そして誤解されがちだったが、“OLのお仕事ドラマ”という見どころも意外に充実していた。
その立役者となっていたのが、小池栄子が演じたバッグメーカーの販売員・大山遥。遥が率いるバッグメーカーの販売員たちは、恵美が率いる本店の販売員たちとライバル関係にあり、給料格差などのコンプレックスもあって、火花が飛び散るようなバトルを見せた。
同じフロアで同じ制服を着て接客をしているため、客から見たら「違いが分からない」という販売現場の妙も含め、常に張り合い、時に協力し合う恵美と遥。将来の夢やステップアップの誘いをめぐるエピソードもあり、2人の姿に引き込まれていく。
さらに遥を語る上で重要なのは、「仕事の成績で恵美に及ばず、胸の大きさでまりえに及ばない」という絶妙な立ち位置。「伊東美咲、深田恭子、小池栄子のトリプル主演」と思わせるポジションであり、最終話の結末まで三者三様の生き方が描かれた。
もう1つお仕事ドラマとしての見どころは、百貨店を取り巻くディテールの面白さ。売れ筋ではない商品の棚を「仏壇」「行き遅れ」と呼んだり、間接的に不審者を知らせる館内放送を流したりなどの描写を散りばめて興味を引いた。
ちなみに売上トップを誇る恵美のキラーフレーズは、ささやくような小声で「実は私、これと同じ物持ってるんです。限定品なので入荷したとき、すぐに買いました。とても使い心地いいですよ」。
売上目標やトラブル対応をめぐる奮闘もあり、社食や通勤などの何気ないシーンもあり、OLの本音を散りばめながら、恋に仕事にコンプレックス打破に奮闘する様子がほほえましい。“胸”の扱いに対する好き嫌いはさておき、働く女性が共感できる要素が取り込まれていた。
コメディエンヌの才能開花も…
最後に主演・伊東美咲にふれておくと、05年に『電車男』と『危険なアネキ』、06年に『サプリ』(いずれもフジ系)で主演を務めるなど、まさに人気絶頂期。主演女優としての美ぼうは頭1つ抜けた存在だったが、当作で思い切ったコメディに挑戦したことに驚きの声があがっていた。
伊東が演じる恵美は仕事ができてファッションセンスも抜群だが、唯一のコンプレックスが胸。「山おんな」まりえが現れたことによって「壁おんな」恵美のコンプレックスに火がつき、調子が狂いはじめるのだが、今見ると振り切ろうとしていた様子がうかがえる。
序盤から、崩れてきた段ボールの下敷きになったり、昼食のラーメンに大量の爪楊枝をこぼしたり、周囲から「(怒ったときに)鼻ふくらんでますよ」とイジられたり、まりえのマネをしようとしてアゴを打ちつけたり、美ぼうとのギャップで脱力感を誘った。伊東にとって「コメディエンヌへの道が開けたか」と思わせたが、結婚・出産で女優業を控えたため、当作の希少性が際立っている。
対照的な恵美とまりえに加えて、世間知らずのお嬢様・吉野加奈子(上原美佐)、空気を入れたブラジャーをしている豊川みさと(矢沢心)、恵美の先輩で情報通だが口が軽い黒板リカ(三浦理恵子)ら販売員のキャラクターは多彩。彼女たちの仕事と恋に加えて当時の最新ファッションも見どころの1つだった。
美しい女優たちだけでなく、谷原章介、及川光博、西島秀俊らイケメンもそろえた美男美女の「眼福ドラマ」と言っていいだろう。さらに若林豪、温水洋一、笹野高史、佐藤二朗ら名優のコメディ芝居も楽しめるなど、何気に贅沢な作品だった。
日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。