中国地区内航船員対策協議会は、内航海運事業者の企業説明会となる「第4回 内航船員就職セミナー in 境港」を、7月11日、鳥取県境港市のみなとテラス(境港市民交流センター)にて開催。中国地方を中心に、貨物船やタンカーなどの内航船を運航管理する海運企業33社がブースを出展した。

  • 「第4回 内航船員就職セミナー in 境港」の会場の様子

    「第4回 内航船員就職セミナー in 境港」の会場の様子

本セミナーには、「内航船員」という職業を内航海運企業から直接聞くことができる絶好の機会として、浜田水産高等学校、隠岐水産高等学校、境港総合技術高等学校の生徒および保護者、そして各校教諭が参加。各社のブースを回り、会社概要や事業内容、待遇などに耳を傾けた。

開会式では、中国地方海運組合連合会の岡本会長が登壇。「本日はいろいろなタイプの船をお持ちの船社さんがお越しですので、『どんな船ですか?』『船内はどのような雰囲気ですか?』など、いろいろな質問をしていただければ」と、セミナー参加者に語りかけた。

  • 開会式で挨拶を行う中国地方海運組合連合会の岡本会長

    開会式で挨拶を行う中国地方海運組合連合会の岡本会長

出展ブースで自社の特色を伝える

イコーズ

イコーズ(山口県周南市)は、一般貨物船、油タンカー、ケミカル船、コンテナ船、作業船・その他など、多彩な船種を保有。その中でも、昨年10月に竣工したコンテナ船「げんぶ」は、実際に荷物を運びながら、2026年9月まで自律運航実証実験が実施されるなど大きな話題を呼んでいる。

  • イコーズブース

    イコーズブース

近年では、全国内航タンカー海運組合の積極的な活動もあり、「タンカー希望」の学生が多い印象とのことだが、保有する全16隻のうち、タンカーは3隻にとどまり、「あまり強くPRできない」ことが悩みである一方、船種の多さは様々な経験が積めるという点では同社の強みにもなっているという。また、同社では船種によって、70日乗船/3週間休暇、45日乗船/2週間休暇と2パターンの乗船サイクルを用意。できるだけ陸上に上がれる回数を増やすような工夫がなされている。

さらに同社では「0からの育成」と謳うなど、船員の育成にも力を入れており、「陸上で働いていて、船に乗った経験のない人が船長になっている」というケースもあるという。また、定着率80%という同社では、ハラスメントを徹底排除。毅然とした対応を心がけている。求める人材については、「船が好きなこと」を絶対条件としつつ、「我々の考え方に合っている方」を希望。就職前には乗船体験を実施し、ミスマッチをなくす工夫をしているという。

岩崎汽船

岩崎汽船(岡山県備前市)は、タンカーを中心に運航管理を実施。今回のセミナー参加者を念頭に、境港を拠点に、隠岐島、浜田を中心に漁船の燃料などを運び、毎日自宅から通勤可能な船舶がある点をアピールする。

  • 岩崎汽船ブース

    岩崎汽船ブース

特に海運業界で話題になりやすい「給与と休暇」の問題について、「少し前はとにかく休みがほしいという学生さんが多かった印象」だったところ、「最近ではあらためて給料を重視するようなイメージもある」と語る。「あまり責任を負いたくない子が多いという話もありますが、弊社に入ってきてくれた子を見ていると、そんな印象はほとんどない」とし、「意外と皆さん、やりがいのある仕事を求めているのではないか」との見解を示した。

同社のアピールポイントは「船員を大事にするところ」と断言。「船員さんファーストがモットー」であり、設備の整備はもちろん、産業医の導入や年金関係など福利厚生に力を入れているという。また、「パワハラなどは昔からない文化」が築かれており、「船内では、若い船員と50代の船員が、一緒になってゲームをしている」とその雰囲気の良さを強調する。そして、求める人材については、「とにかくやる気があって、なるべく前に前に出てきてコミュニケーションが取れる人」を重視。「技術的なことは入社してからいくらでも身につけられますので、とにかくコミュニケーションが取れることが一番大事」と言葉を重ねた。

岡本海運

岡本海運(広島県福山市)は、RORO船とセメント船を保有する海運会社で、20~30代の社員が全体の60%を占め、平均年齢は37歳。乗組員数57名の内、4名が女性乗組員となっており、「40日乗船/20日休暇」の乗船サイクルを強く打ち出している。

  • 岡本海運ブース

    岡本海運ブース

過去3回の「内航船員就職セミナー in 境港」を経て、2人を採用しているという岡本海運。「若い人が入ってくるきっかけになっている」とその成果に触れつつ、「人とのつながり、縁」を重視するとともに、参加する学校側とのパイプづくりにも役立っているという。そんな同社は、ブースに「海ではたらく40日 陸でおやすみ20日」と掲げているように、その乗船サイクルが大きな特徴となっているが、それ以外にも、専属の司厨長を乗船させることで「食事の心配がない」こと挙げるなど、船員の栄養管理に力をいれていることも大きな強みとなっている。

そして、海運業界を目指す若い人たちに対して「石の上にも三年」の言葉を贈り、「世の中には自分が思うようにならないことも多いが、そこを耐えて、辛抱することも必要」と続ける。これはもちろんパワハラなどに耐えろという話ではなく、「仕事として辛い部分は誰にだってあるのだから、そこは頑張ってクリアしてほしい」との希望を伝える。

実際、同社では新卒よりも中途で入社した人のほうが定着率は高い傾向にあるという。その理由として、オペレーターが大手という安心感、労働時間の管理などの的確さ、さらに福利厚生の充実度などを挙げ、「他社でつらい思いをされた方ほど、うちの良さをわかってくれる」と自信を覗かせた。

河菜海運

河菜海運(広島県呉市)は、瀬戸内海を中心にガット船、貨物フェリーを運航。自社配船のため、スケジュールが管理しやすく、決まった港での運航となり、比較的早く慣れることができるほか、GW、盆、正月が休日になる点が大きな特徴となっている。

  • 河菜海運ブース

    河菜海運ブース

同社ブースには、「内航船員就職セミナー in 境港」をきっかけに入社した若手社員も同席。「船については、実際に話しを聞いてみないと、ネットの情報だけではわからないことが多い」と自身の体験からセミナーに参加する意義を語り、実際に話しを聞くことをできたことが、河菜海運への入社につながったと振り返る。そして、自社配船によるスケジュールの管理しやすさに加え、同社では乗船中と下船中の給料が同じである点をアピール。また、作業服はもちろん、長靴やヤッケなどがすべて支給される点も大きな強みであるとした。

少子化により、若い人が集まりにくい現状において、「こういったセミナーに参加して、ぜひ河菜海運で活躍してほしい」と期待を寄せつつ、求める人材については、「やはり海の仕事なので危険が伴う」ことから、「スポーツをしていたり、運動神経の良い方が望ましい」という。さらに「ガッツがあって、やる気がある」ことも条件に加え、知識や技術は入社後にいくらでも教えることが可能だが、「受け身ではなく、積極的に吸収することが重要」だという。「コミュニケーション能力というよりも、やはり積極性が大事。わからないことがあったら、何でも積極的に質問する姿勢でいてほしい」との考えを明かした。

西本汽船

西本汽船(広島県東広島市)は、主に瀬戸内で鋼材製品を積み、日本全国に運ぶ499トンの一般貨物船を2隻所有。「499トンの貨物船は日本で一番多いのですが」と苦笑いを浮かべつつ、「日本のトップ企業の鋼材製品を運んでいますので、会社としての安心感は高いです」と自信を覗かせる。

  • 西本汽船ブース

    西本汽船ブース

かつては3カ月乗船/1カ月休暇が当たり前だったところ、今では二カ月以下の乗船が増えるなど、給料よりも休暇を重視する流れにおいて、「やはり休暇は重要ですし、弊社としても大事にしていきたい」としつつも、「だからといって給料が安くても良いということにはならない」ことから、給与と休暇のバランスが重要と説明。「若い人ほど休暇を求めますが、弊社の場合、長く乗るにつれて、給料のほうを求める方が多い」との印象を語り、「特に家族などをお持ちになると、より給料が大事になってくるのでは」と結論づける。

そして、「操船などの技術ももちろん必要ですが」と前置きしつつ、「お互いを信頼できる関係性、信用できる関係性が大事」であることから、求める人材については「仕事はもちろんですが、私生活も真面目な方、誠実な方が理想」とし、「そういった方であれば、技術などは後からでもちゃんと教えられる」との考えを明かす。船の仕事は、パワハラなども含め、人間関係が問題になることが多いことから、あらためて「お互いの信頼関係がもっとも大事」と繰り返し、その重要性を説明した。

久本汽船

久本汽船(岡山県備前市)は、油タンカー船1隻、ケミカルタンカー船7隻の運航管理を行う会社で、現在70名の海上スタッフが在籍。勤務形態は、60日乗船/20日休暇の乗船サイクルとなっており、「個を大切にした働きやすい環境」を目指しているという。

  • 久本汽船ブース

    久本汽船ブース

「皆さん意欲的で、話も真剣に聞いてくださるので、非常にありがたい」とセミナー参加者の印象について語り、「内航船員就職セミナー in 境港」は「直接生徒の方とお話できる絶好の機会」という久本汽船では、現在8隻のタンカー船を所有しているが、隻数が多いことのメリットとして、「ある船に乗って、人間関係が上手くいかなくても、別の船に移ることができる」ことを挙げる。たとえパワハラなど問題がなくても、人間関係において合う合わないは避けられないところ。「特に若い子は声を上げにくいので、しっかりとヒアリングをしたうえで、上手く回していくことが重要」との見解を示した。

求める人材については「誠実な人」を希望。「仕事ができるできないについては最初はわからない部分なので、やはりお願いしたことをちゃんと丁寧にやって、終わったらそれを報告できる」ことが重要だという。そして、「コミュニケーション能力は大事ですが」と前置きしつつ、「決して得意である必要はない」と続け、「わからなことはわからないと言う」「言われたら返事をする」「頼まれた仕事が終わったら報告をする」といった「最低限の応対ができることは必要」であるとした。そして、「こういった応対がちゃんとできる子はやはり先輩からも可愛がられるので、信頼関係が築きやすい」との考えを明かした。

各社の様々な取り組みを知ることで視点も変化

また、生徒の引率で会場を訪れていた隠岐水産高等学校の進路指導担当の先生にも話を伺ったところ、「本校は離島に位置するため、なかなか船社さんに来ていただくことが難しい」という現状から、「生徒たちのためになる話、生徒たちがなかなか聞くことができない話を、多くの船社さんが一堂に介した場で聞くことができるのは非常にありがたい」との感謝。そして、「求人票やパンフレット、SNSなどの情報だけではわからないことが多い」ことから、「社風や雰囲気はもちろん、内航とはどういうものかという生の情報を直接聞けることは、生徒たちにとってすごく勉強になる」と説明する。

実際、生徒たちも各ブースを回ることで、「各社の様々な取り組み、その違いに触れたことで、視点そのものが変わってきていると思いますし、さらに聞いてみたいという質問も増えてきている」と、セミナーに参加した生徒たちの変化についても言及。「生徒たちはみんな、一生懸命に最後まで聞こうという意欲を見せていますので、得るものが非常に多かったのではないか」との印象を受けたという。

隠岐水産高等学校には、24都府県から生徒が集まり、生徒全体の約6割は島外の出身。入学時から明確な目的意識を持っている生徒もいれば、学びながら考えていく生徒もいるなど、進路についての考え方も様々だが、「こういった説明会に参加することは、進路を決めるうえでも大きなきっかけになるはず」との考えを明かす。そして、生徒たちだけでなく、先生方にとっても大きな刺激となっており、「学校として、生徒たちにどのような支援ができるかについて模索していきたい」と、進路指導へのさらなる意欲を示した。

  • 「第4回 内航船員就職セミナー in 境港」が開催されたみなとテラス

    「第4回 内航船員就職セミナー in 境港」が開催されたみなとテラス

今回で4回目となった「内航船員就職セミナー in 境港」だが、回数を重ねるにつれて、「船社さんも我々スタッフも、運営に慣れてきて、だいぶスムーズに進行できるようになった」と話すのは、中国地方海運組合連合会 専務理事の永見慎吾氏。過去3回のセミナーをきっかけに海運業界に入った生徒が21名に上ることから、「これまでたくさんの成功事例が出てきているので、自分たちも負けずに頑張ろうという意欲的な会社さんが増えたと感じます」と、その印象を明らかにする。

今後も、引き続き開催していくことで、さらなる成功事例の積み上げを目指す永見氏は、「まだ工夫する余地はたくさん残っていると思いますので、スタッフと協議を重ねながら、より良いものを作り上げていきたい」と来年度の開催に向けての意気込みを示した。