大正製薬は6月17日、「時間差熱中症」に関する調査結果を発表した。調査は2026年6月、全国の20代以上の男女731人を対象にインターネットで行われた。

屋外活動後の夜・翌日に不調が出る「時間差熱中症」に注意

熱中症は炎天下で活動している最中に起こるイメージがあるが、実際には活動を終えてしばらく経ってから不調があらわれる「時間差熱中症」を起こすケースも少なくない。暑熱環境での活動後、数時間から、長い場合は数日後に遅れて体調不良が起こることもある。

同社が2026年6月に実施した調査でも、731人のうち約35%が、「活動中ではなく数時間後や翌日になって体調不良を感じた経験がある」と回答している。

  • 夏季、暑熱環境(暑い場所)で活動した時には体調不調は感じず、数時間経過後、ないしは翌日以降に体調不良を感じたという経験はありますか

    夏季、暑熱環境(暑い場所)で活動した時には体調不調は感じず、数時間経過後、ないしは翌日以降に体調不良を感じたという経験はありますか

時間差で不調を経験した256人に具体的な症状を聞いたところ、「強い疲労感・ぐったり感」が149人と最も多く、次いで「めまい・立ちくらみ」が116人、「頭痛」が104人、「体がほてる・熱がこもる感じ」が103人と続いた。

  • その時の症状はどのような症状でしたか?

    その時の症状はどのような症状でしたか?

また、その不調にどのように対処したかに関しては、最も多かったのは「水を飲んだ」が146人、次いで「スポーツドリンクを飲んだ」「涼しい場所で休んだ」がそれぞれ121人、「体を冷やした」が87人、「睡眠をとった」が82人と続いた。

一方で熱中症の対処として効果的であるとされる「経口補水液を飲んだ」は50人、「アイススラリーなど冷たい飲料を摂った」は32人にとどまった。水分補給や、休養・体を外から冷やすといった対処は一定行われているものの、脱水時により適した経口補水液による電解質補給や、体の内側から深部体温を下げる対処までを取り入れた人は限定的だったことがうかがえる。

  • 不調を感じた際、どのように対処しましたか?

    不調を感じた際、どのように対処しましたか?

熱中症に詳しい医師の谷口英喜氏によると、時間差熱中症は、気温や湿度だけでなく、その人の生活習慣や行動パターン、性格にも影響されるという。谷口氏に、時間差熱中症を起こしやすい人の傾向と、その対策を聞いた。

時間差熱中症になりやすい人の傾向

特にリスクが高いのは、朝食を抜く人、睡眠不足の人、疲労がたまっている人、のどが渇くまで水分を摂らない人、休憩や体調不良を我慢してしまう人。また、性格によるリスクの差もあるという。「周囲に迷惑をかけたくない」「自分だけ休むのは申し訳ない」「まだ大丈夫だとがんばってしまう」「我慢することがよいことだと思っている」といった傾向がある人は注意が必要だという。

熱中症は、本人が不調を自覚した時点ではすでに症状が進んでいることもある。そのため、本人の自己申告だけに頼るのではなく、周囲が様子の変化に気づいて声をかけることが重要となる。特に、スポーツやレジャー、屋外イベント、屋外作業などでは、周囲に合わせて無理をしてしまう場面も少なくない。「少し休みたい」と言い出しにくい雰囲気や、「このくらいなら大丈夫」と我慢してしまう環境そのものが、熱中症リスクを高める要因になるとのこと。

時間差熱中症リスクチェックテスト

以下のリスクチェックテストで、時間差熱中症リスクの高さを確認できる。

生活・環境
□ 猛暑日が続く中でも、屋外での活動や作業をすることがある
□ 暑い屋外と冷房の効いた室内を、頻繁に行き来することがある
□ 就寝時の室温が高く、寝苦しい夜が続いている
□ 睡眠不足や疲労がある日でも、予定通り屋外活動をすることが多い

水分・食事補給
□ 屋外活動の日でも、朝食(または昼食)を抜くことがある
□ 活動中、のどが渇いてから水分を飲むことが多い
□ 水分補給は水やお茶だけで、塩分・電解質の補給はほとんどしない
□ 活動後に水・電解質を補給する習慣がない

体温調節・発汗
□ 運動不足やデスクワーク中心で、日常的にほとんど汗をかかない
□ 冷房で体が冷えすぎることがある
□ 急に汗が出なくなる、または止まらないなど、発汗の乱れを感じることがある

意識・行動
□ 暑くても「まだ大丈夫」と思い、休憩を後回しにしがちだ
□ 体調が悪くても周囲に言い出しにくく、無理をすることがある

経験・自覚症状
□ 帰宅後にぐったりしても「疲れただけ」と思い、特に対処しないことが多い
□ 屋外活動後に、頭痛・だるさ・吐き気・めまいを感じたことがある
□ 屋外活動後の夜や翌朝に、体調不良を感じたことがある

チェック数が0~3個の場合は「リスク低」とされ、現時点での時間差熱中症リスクは比較的低い状態だという。ただし、猛暑日や体調不良の日は油断せず、水分・電解質補給を意識する必要がある。

4~7個の場合は「リスクあり・要注意」。いくつかのリスク要因が重なっている状態だという。「活動中は大丈夫だった」という感覚を過信せず、帰宅後の体調変化にも注意する必要がある。

8~11個は「リスク高」。複数のリスク要因が重なっており、時間差熱中症が起きやすい状態。水分・電解質補給、休憩、睡眠環境の改善など、複数の対策を今すぐ始めることが重要となる。

12~16個は、リスクが非常に高い状態。生活習慣・環境・意識の多くにリスク要因が揃っており、「症状が出てから対処する」では遅い可能性があるため、日常的なケアを根本から見直すよう呼びかけている。

時間差熱中症を疑うべき症状は?

熱中症というと、炎天下や高温多湿の環境にいる最中に体調が悪くなるイメージを持つ人も多いが、実際には、暑い場所から離れた後、数時間経ってから症状があらわれることもあるという。こうした状態は、一般的に「時間差熱中症」または「時差熱中症」と呼ばれている。目安として、暑さに暴露されてから、半日~24時間は時間差熱中症が起きる可能性があるため、注意が必要とされる。特に、子どもや高齢者では、その傾向が強いという。

時間差熱中症は、暑熱環境での活動中には大きな異変がなくても、帰宅後や夜間、翌朝などに、頭痛、倦怠感、吐き気、めまい、体のほてり、食欲不振などの症状としてあらわれることがある。

特に、活動後に以下のような様子が見られる場合は注意が必要とされる。

  • 顔が赤い、または顔色が悪い
  • ぼーっとしている
  • 返事が遅い
  • 動きが鈍い
  • 強い眠気がある
  • 頭痛や吐き気を訴える
  • 食欲がない
  • 普段より口数が少ない
  • 帰宅後にぐったりしている
  • 帰宅後も「疲れた、疲れた」と言っている
  • 暑さに暴露されてから、痛い部分が残っている
  • 翌朝までだるさが残っている

単なる疲労に見えることもあるが、暑熱環境で失われた水分・電解質・エネルギーが十分に補われていないサインである可能性があるという。

時間差熱中症の原因のひとつは、屋外にいる間は気が張っていたり、活動に集中していたりするため、不調を自覚しにくいことがある。また、熱中症は脱水症と異常高体温という病態が合わさって成り立つ。体内の水分が失われて体温コントロール機能が徐々に低下し、臓器機能が低下して顕著な体調不良が出現するのに実際に数時間から1日かかることもある。

朝食を抜かず、水・電解質・糖分を補う

時間差熱中症を防ぐためには屋外活動中だけでなく、活動前の準備も重要となる。睡眠不足や疲労がある日は体温調節機能が十分に働きにくくなるため、前日は十分な睡眠をとり、当日の朝は朝食を抜かないことが大切。朝食は睡眠中に失われた水分を補い、体温調節やエネルギー代謝を支える役割がある。

理想的には、ごはんやパンなどの糖質に加え、味噌汁やスープなどの水分・塩分、卵、魚、肉、乳製品、大豆製品などのたんぱく質を組み合わせることが望ましいとのこと。「暑くて食欲がない」「朝は時間がない」という場合でも、パックのゼリー飲料などで水分や糖分、電解質を補給し、何も食べず・飲まずに活動を始めることは絶対に避けたい。

ゼリー飲料を選ぶ際は、含まれている成分が体内でどのように機能するかを意識することが重要となる。特に暑熱環境下では、発汗によって水分と電解質が同時に失われるため、まず確認すべきはナトリウム(塩分)が適切に含まれているかどうか。全国清涼飲料連合会が定める「熱中症対策」表示ガイドラインでは、飲料100mLあたりの食塩相当量が0.1~0.2gの範囲に収まっていることがひとつの目安とされている。塩分が少なすぎるとナトリウム補給として不十分になり、濃すぎると吸収がかえって遅くなる可能性がある。パッケージに「熱中症対策」という表示のあるものを選ぶのが理想的とされる。

加えて、糖質が含まれていることも重要となる。糖質は小腸での水分吸収を促進するだけでなく、脳や筋肉のエネルギー源としても機能する。ビタミンB群やアミノ酸が配合されているものにすると、エネルギー代謝や疲労回復の観点からも非常に有効だという。

活動中は「のどが渇く前」に補給する

屋外活動中は、のどが渇いてから飲むのではなく、時間を決めてこまめに補給することが重要となる。のどの渇きを感じた時点では、すでに体内の水分が不足し始めている可能性がある。目安として、30分に1回程度を意識して水分補給と休憩を組み合わせることが推奨される。

汗をかくと、水分だけでなくナトリウムなどの電解質も失われる。その状態で水だけを大量に飲むと体内の電解質バランスが崩れ、かえって体調不良につながることがある。特に、高温環境下で長時間活動する場合や、30分以上の運動・作業を行う場合には、水だけでなく電解質と糖分を含む飲料を取り入れることが重要となる。

糖分は脳や筋肉のエネルギー源として働くだけでなく、小腸での水分吸収を助ける役割がある。屋外活動中に集中力が落ちる、動きが鈍くなる、判断力が低下するといった状態は、脱水だけでなくエネルギー不足が関係している場合もある。発汗量が多い場面では、スポーツドリンク、ゼリー飲料、塩分を含む補給食品などを状況に応じて活用できる。

"アイススラリー"を活用

近年、熱中症対策としてアイススラリーなどを活用した「プレクーリング(事前冷却)/ポストクーリング(事後冷却)」が注目されている。

アイススラリーとは、液体と微細な氷が混ざったシャーベット状の飲料で、体の内側から効率よく冷やすことができる点が特長だ。通常の冷たい飲み物でも体を冷やすことはできるが、アイススラリーは微細な氷が体内で溶ける際に熱を奪うため、深部体温の上昇を抑える対策として活用できる。塩分の含まれているものを選べば水・電解質を補給しながら深部体温を下げることができる。

特に、暑熱環境で長時間過ごす予定がある日や、屋外スポーツ、屋外イベント、レジャー、屋外作業などの前には、活動前に体を内側から冷やしておくことが有効とされる。また、活動の後、帰宅後にいつでも飲めるように冷凍庫にアイススラリーをストックしておくと、ポストクーリングの一助となる。屋外活動後に体がほてっている、汗を大量にかいた、強い疲労感があるといった場合は、涼しい場所で休みながら、塩分の含まれたアイススラリーを活用し、体を内側と外側の両方から冷やすことが重要となる。

帰宅後の、「いつもと違う」を見逃さない

時間差熱中症を防ぐうえで、家族、友人、職場の管理者など、周囲の人が果たす役割は非常に重要となる。見るべきポイントは、「いつもと違うかどうか」。

子どもや高齢者は、自分の体調変化をうまく言葉にできないことがある。また、大人でも、仕事やスポーツ、イベントの場面では「大丈夫」と言ってしまうことがある。そのため、周囲が「水分を摂ったか」「塩分や糖分を補給したか」「涼しい場所で休めているか」を確認し、無理をさせないことが大切だという。

特に、活動後に帰宅した子どもが、普段よりぼーっとしている、すぐに横になる、食事を食べたがらない、頭痛や吐き気を訴えるといった場合は、単なる疲れと決めつけず、熱中症を疑うことが重要とのこと。

ぐったりした状態が続く、呼びかけへの反応が鈍い、まっすぐ歩けない、嘔吐を繰り返す、水分を自力で飲めないといった場合は、すでに重症化している可能性がある。その場合は、速やかに医療機関を受診し、呼びかけても答えない時には、すぐに救急車を要請するよう呼びかけられている。