『ALIUS』は、人類の進化という壮大なテーマを扱いながらも、1話30分という気軽さも特徴であり、いわゆる大作映画のようなスケール感だけに頼った作品ではない。

「SFって、お金をかけようと思ったらいくらでもかけられる。でも今回は、そうじゃないやり方で課題を乗り越えようとしていたところが良かったなと思っています」

本作は完全オリジナル脚本である上、現場に入ってからも、試行錯誤の連続だった。

「僕が入る前の段階から、きっとスタッフの皆さんには乗り越えなきゃいけないハードルがたくさんあったと思うんですよ。だからこそ、現場ではスタッフ・キャスト一丸となって、“知恵を振り絞りながら乗り切りましょう!”みたいな感じで、みんなで喧々諤々(けんけんがくがく)やってましたね」

その過程そのものに価値がある。

「結果がいいか悪いかは別として、そこに向かっていくことに意味はあったと思います。ただ、分かる人だけが分かればいい、という方向には行きたくないんです。今回に関しては、ある程度制限がある中でも、とことん考えることができました。時間的には撮影が1カ月しかない中で、どうしたらこの作品世界をリアリティがあるように見せられるのかを、現場でも考え続けていました。でも、最終的にはやっぱり、視聴者を惹き込んでいけるものにならないと、エンターテインメントとして成立しないんですよね」

今回のような連続ドラマのみならず、映画や舞台であれば、興行として成立させなければならない。座長を担う佐々木は、その責任も含めて、作品づくりだと考えているのだ。

「ただのアーティストとしてではなく、作品に携わっている人間として、僕は常々そうありたいと思っているんです。“無茶をやりたい”ということではなくて、演じることと、その作品をちゃんと成立させること。その両方を持っていなきゃいけない。ある程度両立できないと、プロデューサーも次の仕事ができなくなってしまうと思うので、“なんでこんなことやってもうたんや!”ってなったら、仕事が続けられなくなってしまう。ちゃんと仕事が継続できる範囲のものを作っていくためにも」

「持続可能な範囲で精一杯振り切る」――そんな現実感覚と理想のせめぎ合いこそが、佐々木蔵之介の考える“プロの仕事”なのだろう。だから、次にWOWOWオファーを受けるなら、今度は24年も待たずとも、「また“これ、誰に言うても無理やろ”みたいな企画を持ってきてほしいですね(笑)。“できるか、こんなもん!”って思いながら、“まあ、やってみましょうか”って」

「何でも取り込んでみる」門戸を閉ざさない俳優論

一方で、「これをやってみたい」という強い願望は、自身の中には特にないという。

「“ぜひともこの役は佐々木さんに…!”と言っていただいたなら、僕なりのことをやります。セリフはもちろん台本通りに言いますけど、句読点でちょっと息継ぎを変えるとか、その程度でも、僕なりの読み方ができたらいいなと思っています」

それは自己主張ではなく、作品への誠実さだ。

「“自分がやりたいから”ではなくて、“あくまで登場人物として”ですけどね」

台本の言葉を勝手に変えることもほとんどない。

「アドリブとか、自分が言いやすいように語尾を変えるとか、あまりしたくないんです。台本に誤字脱字があったら、“ありがとう!”って思いますもん(笑)。“だってほら、ここにそう書いてありますよ”って、誤字脱字もすべてそのまま読みますから」

そう茶目っ気たっぷりに話す佐々木が何より大切にしているのは、「閉じないこと」だ。

「何でも取り込んでみる。常にちゃんと門戸は開いておこう、聞く耳は持っておこうと思っています。“これをやりたい”と思っていても、誰かの違う意見が入ったら、結局それを選ばなかったとしても、出力は変わってくると思うんです。“いらん、いらん”って最初から閉じるんじゃなくて、別の選択肢が入った上で選ぶ方が、よりいいものになる気がするから」

かつて、実家の老舗酒造を将来継ぐために、日本酒造りに直結する微生物学や農学を学んだ理系出身でありながら、説明できない感覚も否定しない。できないことを認めた上で、新しい挑戦にも飛び込む。そして、自分とは異なる考えにも耳を傾ける。

『ALIUS』について、「見終わった後、街中の風景が少し違って見える…かも?しれません」とコメントしていた佐々木。それは、謎の存在への恐怖だけではないのだろう。

分からないものを、頭ごなしに否定しないこと。たとえどんな時でも思考停止せず、常識の外側にあるものにも、一度耳を澄ませてみること。未知のものに出会った時、門戸を閉ざすのではなく、まずは受け止めてみる。その柔軟さこそが、長く第一線を走り続ける俳優・佐々木蔵之介の強さなのかもしれない。

●佐々木蔵之介
1968年生まれ、京都府出身。俳優としてドラマ、映画、舞台で幅広く活躍し、NHK連続テレビ小説『オードリー』などで注目を集めた。主な出演作に、ドラマ『白い巨塔』、『ハンチョウ~神南署安積班~』シリーズ、『医龍-Team Medical Dragon-』シリーズ、映画『超高速!参勤交代』シリーズ、『空母いぶき』など。

スタイリスト:勝見宜人(Koa Hole inc.)
ヘアメイク:高橋幸一(Nestation)