NTTドコモの金融・決済ビジネスを切り出した金融持ち株会社「NTTドコモ・フィナンシャルグループ」(ドコモFG)が7月1日からスタートした。9日には、事業開始に伴う記者会見が行われ、廣井孝史代表取締役社長らが、今後のドコモFGの舵取りを説明した。

廣井社長は、「最もお客様に支持されるデジタル金融グループを作り、日本の金融を変えていきたい」と意気込み、ドコモグループならではのサービスを展開していきたい考えを示している。

  • ドコモFG各社の経営陣。右から2人目がドコモFGの廣井孝史社長、右がマネックス証券・清明祐子社長、左から2人目が住信SBIネット銀行・円山法昭社長、左がドコモ・ファイナンス岡田靖社長

    ドコモFG各社の経営陣。右から2人目がドコモFGの廣井孝史社長、右がマネックス証券・清明祐子社長、左から2人目が住信SBIネット銀行・円山法昭社長、左がドコモ・ファイナンス岡田靖社長

ドコモの金融サービスを一気通貫で提供

ドコモFGは、銀行の住信SBIネット銀行(8月からはドコモSMTBネット銀行)、保険のドコモ・インシュアランス、ローンのドコモ・ファイナンス、証券のマネックス証券を傘下に収めるドコモの金融持ち株会社だ。ドコモ本体が有していた決済サービスであるd払い、dカード、iDに加え、それぞれのグループ会社とドコモが提供してきた金融サービスを提供する。

  • ドコモFGの状況。NTT子会社のドコモのさらに子会社という位置づけ

    ドコモFGの状況。NTT子会社のドコモのさらに子会社という位置づけ

これまでは、本丸とも言うべき銀行業を保有していなかったことからドコモ本体で運営してきたが、住信SBIネット銀行の買収に伴い、金融行政への対応などを踏まえて設立されたのがドコモFGとなる。

ドコモFGのような金融持ち株会社の立ち上げは後発だが、ドコモ自体は金融・決済領域で長く取り組みを続けてきた。2004年に携帯電話で決済ができるおサイフケータイを、世界に先駆けてスタート。2005年にはクレジットカード事業としてiD/DCMX(今のdカード)をスタートしており、20年以上の取り組みとなる。

  • ドコモの金融・決済領域における取り組み

    ドコモの金融・決済領域における取り組み

廣井社長は、「iモードとともに社会に大きな変革をもたらした」と成果を強調する。結果として、dカード会員数は約1,900万、カード取扱高は約12兆円まで拡大。dポイントクラブ会員数も約1億900万に達する巨大経済圏を築き上げた。

  • 決済事業の現状

    決済事業の現状

携帯キャリアは金融事業を傘下に収めており、KDDIのauフィナンシャルホールディングス、ソフトバンクのPayPay金融グループがある。出自が異なる楽天モバイルは、楽天グループ内に金融事業を有し、こちらも10月にもグループ再編を行う。

その中でもドコモFGの強みとして廣井社長が挙げるのは「資産形成余力のある顧客との接点」だ。これは、dカードのGOLDやPLATINUMという上位カードの契約件数が約1,200万、ドコモSMTBネット銀行の1口座あたり預金約120万円、マネックス証券1口座あたり預かり資産約404万円、ドコモ・ファイナンスの平均融資残高約100万円といった数字が「競合他社より高い」と廣井社長は言う。

  • ドコモFGの強みは、競合に比べて資産余力の高さ

    ドコモFGの強みは、競合に比べて資産余力の高さ

こうした数字をさらに拡大していくというのが狙いで、そのためにも「ドコモの顧客基盤と多様なデータ」を活用する。1億を超えるdポイントクラブ会員に加え、ドコモの通信をはじめとしたサービスで得られた膨大なデータを活用することでドコモFGのサービス利用をさらに促進する。

もう1つが、ドコモショップの存在だ。ドコモの携帯回線の利用者向けに全国に張り巡らされた店舗網を、金融サービス向けにも展開する。背景として廣井社長は、ユーザー調査では金融知識に不安を感じる人が多い一方で、専門家の意見やアドバイスを求める傾向が強かったと説明する。これは、利用が拡大するNISAに関しても同様で、NISA未利用者の約8割が「身近に相談できる場所がない」と回答した。

  • 金融知識が平均以上だという人は22%にとどまり、専門家の意見を聞きたい人は7割弱に及んだ

    金融知識が平均以上だという人は22%にとどまり、専門家の意見を聞きたい人は7割弱に及んだ

そうした声に対しては、リアルなコミュニケーションを実現するドコモショップを活用する。すでに2026年1月からは証券総合取引口座やNISA口座の開設、NISAに関するスマホ教室を一部ドコモショップで展開。2026年8月からは、銀行口座の開設と初期設定、ネット銀行に関するスマホ教室を、これも一部ドコモショップで展開する。

  • ドコモショップでの金融サービスの取り扱いを拡大する

    ドコモショップでの金融サービスの取り扱いを拡大する

「d NEOBANK」から「ドコモの銀行」へ

金融事業の中心になるのが銀行だ。住信SBIネット銀行は8月にドコモSMTBネット銀行へと社名を変更するが、それに伴って個人向けのサービス名も「ドコモの銀行」へと改める。もともと「NEOBANK」をサービス名に使っていて、ドコモの買収に伴って「d NEOBANK」としていたが、これをさらに変更し、「個人向けサービスではNEOBANKの名称自体も廃止する」という形になった。法人向けのBaaSビジネスでは、「d NEOBANK」ではなく「NEOBANK」を復活させる。

公式には「より親しみやすく、分かりやすく伝えるため」ということで「ドコモの銀行」になったとしているが、いずれにしても良くも悪くも一段とドコモ色を強めている名称となっている。

  • 銀行のフランチャイズ店舗でも「ドコモの銀行」を掲げる

    銀行のフランチャイズ店舗でも「ドコモの銀行」を掲げる

このドコモの銀行に関するサポートを、ドコモショップ1,000店舗、銀行フランチャイズ店舗500店舗の1,500店規模で展開する。現在、住信SBIネット銀行のフランチャイズ店舗は75店舗で、「日本最大の住宅ローンを取り扱い」(住信SBIネット銀行円山法昭社長)となっている。8月からはドコモショップ198店舗が加わり、2030年までに1,500店舗まで拡大する計画だ。

ただ、すでにドコモショップを運営する代理店からは賛同を得ており、「早ければ年度内に1,000店舗達成も」(同)ありえるという。口座開設や預金受け入れ可能な店舗として、メガバンクの400~500店舗という有人店舗を上回る規模まで拡大させる。

  • 大幅に銀行サービス対応店舗を拡大する。既存店舗でも、従来の住宅ローン中心ではなく、口座開設の案内や、将来的な総合的な銀行サービスまでを提供する

    大幅に銀行サービス対応店舗を拡大する。既存店舗でも、従来の住宅ローン中心ではなく、口座開設の案内や、将来的な総合的な銀行サービスまでを提供する

円山社長は、「クリック&モルタル(リアルとデジタルの融合)は、日本でも世界でもなかなか成功事例がない」と指摘。ネット銀行のドコモSMTBネット銀行においてこれを実現したいと意気込む。

同じく証券口座に関する支援もドコモショップで提供する。ただ、証券口座の取り扱いには金融サービス仲介業が必要で、これは銀行口座の銀行代理業に比べて取得が難しいとのことで、ドコモの銀行に比べて拡大は遅くなるようだ。

とはいえ、ライセンスを取得したドコモショップから順次相談体制を整え、資産形成を安心して始められるような環境を構築したい考えだ。

  • 投資のハードルを下げるdポイントとの連携やd払いアプリからの誘導で利用者の拡大を図る

    投資のハードルを下げるdポイントとの連携やd払いアプリからの誘導で利用者の拡大を図る

  • ローンに関しては、ドコモFGとドコモ・ファイナンスの共同運営によって幅広いニーズに応えていくという

    ローンに関しては、ドコモFGとドコモ・ファイナンスの共同運営によって幅広いニーズに応えていくという

ドコモFG内のサービスを利用することによるシナジー効果を発揮するために、dカードと「ドコモの銀行」利用者に対して最大3%、さらにマネックス証券を併用すると最大4.5%のdポイント還元を提供する。さらに、住宅ローン契約のタイミングでドコモの回線サービスを利用するとdポイントを進呈するという特典も提供予定。「シナジー効果を最大限発揮できる施策を展開していきたい」と廣井社長は話す。

ドコモFGによって、決済から銀行、証券、ローン、保険まで、一気通貫で金融サービスを提供できる下地が揃ったドコモ。法人向けのBaaS事業を含めてまずは規模の拡大を図りつつ、成長戦略としてステーブルコインを使った決済や日ごと/時間ごとといった短期払いのマイクロサブスクリプションなどの「次世代決済」の展開を目指す。

さらに決済データに基づく即時与信によるレンディングやBNPLといったさらなる金融サービスの提供を進めて、2030年度には2025年度の売上5,965億円を倍増させて1.2兆円規模まで拡大させる計画を示す。

  • ドコモFGの成長に向けた展開ステップ

    ドコモFGの成長に向けた展開ステップ

「やさしい金融」を掲げ、ドコモグループにおける金融部門を率いるドコモFGが、他のキャリア各社の金融グループにどのように対抗するか。金融サービスまで手を広げる代理店の負担増やドコモ回線との連携、dアカウントの課題など、様々な課題をどう解決していくか注目していきたい。