革として、「会社が持っている純資産に対して、株式市場から十分に評価されていない状態をそのままにしないでください」と、企業に株価や資本効率を意識した経営を求めました。そこから、会社が自分の株を買い戻したり(自社株買い)、株主に配当を出したりする動きが一気に広がっています。どちらも近年かなり活発になっています。日本企業は生まれ変わり始めたばかりなので「ここからだぞ」と。
しかも日本株なら、日本円で売買できるので、為替の影響を直接的には受けにくいです。これも日本の指数を選ぶメリットの1つだと思います。




