今年度のスタートを切る春ドラマがそろい、早くも賛否の声が二分されつつある。今春は各局が趣向を凝らしたオリジナルが集結。はたして「本当に質が高くて、今後期待できる作品」はどれなのか。

業界唯一のドラマ解説者・木村隆志が俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコで、今回の第1弾では「2026年春ドラマ主要22作の傾向とおすすめ5作」、後日に掲載する第2弾では「目安の採点付き全作レビュー」を挙げていく。

2026年春ドラマの主な傾向は、【[1]見たことのない設定が目白押し [2]ファンタジー乱発に浮かぶ現実と未来】の2つ。

  • 『リボーン ~最後のヒーロー~』に出演する高橋一生

    『リボーン ~最後のヒーロー~』に出演する高橋一生

傾向[1]見たことのない設定が目白押し

今春は福井県の水産高校が舞台の『サバ缶、宇宙へ行く』(フジテレビ系、月曜21時)、異色女性バディが都知事選に挑む『銀河の一票』(カンテレ・フジ系、月曜22時)、IT社長が下町商店街の青年に転生する『リボーン ~最後のヒーロー~』(テレビ朝日系、火曜21時)、鮨アカデミーへ通う人々にスポットを当てた『時すでにおスシ!?』(TBS系、火曜22時)。

さらに文学をモチーフにしたミステリー『月夜行路―答えは名作の中に―』(日本テレビ系、水曜22時)、フリースクールの人間模様を描いた『タツキ先生は甘すぎる!』(日テレ系、土曜21時)、パラスポーツの車いすラグビーを扱った『GIFT』(TBS系、日曜21時)、ある美容師を死なせてしまった女性と美容師の娘との危うい友情を描いたヒューマンサスペンス『エラー』(ABC・テレ朝系、日曜22時15分)。

  • 『GIFT』出演の堤真一

    『GIFT』出演の堤真一

いずれも「見たことがない」と思わせる異色の舞台やキャラクターの作品がそろった。しかもゴールデン・プライム帯の9割近くがオリジナルだけに、「あえてその異色な設定を選び、掘り下げていこう」という姿勢がうかがえる。

配信視聴が増え続ける現在においても視聴率獲得で放送収入を得なければいけないだけに、重視されているのは「続きが気になる」という連続性。かつてのような1話完結型の作品は『夫婦別姓刑事』(フジ系、火曜21時)、『ボーダーレス~広域移動捜査隊~』(テレ朝系、水曜21時)、『LOVED ONE』(フジ系、水曜22時)、『月夜行路』、『刑事、ふりだしに戻る』(テレビ東京系、金曜21時)の刑事事件を扱った作品に限られている。

「連続性重視の制作姿勢は連ドラの魅力を追求することにつながる」など歓迎すべきことである一方で、異色の設定は「見る、見ない」がはっきり分かれやすいのが難点。実際に前述した作品の多くが初回から絶賛と拒絶、熱狂と無関心に二分されている。

  • 『エラー』に出演する畑芽育

    『エラー』に出演する畑芽育

傾向[2]ファンタジー乱発に浮かぶ現実と未来

今春の傾向としてもう1つ明確なのが、ファンタジーを扱った作品の多さ。

格差の大きい人物に転生する『リボーン』、過去にタイムリープして事件に挑む『刑事、ふりだしに戻る』、主婦とゴーストイケメンシェフの恋を描いた『今夜、秘密のキッチンで』(フジ系、木曜22時)、仲間3人がタイプリープして殺人事件の真相に迫る『君が死刑になる前に』(読売テレビ・日テレ系、木曜23時59分)、400年後の未来から来たイケメンアンドロイドのラブコメ『ターミネーターと恋しちゃったら』(テレ朝系、土曜23時)、写真に関する2つの特殊能力を扱う『時光代理人』(東海テレビ・フジ系、土曜23時40分)の6作が放送されている。

いずれもシンプルなファンタジーで、そこに至る過程や必然性、ディテールを丁寧に描こうというスタンスはほとんど見られない。つまり「物語の入口としてファンタジーを利用しよう」という方針がうかがえる。

  • 『銀河の一票』出演の黒木華

    『銀河の一票』出演の黒木華

ここまで最も評判のいい『リボーン』ですら「主人公が階段から落ちてタイムスリップし、さらに転生。実は落ちたのではなく落とされた」という何でもあり、かつ、どこかで見たようなものを抱き合わせた設定。1人2役&2つの年代を演じる高橋一生の演技力ありきというプロデュースがうかがえる。

『銀河の一票』第1話の「(政治家側から見て)簡単だよね、国民って」というセリフが話題になったが、単純なファンタジーの設定についてネット上に「ドラマの視聴者もちょっとなめられているのではないか」というコメントが見られた。それでも視聴率と配信再生数が取れればいいのだが、思うような結果が出なければ、もう少しオリジナリティや意外性のあるファンタジーが必要だろう。今春のような入口のみ利用するようなプロデュースでは近いうちに飽きられ、ファンタジーが減っていくのではないか。


  • 『田鎖ブラザーズ』出演の岡田将生

    『田鎖ブラザーズ』出演の岡田将生

  • 『刑事、ふりだしに戻る』出演の濱田岳

    『刑事、ふりだしに戻る』出演の濱田岳

  • 『102回目のプロポーズ』出演の霜降り明星・せいや

    『102回目のプロポーズ』出演の霜降り明星・せいや

これらの傾向を踏まえた今クールのおすすめは、『エラー』『銀河の一票』『田鎖ブラザーズ』の3作。

『エラー』は小柄な童顔のダブルヒロインに重い設定を背負わせるギャップが見事に機能。さまざまな大人たちの思わぬエラーが連鎖していく展開は意外性たっぷりで、回を追うごとに没入感が増している。

『銀河の一票』は女性5人で固めた主要スタッフ&キャストが間違いなく今春トップ。“政治・選挙”は連ドラの鬼門と言われるテーマだけに、その5人がどのようにエンタメ性を高めて無関心層を引きつけていくのか楽しみ。

『田鎖ブラザーズ』は長編サスペンス&ミステリーを長年手がけてきたTBS金曜ドラマらしい緊迫感あふれる仕上がり。近年、似たプロットの作品が増えていたが、クオリティは一枚上を行っている。

『刑事、ふりだしに戻る』はよく見たタイムリープものながら映像のクオリティと濱田岳の演技に引き込まれる。賛否覚悟で35年ぶりの続編に挑み、「前作の世界観を守ろう」という努力が見える『102回目のプロポーズ』もおすすめしておきたい。

「視聴率や先入観だけで判断して見ない」というのはもったいないだけに、TVerや各局の動画配信サービスなどでチェックしてみてはいかがだろうか。

2026年春ドラマ オススメ5作

  • No.1 エラー (ABC・テレ朝系 日曜22時15分)
  • No.2 銀河の一票 (カンテレ・フジ系 月曜22時)
  • No.3 田鎖ブラザーズ (TBS系 金曜22時)
  • No.4 刑事、ふりだしに戻る (テレ東系 金曜21時)
  • No.5 102回目のプロポーズ (フジ系 水曜23時)