政界を追い出された星野茉莉(黒木華)が、市井に生きる政治素人のスナックのママ・月岡あかり(野呂佳代)をスカウトし、東京都知事選に挑む姿を描く、カンテレ・フジテレビ系ドラマ『銀河の一票』(毎週月曜22:00~ ※FOD・TVerなどで見逃し配信)の第4話が、11日に放送された。
今回注目したのは、実際の政治の厳しさと、それをエンタメとして見せるための寓話性。また、タイトルに込められた意図についても考察してみる。
【第4話あらすじ】ついに、選挙準備が本格始動
あかりがついに都知事選への立候補を決意するが、知名度も政治経験もない無名の新人。一から政治を学ぶため猛勉強を始める。一方、茉莉は無名のあかりを選挙戦のトップに押し上げる秘策を思いついていた。
それは、かつて茉莉の父である幹事長・星野鷹臣(坂東彌十郎)の元秘書で、選挙を仕切らせれば負け知らずの五十嵐隼人(岩谷健司)をチームに迎えること。2年前に市長選で無名の新人候補を圧勝に導いたが、失脚し政界から切られた。そしてその場には、茉莉も──。
同じ頃、民政党では公認候補が流星(松下洸平)一人に絞られた。だが流星は、都連会長から直々に要請されたにもかかわらず、国政を降りる気はないと出馬を固辞する。そんなある日、茉莉のもとに新聞記者・雨宮楓(三浦透子)から、捜索を頼んでいた五十嵐が見つかったと連絡が入る。
五十嵐は、コインランドリーで「よろず困りごと相談所」を営んでいた。政治から見放されたさまざまな人々が集う相談所。顔を見せた茉莉だが、自分を切った幹事長の娘ということで門前払いされてしまう。それでも、「選挙参謀」として五十嵐が必要だと何度も食い下がる茉莉。
五十嵐は政界のような「穴」=「地獄」に戻るつもりはなかった。だが、気が変わる。五十嵐の元へ集まる人々の中に、スナックのママだったあかりの客がいたのだ。素性がバレるが、それでも分け隔てなく接するあかりの人柄に触れた五十嵐は、あかりに何かを感じ入った。政治や行政、勝ち組からこぼれた人々に触れ、政治への考えに変化があったのだ。
かくして、五十嵐は参謀を引き受けることに。それどころか、失脚した時に手切れ金として渡された大金を、選挙資金として使うことも決意した。
ハマり役へ変貌しつつある黒木華
いよいよ、物語の本筋が動き始めた。さらには、選挙で当選させるプロ・五十嵐の力も手に入れた。これまでの茉莉とあかりの人物紹介の物語から打って変わって、テンポよく怒涛の勢いでサクセスストーリーに向けて物語が突き進む──1時間があっという間なぐらいに面白かった。
SNSでも、「今日の力をくれる本当に素晴らしいドラマ」、「五十嵐の客で日雇い労働者の北斗(※阿久津仁愛)の"失敗になる"を壊せない人が多い中、あかりがその心を溶かした。あかりの人柄は、政治からとりこぼされた人たちを救う」「あかりの、考えるより先にあたたかい言葉や行動がスッと出る人は貴重」「多分、多くの人が抱いている政治に求める渇望がこのドラマにはある」「観てよかったと思える作品」など、心をほだされたというコメントも多く見られた。
その名の通り、多くの人の心の“灯り”になりうる、あかりの人柄。これは、野呂という役者の魅力でもあり、親近感の沸く体型も役にハマった。本人も2022年の芸能ライター・斉藤貴志氏のインタビューで、「私がぽっちゃりでなかったら、何も残らなかった可能性があります。アイドル時代にいろいろ言われましたけど、今はこの体型の私を求めてくれる人がいるので、良かったなと思います」と語っており、今回もこれが生きた形だ。
さらに野呂は、2025年のクランクイン!のインタビューで、「人が好きなんですよね。人を喜ばせたり楽しませたりするのがすごく好き」とも話している。この「人が好き」という想いが、雰囲気やお芝居ににじみ出ているのではないだろうか。
そして、これを支えているのが、黒木華の確かな演技力である。かつて黒木は2018年に映画.comのインタビューで、「樹木希林さんの衝撃を受けた。演じる役柄の理解の度合いが桁外れに違う」というニュアンスの話をしており、同時に国内外で多数の受賞がありながらも、お会いした印象は、「私はまだまだ」と非常に謙虚な印象だったことを覚えている。
芝居の素晴らしさは当然とした上で、一見、地味で、どこにでもいるような風貌と雰囲気の彼女。ゆえに、「幹事長の娘」という華々しい役柄でもハマるか当初は疑問だったが、政界から切り捨てられ、市井の人間になってしまった彼女の姿は、その悲壮さも含めて、感情移入できた。逆に華々しくないからこそ、政治からこぼれた人々へ手を差し伸べる役割にチェンジした瞬間に、その力がグンと噴き出したように見えた。
政治とはもっと厳しく現実的な世界だ。だが、この作品はそれをもっと寓話的に描こうとしている。そういった意味で黒木は、この作品、この役柄のハマり役へと変貌しつつある。


