政界を追い出された星野茉莉(黒木華)が、市井に生きる政治素人のスナックのママ・月岡あかり(野呂佳代)をスカウトし、東京都知事選に挑む姿を描く、カンテレ・フジテレビ系ドラマ『銀河の一票』(毎週月曜22:00~ ※FOD・TVerなどで見逃し配信)の第7話が、1日に放送された。
今回は、本作が魅せたリアルな選挙準備風景と、新たに明示された、あかりの過去について、考察をしてみる。
【第7話あらすじ】月岡あかり、ついに出馬声明
「都知事になるの!」──透(渡邊圭祐)を刺してパニックになった通り魔に声をかけるうちに、都知事選に出ることを明かしてしまったあかり。その動画は瞬く間に拡散され、体を張ってあかりを守る茉莉も注目の的に。
折しも、五十嵐(岩谷健司)と蛍(シシド・カフカ)が進めていた民政党への切り崩し工作が実を結び、幹事長・鷹臣(坂東彌十郎)に反発する都連会長らが離党届を提出。AI企業社長・風間藍生(梶裕貴)を都知事候補に担ぎ出し、流星(松下洸平)と対決する構えをあらわにする。
そんな中で、鷹臣の娘である茉莉があかりをサポートしていると世間に知れ渡れば、マスコミが押し寄せるのも時間の問題。そう考え、取材に備えた想定問答を考えるなか、あかりが「話しとかなきゃいけないことがある」と切り出す。
実は10年前、あかりが学校の養護教諭だった頃、1人の保健室登校の女子生徒がいた。彼女には人形作りの才能があり、人形を通してあかりと懇意になる。だが、その母からクレームが。そしてある日、女子生徒があかりの自宅の前に。「もう人形作りはやめろって、保健室にも行くなって母に言われた」。抱きしめるあかり。
だが、彼女は母との口論の末に、飛び降り自殺の未遂をしてしまう。そしてあかりは出勤停止になり、これが週刊誌にすっぱ抜かれ、「養護教諭が追い詰めた」などの記事が。これがSNSなどでも炎上した過去があったのだ。
だが、五十嵐は言う。「あんたの10年間を信じる」と。それから政策づくりが始まった。小学校PTA、保育士、子育て中の女性、聴覚障がい者、視覚障がい者、障がい福祉サービス事業所やグループホームのスタッフ、離島の町役場の職員などから、熱心に話を聞く。
そしてすべての準備が整い、あかりは正式に出馬会見を開くのだった──!
「答え」より先に「耳」を傾ける――政策立案シーンのリアリティ
第7話でまず目を引いたのは、政策づくりをめぐる一連のシーンに漂う、奇妙なほどのリアリティだった。あかりたちは実に多様な立場の人々から話を聞いて回る。
ドラマとして見れば、地味な場面である。スペクタクルもなく、劇的な対立もない。にもかかわらず、この場面には抗いがたい説得力があった。おそらく理由は単純で、制作陣が現場を丁寧に取材しているからだ。
実際の政策形成とは、一つの課題をとっても無数の当事者が絡み合う営みである。保育、教育、障がい福祉、地域行政――それぞれに固有の事情があり、同じ「子育て支援」という言葉ひとつとっても、見えている景色はまるで違う。本作はその複雑さを、安易な理想論や美しい演説でショートカットしなかった。あかりが「答え」を提示するのではなく、まず「聞く」ことから始める。その姿勢はむしろ、一本のドキュメンタリーに近い質感を持っていた。
漫画『ジョジョの奇妙な冒険』で知られる荒木飛呂彦氏が創作論として繰り返し語るのが、「人間をよく観察すること」と「徹底した資料集め」の重要性だ。どれほど奇想天外な物語でも、登場人物の行動や感情が現実に根差していなければ、見る者はその世界を信じられない。それは政治ドラマに限らず、あらゆるフィクションに通底する原則である。
今回の政策会議シーンが単なる説明パートに終わらなかったのも、同じ理由だろう。誰か一人の正義を押し付けるのではなく、それぞれの立場にそれぞれの苦悩があることを静かに積み重ねていく。その積み重ねが、あかりたちの準備活動に現実の重みを与えていた。
思えば、スナックのママとして市井の人々の声を聞き続けてきた、あかりという人物の本質と、このシーンは深く共鳴している。「何かを主張する前に、まず当事者の声に耳を傾ける」――その誠実さこそが、この回全体のトーンを決定づけていた。

