夏ドラマがそろい、賛否の声が二分されつつある。今夏もゴールデン・プライム帯では各局が趣向を凝らしたオリジナルが集結。はたして「本当に質が高くて、今後期待できる作品」はどれなのか。
業界唯一のドラマ解説者・木村隆志が俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコで、今回の第1弾では「2026年夏ドラマ主要20作の傾向とおすすめ5作」、後日に掲載する第2弾では「目安の採点付き全作レビュー」を挙げていく。
2026年夏ドラマの主な傾向は、【[1]“2大続編”がそろい踏みの背景 [2]自由で思い切りのいい在阪局の3作】の2つ。
傾向[1]“2大続編”がそろい踏みの背景
3年前の夏に社会的なブームとなった『VIVANT』(TBS系)と、28年前に学園ドラマの教師像を変えた反町隆史版『GTO』(カンテレ・フジテレビ系)。両作の話題性は今夏ドラマの中で放送前から頭1つ抜けていた。
令和のNo.1ヒット作と平成学園ドラマのトップ作。時代も内容もまったく異なる2作だが、復活した背景は“IP(知的財産)ビジネス”という狙いで共通している。
視聴率低下による放送収入低下の不安がある中、各局は「テレビCMに頼りすぎず、いかに番組=コンテンツとして稼いでいくか」が求められている。その中心となるドラマとアニメは放送収入だけでなく続編やスピンオフ、海外配信や海外番販、映画化や舞台化、漫画やノベライズ、ゲームやおもちゃ、グッズやイベント、企業タイアップなどで稼いでいくことが生き残りの条件と言っていいだろう。
その点、『VIVANT』のビジネス展開はすでに過去最大級。前作では「1話1億円」と言われる異例の制作費をかけつつ、さまざまなビジネスで稼ごうという姿勢が見られたが、今作はそれが進化した感がある。一方、原作漫画のある『GTO』は出版社と連携しながら、「過去の名作を有効活用していこう」という戦略。続編の成否は視聴率の数値というより、放送、配信、出版、関連商品を含め、どこまで売上を伸ばせたかで判断されるのではないか。
今後も大型企画の場合はもちろん、一定のヒット作は連ドラ、単発ドラマ、映画化などの続編が積極的に手がけられ、さまざまな稼ぎ方が模索されていくだろう。さらに『GTO』のような1990年代、あるいは2000年代のヒット作をリメイクではなく続編として手がけられないか探っていくはずだ。
傾向[2]自由で思い切りのいい在阪局の3作
夏は「長期休暇があり、イベントも多く視聴習慣が安定しない」など難しい時期だからこそ、2010年代以降は無難な“お仕事ドラマ”を選択する傾向が強かった。
実際、今夏も刑事、医療、法律、空港、キャラクタービジネスなどを扱ったお仕事ドラマが目白押し。だからこそ異彩を放つ在阪局の3作が際立って見える。
カンテレの『GTO』はかつて夏の定番だった学園ドラマであり、しかも反町隆史版の連ドラを28年ぶりに復活。教師と生徒、学校と社会などの変化を描くことや、思い入れの強い人が多い分批判を受けやすいなどの難しさがあり、思い切った挑戦に見える。
読売テレビの『一次元の挿し木』は「ヒマラヤで発掘された200年前の人骨が失踪した妹のDNAと一致した」という筋書きからはじまるミステリー。遺伝子学を扱い、法科学や科学の監修者を多数つけるなど難解な物語であり、翌朝の仕事や学校がチラつく日曜22時台としてはハードなドラマに見える。
ABCの『マイ・フィクション』は「主人公が目覚めたら、妻に忘れられ、他人が自分になりすましていた」というサスペンス色の濃いミステリー。こちらも「記憶をめぐり状況が二転三転する」という難解な物語であり、日曜22時台としてはハードなドラマに見える。
しかも読売テレビの『一次元の挿し木』(日曜22時30分)と『マイ・フィクション』(日曜22時15分)は、ほぼ同じ時間帯で放送。さらに言えば、同じ長編ミステリー&サスペンスであり、STARTOのアイドルを主演に据えているという、かなりの“かぶり”が見られる。「日本テレビとテレビ朝日ならありえないようなことが起きているところに在阪局の自由さが表れている」と言っていいのではないか。
2020年代はIPビジネスを進めたい各局がドラマ枠を増やしているが、似た作品が増えやすいという傾向が見られていた。だからこそ自由で思い切りのいい在阪局の作品は今後もアクセントになっていくのだろう。
これらの傾向を踏まえた今クールのおすすめは、『VIVANT』『さよならノワール』『マイ・フィクション』の3作。
『VIVANT』はキャスティング、国内外の長期ロケ、2クールの放送期間、局内外でのプロモーションなど、さまざまな点でスケールアップ。考察で盛り上がるもよし、ダイナミックな映像を見て楽しむもよし、豪華かつ大量のキャストを追うもよし。大作ならではのお祭りさわぎを存分に楽しみたい。
『さよならノワール』は「被害者に寄り添うだけ」の主人公が新鮮。バディとの関係性、各話のエピソード、ゲスト俳優の選択なども抜かりなく、プロデュース全体の質が高い。
『マイ・フィクション』は記憶をめぐる振り切った物語に引き込まれる。俳優たちの怪しげな演技も冴え、夏らしいホラーを含めた不思議な世界観の作品となった。
『Tシャツが乾くまで』は生方美久の繊細な脚本と蒼井優、中島歩の含みある演技は素晴らしい。ただ、セリフの多い作風は見る人を選び、質は高くても「大好き」と「苦手」の分断がある作品のため4番手とした。
近年ほとんど見られなくなった女性の群像劇で、のんの本格復帰作となる『Tokyo middle 30』もおすすめしておきたい。
「視聴率や先入観だけで判断して見ない」というのはもったいないだけに、TVerや各局の動画配信サービスなどでチェックしてみてはいかがだろうか。
2026年夏ドラマ オススメ5作
- No.1 VIVANT (TBS系 日曜21時)
- No.2 さよならノワール (フジ系 火曜21時)
- No.3 マイ・フィクション (ABC・テレ朝系 日曜22時15分)
- No.4 Tシャツが乾くまで (TBS系 金曜22時)
- No.5 Tokyo middle 30 (フジ系 水曜22時)




