政界を追い出された星野茉莉(黒木華)が、市井に生きる政治素人のスナックのママ・月岡あかり(野呂佳代)をスカウトし、東京都知事選に挑む姿を描く、カンテレ・フジテレビ系ドラマ『銀河の一票』(毎週月曜22:00~)の第3話が、4日に放送された。

感動の今回は、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』で描かれたテーマの現代への翻訳、そして一歩先とも思われる“答え”の暗喩が見られた。それをひも解いていく。

  • 野呂佳代 (C)カンテレ

    野呂佳代 (C)カンテレ

【第3話あらすじ】ついに、あかりが都知事出馬を決意!

とし子(木野花)の成年後見人を務める弁護士の竹林圭吾(中山求一郎)が現れ、スナックを売却すると告げられる。

とし子の施設の賃料や介護費など毎月かかる多額の費用は、とし子の年金だけではまかなえず、不足分をスナックの売り上げで補う取り決めになっていた。茉莉は食い下がるが、近隣の工場が移転したことから客が減り、売り上げも激減。深刻な赤字が続くなか、あかりが自分の蓄えを切り崩し、とし子の生活と店の経営をなんとか支えてきたのだった。

このままでは遠からず破綻すると指摘する竹林は、とし子が所有する不動産を処分し、資金を確保するのが最善の方法だと断言。売らずに店を続けるには、最低でも約1,000万円が必要だという。

だが、そんな大金など用意できるはずもないあかりは絶望。途方に暮れるあかりを救いたい茉莉は、懸命に打開策を探るなか、竹林の主張を覆すある方法を見いだす。それは、とし子本人の意思を聞き出すこと。懸命なあかりの説得にもかかわらず、とし子はその場を逃げ出してしまう…。

まもなく茉莉は、閉店の危機を知った常連客の樫田敦史(岩松了)から、とし子があかりに秘密にしていたという思わぬ事実を打ち明けられる。実はあかりと出逢う前、とし子はさまざまな苦難に耐えきれず、自死しようとした。そのビルの屋上に先客=あかりがいて、あかりを自死から救ったのだという。

それからあかりは、スナックとし子で働くように。だがとし子は内心、「いつでもやめてもらってもいい」と思っていた。だが、あかりとの経営が楽しくそのままずるずると…。茉莉は店に貼られていた「今日からあかりちゃんがママ」の紙の裏を見る。そこには「いつでもやめてもいいからね」のメモが。

一方、あかりは再び、施設のとし子のもとへ会いに行っていた。強引な説得を謝るあかり。その追い詰められた様子を悟ったのか、とし子があかりに言った言葉は「あんた、お腹空いてない?」──それは、とし子があかりの命を救った時のものだった。

そしてあかりは、茉莉に言う。「過去も何もかもなくなっても茉莉ちゃんが残っている。自分のまま向かえる明るい世界(へ行く)」と。それは、都知事出馬の決意表明だった。

  • (左から)黒木華、野呂佳代 (C)カンテレ

    (左から)黒木華、野呂佳代 (C)カンテレ

タイパ重視の時代に人物の魅力をじっくり描く勇気

──泣いた。久しぶりにドラマを見て泣いた。第3話はそれほどドラマチックな展開が続いた。茉莉の、あかりを救いたいという懸命な想い。あかりの、とし子への恩返しにスナックとし子をなんとしても守りたいという想い。とし子が認知症になってしまっていても、心の奥底でつながっていた絆。そして、その絆に気づいたあかりが、茉莉に出馬を決めたと告げたセリフ。

「茉莉ちゃんが残るよ。過去がなくなっても、何がなくなっても、茉莉ちゃんと未来が残るから大丈夫。とし子ママも私も…。──まだ、間に合うかな。出馬。都知事。勝手でごめんなさい。私に生きる理由をください。私はまだどうしても、どうしても、生きるのに理由が必要だけど。でも本当は、理由があってもなくても、夢とか、役割とか、家族とか、お金とか、そういうのあってもなくても。病気になっても、ケガしても、年取っても。大切に、大切にしていた何かがなくなっちゃったとしても、何にも心配いらない。自分のまま、明るい方向へ向かえる世界…。綺麗事かもしれないけど」

これに、茉莉は答える。「綺麗事じゃないです! …キレイな事です」──

どうしても避けられないスナックとし子の売却。これを自身の持つ知識と行動力で、回避しようとした茉莉。第3話のラストにして、ようやくこの物語の本筋である「選挙」へと動き出す。この紆余曲折と、開けた明るい未来に、筆者は涙を禁じ得なかった。

そしてこれこそが、本来の連続ドラマだとも感じた。昨今は、テンポの速い作品でなければ、1話切りされてしまうことも増えた。そんな中、本筋へ行くまでに3話分も費やしたのは、ある意味、勇気と自信がなければできないことだ。

第1話で、茉莉の行き詰まりと見つけた光を描き、第2話であかりの覚悟が描かれ、そして第3話では、あかりの人柄が深堀りされた。都知事に立候補するだけの人物であるということを、じっくりと描いたのだ。そしてここから始まる新しい物語──第4話が気になって仕方がない。そして、「気になる」理由の一つには、やはり宮沢賢治『銀河鉄道の夜』との符合があった。