その勢いのまま、ステージはこの日最大級の“期待と落差”を迎える。ほいが、「最近活動を終了した日本の国民的5人組」を思わせる話を始めると、とき宣のメンバーたちが「えー!」「うそー!」と色めき立つ。
そこにラストコンサートを見に行った河合が「ここに来るわけないじゃないですか」「嵐ですよね?」と確認すると、ほいは「俺、嵐なんて言ってないよ。俺が言ってるのは五十嵐だよ」と正体を明かし、浅岡、ササキに、木山裕策、トモ(テツandトモ)、中村素也という50代の鬼レンシンガーで結成された「五十嵐」が姿を見せた。
煽られた期待を裏切られた…とならないのが「ほいロックフェス」の観客たち。5人のおじさんたちを大きな歓声で迎え入れた。
4曲連続メドレーということで、ステージ上に酸素スプレー缶をスタンバイするという異様な光景に、とき宣のメンバーも「初めて見る光景ですね」と衝撃。そんな体力面の不安を抱えながら、5人は歌唱前に円陣を組んで気合を入れ、「Love so sweet」「One Love」「Happiness」「A・RA・SHI」と、一糸乱れぬ見事なパフォーマンスを見せた。
4曲目の「A・RA・SHI」では、力を振り絞ってラップを披露する浅岡の肩を木山が叩く姿も。ただ50代で寄せ集められただけではない、確かなチーム感が生まれていた。
笑いを誘う企画のはずなのに、見ているうちに妙な感動が生まれてくる五十嵐。最後に「♪いがらし いがらし for dream」と歌い切り、完走した瞬間、5人は酸素スプレー缶に向かい、やはり会場の笑いを集めた。
河合が「歌はマジでうめえっすね」と感心すれば、ササキは「今日が一番幸せな日です」と充実の表情。トモも「嵐さんにも嵐さんのファンの皆さんにも失礼になってはいけないので、ふざけないで全力でやりました」と決意を持って臨んだことを明かした。
ふざけたことを、本気でやる――振り返れば、それは松浦のものまねも、池ちゃんの後ろで黙々と踊ったほいも、自分のヒット曲にまで骨伝導パフィーチークを持ち込んだササキも、馬のまま踊り切った河合も同じだった。こうして本気で遊び尽くした先に、本編最後の曲が待っていた。
「最後は本気で命を削りたいと思います」
事前に募集された「ほいけんたにフル地声で歌唱してほしい楽曲」で1位になった、平井堅の「ノンフィクション」。それまで「カラダぐぅ」「くるっくぅ」と邪道歌詞で乗り切ってきたほいが、打って変わって命を削る魂の歌唱を見せて話題となった曲だ。
五十嵐も河合も去り、ステージには、ほいだけが残った。ついさっきまで馬が踊り、“五十嵐”が酸素を吸っていた場所から、笑い声が消えていく。
そして、ほいは客席を見渡し、ゆっくりと語り始めた。
「『ほいロックフェス2026』ですよ。僕も結構長く生きてきましたけども、こんな日が来るなんて夢にも思いませんでした。俺、よく番組で“子どもに夢を与えたい”とか言ってるけど、本当なんだよ。俺も子どもの時にはさ、いろんな夢を見たわけ。だからみんなも夢をどんどん見てほしい。そして諦めなければ、いつかチャンスは来ます。
夢はね、一つじゃなくなっていいんですよ。これがダメだったら次この夢、次この夢。どんどん変わったっていいんです。それを一つ一つものにするチャンスは、大人になっても絶対にあります。僕はさんまさんのものまねやって、そこからカラオケ番組に出て、『鬼レンチャン』に出て、まさか今日この舞台でこうやって『ほいロックフェス』をやることになるなんて、一回も思ったことなかったです。
数カ月前からこんな話が持ち上がって、現実化してくる中で、これはちょっとシャレにならないぐらい真剣に取り組まなきゃいけないなと思いました。いろんなスタッフ、いろんな共演者が、関わってくれました。そして今日ここに来てくれた人たちに僕の思いを届けたいと思って、最後は本気で命を削りたいと思います」
ピンスポットを一身に浴び、「ノンフィクション」を歌い始める、ほい。この歌唱には、誰も乱入しない。ものまねの無茶振りもない。ツッコミもない。何の仕掛けもなく、ただ一人で、一つ一つ歌詞の言葉を観客に届けていく。
開演前、「からだぐぅ」が流れただけで笑いが起きた会場で、今度は同じ男の歌に全員が耳を傾けている。約2時間、散々笑わせた末に、最後はただ歌う。この振れ幅こそ、『ほいロックフェス』だった。




