クレディセゾンは、「推し活」事業をさらに推進するために、社内の新組織として「推し活課」を新設した。クレジットカードなどのペイメント事業の新たな成長ドライバーと位置づけ、「IP・推し活戦略」を推進する、社内横断の組織として立ち上げた。
今後、全社横断で「推し活」に関する事業の司令塔として活動していく。
「応援」から「推し活」へ、クレディセゾンの取り組み
クレディセゾンではIP・推し活事業で「5カ年ビジョン」を打ち出しており、サポートするIP・コンテンツを100まで拡大して既存会員へ特別な体験を提供する。これによってカード会員を100万人まで増加させたい計画。同社の取締役兼常務執行役員の足利駿二氏は、これまでの検証結果から、会員獲得などの投資コストが1~2万円としており、100万会員増に向けて「100億円以上の投資を行うことで次の成長戦略として推進していきたい」と話す。
クレディセゾンは、2025年度に初めて連結の事業利益が1,000億円を超えており、ペイメント事業も総収益で2,842億円、事業利益で332億円へと成長している。その成長の背景には、プレミアム戦略の奏功、分割・リボの利用拡大などがあるという。
こうした収益構造に加えて、新たな成長ドライバーとして位置づけるのがIP・推し活戦略だ。これによって若年層の獲得に加え、50代以上の世代の獲得も目指し、さらなる収益拡大につなげたい考えだ。
もともとクレディセゾンは「応援」を続けてきたと足利氏は説明する。第1期が1980年代の「永久不滅ポイント」で、これは年間の利用金額が限られる主婦層でもポイントを貯めてそれを使った体験が得られることを狙った、「女性応援」の取り組みだったという。
第2期が現在で、2000年代初頭から2020年代にかけて、スポーツや文化に対する取り組みを継続してきた。2001年からのサッカー日本代表、2000年代からの埼玉西武ライオンズといった具合だ。
そして今後は、「第3期」としてIP・推し活事業を推進する。野球やサッカー、バスケットボールなどのスポーツに加え、音楽やアイドル、VTuberといった分野にも取り組みを拡大していく。
その1つが、Visaとともに取り組みを開始したアーティストの「Ado」とのコラボレーション。Adoのオリジナルカードデザインやライブへ協賛するほか、オリジナルグッズのブランケットなどを提供する。「今後、カードホルダーしか体験できないことを提供していきたい」と足利氏は話す。
ペイメント事業拡大に向けた取り組みでは、ベンチャー企業への出資もあり、同じく推し活に向けたクレジットカード事業を行うナッジなど、約90社に出資しており、こうした取り組みも新たな顧客層の獲得や新たな価値提供につなげていくことを狙う。
拡大する推し活市場に推し活課
推し活市場については、人口が約1,940万人、市場規模が約4.1兆円と同社は説明。「日本を代表する新たな消費市場」だと、同社戦略企画部推し活課の久次米ともみ氏は言う。2024年1月には1,140万人だった市場は、2026年中に2,000万人を突破する勢いだと久次米氏。
特徴的なのが、若年層だけでなく50代・60代にも広がっているという点。推し活が生きがいになったり、新しいことを始めるきっかけにもなっており、「消費だけでなく人生を豊かにする文化になっている」と久次米氏は指摘する。
さらにスポーツ、アニメ・マンガ、VTuber、アーティスト、アイドル、俳優、ゲームなど、多様なIPへと推し活は広がっている。例えば2000年代初頭に韓国ドラマが人気になったのもまさに推し活だったが、長年のファン活動も、「推し活」という言葉ができたことで認識が新たになった、という面もあるだろう。
これまで、グッズや音楽CDなどの購入が中心だった推し活も、ライブ、イベントへの参加、宿泊や交通などの旅行、SNS発信などにシフト。より幅広い体験型、参加型へと変わってきているという。こうした点を踏まえて久次米氏は、「カード会社としても新しい役割が今後求められてくる」と話す。
クレディセゾンは、顧客層の6割以上が50代、60代となっており、同社にとっては50代以上が最も重要な会員基盤となっている。推し活関連の決済を分析すると、推し活層の利用頻度や年間利用単価は、非推し活層の3.9倍に達し、ロイヤリティが高いユーザーであった。これは若年層も50代以上も同様の傾向だったという。
加えて、幅広いパートナーとのネットワークを有する点がクレディセゾンの強みの1つだ。エンターテインメントだけでなく、EC、ホテル、交通、国際ブランドなど「推し活に欠かせない幅広いアセットがあるのが強み」(久次米氏)であり、これらを掛け合わせることで、カードを超えた体験を提供できるとしている。
こうした取り組みを強化するために生まれたのが推し活課だ。これまでも同社では、「推し活委員会」として部門横断の組織はあったが、基本的にはデジタルセールス部門とEC部門の取り組みであり、それ以外にも各部門で個別にやっていた推し活関連のビジネスを全社横断で取り組む形で格上げしたのが推し活課になる。
これを司令塔として位置づけ、様々な部署からメンバーが集められ、プロジェクトに応じてそれぞれ活動し、社内外のアセットを活用しながらクレディセゾンならではの推し活体験を作り上げていくことを目標としている。
足利氏によれば、現時点で20件以上の推し活プロジェクトが進行中または検討中ということで、今後もジャンルを限定せず様々なパートナーと共創を進めていく方針。
「推し活を単なるカードビジネスとは考えていない」と足利氏。クレディセゾンらしい推し活事業の提供に向けて取り組んでいきたい考えだ。













