「第61回海事産業発展並びに海上安全祈願祭」(海上安全祈願祭)が7月15日に香川県・琴平町の金刀比羅宮の本殿で開催。海の月間行事として毎年開催され、恒例行事となっているこの催しに、全国の海事産業事業者や海事団体、地元各団体・個人など110名以上が参加した。

今回は金刀比羅宮の神前で行われた祭事や、その後に行われた直会の様子などを紹介。本祈願祭の主催者である公益財団法人・琴平海洋会館が運営する「琴平海洋会館(海の科学館)」を訪ねた。

60年以上続いてきた海上安全祈願祭

“こんぴらさん”の名で親しまれ、海の守神を祀る庶民信仰の神社として、とくに船乗りや漁業に携わる人々が全国津々浦々から参詣に訪れてきた金刀比羅宮。

毎年7月15日(土日・祝日の場合は15日前の平日)には、その神前で海の月間行事の一環として「海事産業発展並びに海上安全祈願祭」が執り行われ、全国から海運事業者などが集まる。

コロナ禍の影響で祈願祭自体が中止になったり、人数制限が設けられたりした年も過去にはあったそうだが、今年で61年目を迎える恒例行事として、今年は110名以上が祭式に参列した。斎主による祝詞奏上や八乙女舞の奏進、参列した団体・企業の代表者による玉串奉奠などが1時間弱にわたって行われた。

会場を琴平グランドホテル桜の抄に移して行われた直会式で、まず挨拶したのは祈願主である琴平海洋会館の代表理事 副会長の黒川節弘氏。琴平海洋会館は海事に関する資料を収集・展示、調査研究やレクリエーション事業などを目的に昭和41年に開設され、以来、琴平の地で博物館の運営などを行っている。

「ご承知のように我が国は四方を海に囲まれ、古来より海と深く関わりながら発展してまいりました。本年度も海の日の行事が全国各地で開催されていますが、本日の祈願祭も海の月間行事の一環として実施しているものです。海洋立国を将来にわたって支えていく青少年の皆さんに、海や船舶への興味・関心をさらに高めていただくため、海洋人材の育成に寄与する資料の展示や宣伝活動にも尽力してまいります」

また、金刀比羅宮宮司の琴陵泰裕氏は「海の神様にふさわしいご祭典を当宮にて開催させていただけたこと、何よりもありがたく存じ上げます。日本を取り巻く世界の情勢、海事産業の環境は大変厳しいと存じ上げておりますが、皆様の船の安全を日々お祈りしている次第です。本日はご参列いただきまして誠にありがとうございました」と、参列者へ感謝を述べていた。

中東情勢の緊迫化でクローズアップされた海事産業

2年ぶりに祈願祭に参列した国土交通省海事局次長・河野順氏は来賓を代表し、「『第61回海事産業発展並びに海上安全祈願祭』が全国各地からお越しの海事関係者、有志の皆様のご列席のもと、厳粛に滞りなく終えられましたことに心からお慶びを申し上げます」と、祝辞を述べた。

海の日が制定されて今年で31年目を迎えることにも触れ、安全で自由な航行の重要性を改めて語った。

「長きにわたり海の月間に祈願祭を行い、海事産業の発展と海上安全の重要性を再認識する絶好の機会を提供していただいており、祈願主の琴平海洋会館様に改めて感謝申し上げます。中東情勢が悪化して以来4ヶ月以上が経過し、未だ我が国全体に様々な形で大きな影響を及ぼしています。我が国にとって船による交易は死活問題であり、その船を支える海運・船員、造船舶用といった海事産業が国民経済・国民生活にとって重要な産業であることが、皮肉にも大きくクローズアップされました」

続いて琴平町長・片岡英樹氏も登壇し、全国から集まった参列者を前に次のように挨拶した。

「とくに昨今の中東情勢の緊迫化による影響は業界の問題に留まらず、燃料価格や物価の上昇を通じて私たちの日々の生活に直結する問題となっております。だからこそ海の安全を守り海運を支えてくださっている皆様の存在が今この時代にかつてなく重要であると感じているところです」

表参道脇の「海の科学館」は、夏の涼スポットとしても人気

全国の金刀比羅神社の総本宮である金刀比羅宮は、琴平山(象頭山)の中腹に鎮座しており、長い石段が有名。参道口から御本宮までは785段、さらに奥社(厳魂神社)までは合計1,368段を登らなければならない(「海上安全祈願祭」では専用バスが運行されている)。

直会の会場の琴平グランドホテル桜の抄の正面に建つ「琴平海洋博物館(海の科学館)」では、船舶模型や海事に関わる歴史的資料など合わせて2,500点が所蔵・展示されている。表参道脇という立地で、とくに夏場は涼みに立ち寄るにもちょうど良い施設だ。

人と海との歴史などに関する貴重な所蔵資料の展示だけでなく、同館には操船シミュレーターのほか、屋上には船の操舵室を模した展望ブリッジも。琴平の街並みが広がる讃岐平野や讃岐富士と言われる飯野山、「象頭山」(琴平山)の景観などを一望でき、天気の良い日には瀬戸内海の眺望も楽しめる。

また、展望ブリッジの手前にある屋上のプールでは重量3〜4キロほどあるという大きなラジコン船をリアルな舵輪やエンジン・テレグラフなどを使って操作できる(別料金200円)。

さらに、2階の展示フロアでは年間を通して企画展を行なっており、海や船にまつわる写真や絵画などの作品を展示。かつて高松港(香川県)と宇野港(岡山県)を結んでいた宇高連絡船の最後の船長を務めたひとりで、切り絵作家である萩原幹生氏から寄贈された作品の展示も行われている。

2年前にも海上安全祈願祭に関連して取り上げた本施設だが、昨年は約1万8000人が来場し、コロナ禍前の水準と比べても来場者数は微増しているそうだ。オリジナルのペーパークラフトの無料配布や、クイズ形式のスタンプラリー企画なども新たな試みとして実施されていた。