夏の麺といえば「冷やし中華」を思い浮かべる人も多いだろう。ただ、ラーメン好きたちの"夏の定番"は、それだけではないようだ。
つけ麺チェーン「舎鈴」の夏限定「冷やかけ」シリーズは、ラーメン好きたちが毎年「待ってました」と沸く一杯。中でも人気なのが、大量の茗荷を豪快にのせた名物「茗荷冷やかけ」だ。今回、ラーメンライター・井手隊長が、毎年ファンを熱狂させる「舎鈴」の夏の風物詩を実食し、紹介する。
大量茗荷が主役の「茗荷冷やかけ」が今年も最高すぎる
ラーメン好きにとって「今年も夏が来た!」と実感する一杯のひとつが、間違いなく「舎鈴」の「冷やかけ」シリーズだろう。
つけ麺ブームを牽引している「舎鈴」は、あの「六厘舎」グループが展開する人気チェーン。
看板はもちろん濃厚つけ麺だが、実は限定メニューにも定評がある。そして夏の風物詩となっているのが、この「冷やかけ」シリーズだ。筆者も毎年楽しみにしている。
こちらが「茗荷冷やかけ(並)」(940円)。着丼した瞬間、まず目に飛び込んでくるのは、丼いっぱいに広がる大量の茗荷だ。「夏!!」と思わず心の中で叫びたくなるビジュアルである。
具材は茗荷、チャーシュー、ネギ、ナルトというシンプル構成。しかし、そのシンプルさが逆にいい。主役は完全に茗荷。そして、それを支えるのがキンキンに冷えたスープと極太麺だ。
まずはスープをひと口。これが実に「しょっぱウマい」。まったく味がボヤけることなく、「舎鈴」の冷やかけはしっかり輪郭がある。塩味をやや強めに効かせた設計で、暑さで鈍った身体にガツンと入ってくる。この塩気がたまらない。
そこに合わせるのが、「舎鈴」らしいワシワシ系の極太ストレート麺。冷水で締められた麺は凄まじくコシが強く、噛むたびに小麦の存在感が押し返してくる。冷たいスープを豪快に持ち上げながら、口の中で暴れる感覚が最高だ。
そして何より、この一杯を唯一無二の存在にしているのが茗荷である。小口切りではない。大ぶりにカットされた茗荷がゴロゴロと大量にのっているのだ。
シャッキリとした食感。鼻に抜ける爽やかな香り。ほのかな辛味。この個性が冷たいスープと抜群に合う。しかも大量に入っていることで、薬味ではなく完全に「主役」として成立している。こんなに一気に茗荷を食べる機会もなかなかないだろう。
食べ進めるほどに、身体がどんどん夏仕様に切り替わっていく感覚がある。
「妻が異常な茗荷好き」から誕生!? 「舎鈴」夏の定番"茗荷冷やかけ"開発秘話
実はこの「茗荷冷やかけ」、開発のきっかけも面白い。
店主の三田遼斉さんによると、もともとは「異常なほど茗荷好き」な奥様の存在がスタートだったという。
「妻がスーパーで茗荷を買ってきて、『これ絶対うまいから』って持ち込んだんです。実際に合わせてみたら、とんでもなくうまかった。それで商品化しました」
ところが当の三田さん本人は、なんと「大の茗荷嫌い」なのだとか。
「昔から自分の嫌いなものって、なぜか売れる傾向があるんですよ(笑)」
このエピソードが実にいい。
開発者本人は苦手なのに、多くの人が熱狂する商品になる。ラーメンの商品開発には、ときにそんな不思議な化学反応が起こるのだろう。
そして、この「茗荷冷やかけ」を食べるなら絶対に外せないのが「冷やかけライスセット」だ。これが本当に危険なほど旨い。
残ったスープをライスにかけ、具材をのせて食べれば、即席「冷やかけ茶漬け」が完成。キンキンに冷えたスープが米に染み込み、さらさらとかき込めるのに満足感が異常に高い。卓上の辛味をちょこんとのせると最高だ。
もはや締めというより、本編第二幕である。
気づけば丼は空。身体は完全にクールダウン。そして頭の中には「また食べたい」の文字が浮かんでいる。
ああ、旨い。今年の夏も、やっぱりこれだ。




