7年ぶりに坂本浩一監督の現場へ戻り、山本が改めて実感したのは、監督との変わらぬ信頼関係だった。アクションシーンの多い現場では、膨大な殺陣を限られた時間でこなしていかなければならない。今回も例外ではなく、現場でじっくり動きを覚える時間はほとんどなかったという。
「坂本組では現場で殺陣を覚える時間はなくて、1回でOKが出るくらいのレベルが求められるんです。本当にスピード勝負ですね。『こうして、ああして』というディレクションはほとんどない。片手で数えられるくらいしか、『ここはこうしてほしい』と言われた記憶がなくて。それぞれの個性を生かしてくださる監督なんです」
だからこそ、その場で生まれる動きが作品に取り入れられることも少なくない。
「私は、完全に覚えきってしまうより、あえてちょっとうろ覚えくらいで挑むこともあるんです(笑)。『ここはこう避けるんだったな』くらいのほうが、ギリギリの感覚で動ける。決まりきったアクションだけじゃなく、その場で生まれた動きがOKになることもあります。それが坂本組の面白さでもあると思います」
そんな自由な現場だからこそ、「監督の期待に応えたい」という言葉が返ってくるのかと思いきや、山本の答えは少し意外だった。
「正直に言うと、『監督の期待に応えたい』というより、『監督と一緒に楽しみたい』という気持ちのほうが強いんです。坂本監督は、全部を吸収して生かしてくださるので」
そう話すと、「まるで家族みたいなんですよね」と、少し照れくさそうに笑った山本。
「家族って、どんなことがあっても家族じゃないですか。うまくいかなくて落ち込んでいることも、多分全部見抜かれている気がするんです」
腹筋が硬すぎて跳ね返ってくるケイン・コスギ
今回初めて共演した服部半蔵役のケイン・コスギからも、多くの刺激を受けた。
「今まで出会った人の中で、一番跳び回し蹴りが美しい人だと思っています。常にあれだけの身体を維持されていて、本当にストイックなんです」
実際にアクションを交える中では、その鍛え抜かれた身体を、身をもって実感したという。
「お腹に蹴りを入れるシーンでは、腹筋が硬すぎて跳ね返ってくるくらいでした(笑)。多くを語る方ではないからこそ、陰で積み重ねてこられた努力が伝わってきますし、ハリウッドでの経験もある上に、日本の時代劇黄金期も知っている本当に貴重な存在で、ご一緒できてとても貴重な経験でした。アクションや立ち居振る舞いからも学ぶことがたくさんありました」
一方、水野美紀については、その切り替えの鮮やかさが印象に残ったそうだ。
「普段は本当に優しい方なのですが、アクションになると目つきが変わるんです。俳優同士って遠慮してしまうこともあるんですけど、水野さんは『行く時は行くから!』という感じで、本気で来てくださる。そのほうが画としても良くなることを分かっていらっしゃるので、自分もこういう俳優でありたいと思いました」
第一線を走り続ける先輩たちと向き合いながら、互いに身体を預け、信頼を積み重ねていく。そんな現場だからこそ、山本はアクションを「会話」のようなものだと感じているそうだ。
「坂本組って、アクションがない日がないくらい毎日何かしら動いているんです。でも、みんなゲラゲラ笑いながらやっていて(笑)。言葉にしなくても、お互いにアクションで会話しているような感覚があるんですよね」
