トラック業界で日本最大規模の展示会「ジャパントラックショー」に足を運び、いすゞ自動車とUDトラックスが2ブランド合同で出展したブースをじっくり見てきた。展示物から感じたのは、いすゞグループのチャンレンジングスピリットだ。
新設計エンジンでAT普通免許OKのトラックを実現
「ジャパントラックショー2026」では大型から軽までの各種トラック・トレーラーや特装車、作業車、関連機器、部品・用品、ソフトウェアなど、170の会社がさまざまな展示を行っていた。その中で最大級の展示スペースを擁していたのが、いすゞグループだ。いすゞ自動車と2021年にいすゞグループ入りしたUDトラックスの2ブランドが、同じブース内で最新車両の展示を行った。
ジャパントラックショー2026の直前、いすゞはUDトラックスとの2027年度中の合併について検討を始めたと発表した。2つのブランドが一体化した今回のブースは、そのメッセージを具現化したものに感じられた。
車両の展示は、いすゞの「エルフミオ」「エルフEV」「フォワード」「ギガ」とUDトラックス「クオン」の5台だ。
この中でもっとも身近な存在なのが「エルフミオ」だろう。多くの人が所有する「AT限定普通自動車運転免許」で運転できる車両で、キャッチコピーは「だれでもトラック」。本田翼さんが出演するテレビCMを見たことがある人もいるはずだ。
実は、普通自動車免許で運転できるトラックの範囲は狭まりつつある。昔は、車両総重量8tまでは普通免許で運転できた。このときは普通免許の上が大型免許だったが、その後は中型免許、準中型免許が新たに登場。最近では、普通免許を取得した人が運転できるトラックは車両総重量3.5t以下になっている。
トラックは重い荷物を積んで走るため、車体を頑丈に作る必要がある。積載を含めた総重量を3.5t以内に収めるのは至難の業だ。とはいえ、少子高齢化に加えて、いわゆる「物流の2024年問題」などでドライバー不足は深刻。そんな課題解決のために、新設計エンジンの投入などにより生まれたのが、エルフミオなのである。
トラックショーでは冷凍バンを展示。冷凍・冷蔵の両温度帯に対応した高性能冷却システムを搭載しており、生鮮食品や医薬品など、高度な温度管理が求められる荷物を安全に運搬することができる。
画期的なEVトラック
社会課題に対応したエルフミオに対し、地球環境問題に対応したのが「エルフEV」だ。エルフのモデルチェンジとともに登場したいすゞ初の量産バッテリーEVで、コンパクトなバッテリーパックの搭載個数を変えることで、3種類のバッテリー容量を実現するモジュラー方式を採用したのが画期的といえる。
さらにいすゞでは、車両提供にとどまらず、運用まで含めた支援を行うソリューションも提案。トラックショーでは、「EVision」による購入検討から利用時の課題解決、効果検証までのトータルサポートや、「SmartEVer」による充電計画の最適化・電力コストの抑制、複数台運用時の充電制御についても紹介していた。
エルフのひとつ上の中型トラックが「フォワード」だ。トラックショーではメーカー自身が架装を担当した完成車「Fカーゴ」を展示。実用的な装備を標準化した即戦力仕様であり、左右パネルが跳ね上がるウイングタイプ、冷蔵や冷凍に対応したクールタイプもある。
大型トラックの「ギガ」は、2025年の改良で車輪脱落予兆検知システムを標準搭載(国内初)。こちらは完成車「Gカーゴ」を展示していた。大型トラックを間近で見る機会が少ない筆者は、まずそのスケールに圧倒されたが、仕上げは丁寧で、機能性を高める装備が各所に盛り込まれており、日本のトラックメーカーならではのきめ細かさに感心した。
UDトラックスのクオンは、いすゞのトラックとはひと味違う、精悍で上質なブラックフェイスが印象的。省燃費だけでなく疲労軽減による安全運転にも貢献する最新の電子制御式トランスミッションなどが特徴だ。ブースでは参考出展として、安全性と輸送効率の向上に貢献する自動連結装置を搭載したトラクタを展示していた。
快適な仕事場づくりのための用品も充実
車両以外では、グループ会社で純正用品やサービスパーツを扱ういすゞA&S(アクセサリー&サービスパーツ)の純正用品展示が興味深かった。
まずは、ギガのフルキャブおよびトラクタ用の「停車時クーラー Everycool」。エンジンを切った状態で使える冷房装置で、ドライバーの労働環境を確保しつつ、車外騒音を抑え、燃費削減にも貢献する。リアウインドーを遮らない設計にも好感が持てた。
ギガ用の「ベッド下クローゼット」も展示されていた。運転席背後の仮眠用ベッド下に3分割の大容量収納スペースを設けたもので、毛布や枕などの収納に便利とのことだった。
次は参考出品の快適用品パッケージ「REST +」(レストプラス)だ。長距離運行を支えるドライバーのため、脱着式テーブルや間接照明、快適なソファーベッドを備え、限られたスペースであっても上質でリラックスできる環境を実現する設備となっている。空間が快適であれば、走行後の疲労回復を促し、安全運転にもつながる。
これらのディスプレイはイケア店内のそれを思わせる洗練されたもので、これを見れば、トラックドライバーを目指す若い人が増えそうな感じさえした。
外装や内装の用品では、エルフEV/エルフミオ用として今秋発売予定の新商品「ラウンドカーテン」が目を引いた。フロントからサイドにかけての窓の内側をカーテンで覆うもので、休憩中のプライバシー確保に役立ちそうだ。とりわけエルフミオでは女性ドライバーも多くなりそうなので、大事な装備だろう。
やはりグループ会社で、各種輸送用機器の製造・販売を行う日本フルハーフのブースには、コンセプト小型ウイングバン「MUV」(MULTI UTILITY VEHICLE)が展示されていた。「東京オートサロン2026」にも展示した車両だそうで、ダークブレーのボディと木目調の庫内の組み合わせはクールという言葉が似合う。
普通免許で運転できるトラックから上質でリラックスできる休息空間まで、いすゞグループの展示からは挑戦の気持ちが伝わってきた。物流業界にはさまざまな課題があるが、こうした前向きな姿勢を見ていると、明るく楽しい未来が待っているような気がした。














