自転車で出かけるうえで、常に気をつけておかなければならないこと。それは“盗難対策”である。鍵をかけることはもはや当たり前だが、それだけで盗難対策は万全といえない時代になっている。

年々、窃盗犯の手口は巧妙化しており、ワイヤーカッターをはじめ専門的な工具を使えば、鍵を簡単に切断されてしまう場合も少なくない。さらに、施錠した状態であっても、目を離した隙に自転車ごと車に積み込まれてしまうケースもあるのだ。

  • 追跡機能付き防犯アラーム「KNOG SCOUT」を取り付けた自転車

自転車を盗む目的は、大きく分けて二つのパターンがあるといわれている。それは、「一時的な移動を目的としたもの」「転売を目的としたもの」である。

移動目的の場合、犯人が目的地に到着した時点で乗り捨てられる場合が多く、ボロボロの状態で発見されることもある。

一方で、さらにタチの悪いのが転売目的の盗難である。この場合、自転車に付いているパーツは分解され、パーツ単位で売却されてしまうこともあるという。
こうなってしまうと見つけ出すことは非常に困難であり、盗難に気づいてからどれだけ早期に手を打てるかが明暗を分けることになるだろう。

  • 自転車に取り付けられた「KNOG SCOUT」

そこで最近注目を集めているのが、追跡機能を内蔵した盗難防止アラームだ。
今回は、その実力を検証することにした。検証にあたり、札幌の老舗自転車店「サイクル小野サッポロ」様にご協力いただき、お話を伺った。

同店にて、KNOG SCOUTとAlterLockという二つの商品を試してみた。両者を比較しつつ、今回は購入したKNOG SCOUTを中心に、使い方や使用感を紹介する。

  • 写真左:AlterLock Gen3、写真右:KNOG SCOUT

    写真左:AlterLock Gen3、写真右:KNOG SCOUT

二つの商品で共通している主な機能は、自転車の振動を検知して作動する「アラーム機能」とスマートフォンによる「追跡機能」である。

KNOG SCOUTの追跡機能は、iPhoneに搭載の「探す」機能を使用する仕組みだ。Apple社のAirTagを使ったことのある人であれば、その機能がそのまま内蔵されていると考えるとイメージしやすいだろう。

一方、AlterLockはGPS機能を使用しており、専用アプリを通じてより広範囲な追跡が可能となっている(ただし、月額396円が必要となる)。

【検証】実際にKNOG SCOUTを自転車に取り付けてみた

  • 写真左:付属のカバーを装着して目立つように取り付けた状態、写真右:カバー無しのKNOG SCOUTの上にボトルケージを装着

    写真左:付属のカバーを装着し、あえて目立つように取り付けた状態。写真右:カバー無しで装着。目立たせずに取り付けることもできる。

SCOUTはボトルケージと同時に取り付けることが可能で、長距離を走るサイクリストにとってこの機構は非常にありがたい。

充電後にiPhoneとペアリングを行い、実際に自転車へ取り付けてみた。取り付けネジの頭部は特殊な形状になっており、付属の専用工具を使用しなければ簡単に取り外せない設計となっている。

先にも述べたように、SCOUTの追跡機能はiPhoneの「探す」機能を使用するため、対応OSはiOS(iPhone)のみとなる(AlterLockはiOS、Androidの両方に対応)。

防水性能はIP66(防塵・防水性能を示す国際規格で、粉塵侵入を完全に防ぎ、豪雨にも耐える仕様)で、雨天でも安心して使用可能だ。充電方式はUSB-Cで、一度のフル充電で最長6ヶ月稼働する。バッテリー残量はアプリ画面で確認できるため、充電忘れのリスクも少ないだろう。

アラームには、「警戒モード」と「サイレントモード」が用意されている。SCOUT本体のアラームをオフに設定し、振動検知の通知のみをiPhoneで受けることも可能である。

  • 公園の駐輪場に停められた多くの自転車

アラームセンサーの感度は1~5段階で設定できるが、振動にはかなり敏感なようだ。アラームの音量は85dB(走行中の電車内の音に相当)と大音量で、盗難抑止という点では安心感がある一方、誤作動には注意が必要である。

意図しない場面でアラームが鳴ってしまった場合でも、Bluetoothの圏内(約10〜20m)であれば、アプリからキャンセルすることが可能だ。ただし、自転車が不安定な場所に置かれている場合や、屋内の駐輪場などで使用する場合は、あらかじめサイレントモードに設定しておくといった配慮が求められる。

  • 写真左:アプリ画面、写真右:iPhoneの「探す」機能画面

    写真左:アプリ画面。警戒モードとサイレントモードの切り替えや、アラームのオンオフ設定も行える。写真右:iPhoneの「探す」機能画面。自分の現在地と自転車の位置が地図上に表示されている。

強風で自転車が倒れてしまった場合や、人がぶつかってしまった場合でも、アラームが作動する可能性がある。一度の振動検知につき、アラームは40秒で止まる仕組みになっているが、状況によってはアラームを有効にすべきかどうか悩ましい場面もあるだろう。今後メーカーには、センサー感度を改善するファームウェアなどの提供を期待したいところだ。

一方で、実際に窃盗行為が行われた場合は、わずかな振動でもセンサーが検知し、85dBの大音量アラームが鳴り続けるため、盗難対策としては十分に期待できる。使用するシチュエーションと各機能を理解していれば、非常に心強いシステムである。

さらに、万が一盗難に遭った場合でも、追跡機能(iPhoneの「探す」機能)によって、盗まれた自転車を早期に発見できる可能性が高まる。実際に自転車を設置し、約2km離れた場所から位置情報を確認してみたところ、すぐに自転車の現在位置が地図上に表示された。この機能があれば発見までの時間短縮が期待できるうえ、転売されるリスクも最小限に抑えられると実感した。

追跡機能付き防犯アラームで自転車盗難を防げるのか?

今回お話を伺ったサイクル小野サッポロ様の店内には、簡易的な鍵から頑丈な鍵まで、さまざまな盗難対策グッズが豊富に並んでいた。

  • サイクル小野サッポロの自転車盗難防止アイテムコーナーの一角

一般的に、鍵は太くて頑丈であればあるほど切断や破壊は難しくなる。しかしその反面、重量やサイズも増すため、日常的に持ち運ぶには負担が大きくなってしまう。特にロードバイクユーザーは自転車の軽量化に敏感なため、使用する鍵も必要最低限の軽量なものになりがちだ。

そんな中で、従来の鍵に加えてアラーム機能や追跡機能が搭載されたアイテムを使用することで、安心感のレベルは格段に上がる。
ただし、これはあくまで鍵と併用することが大前提であり、アラームだけで盗難を完全に防げるものではないという点を理解しておく必要があるだろう。

とはいえ、85dBの大音量アラームが鳴り響く中で盗難行為を続けることは、自転車泥棒にとって大きなリスクとなるのは間違いない。今回は、あえて目立つように同梱されている蛍光イエローのカバーを装着した。転売目的の窃盗犯であれば、この“異物感”に気付き、抑止効果につながるのではないかと考えたからだ。

窃盗に慣れ、自転車の知識に長けた者であれば、それが何を意味するのかは理解できるはずである。「わざわざ防犯アラームが付いた自転車を狙う必要はない」と判断するのではないかという心理をついたのだ。

「最初から盗む気を起こさせない」ことも、盗難リスクを下げる手段の一つではないだろうか。

追跡機能付き防犯アラームはどのようなユーザーに向いている? 気になる価格は?

サイクル小野サッポロのスタッフに話を聞いたところ、今回紹介したKNOG SCOUTの価格は9,680円、AlterLock Gen3は13,800円とのことだった。

防犯グッズとして決して安価ではないが、自転車の盗難が増加している現代においては、十分に投資する価値はありそうだ。

自転車の価格や価値によっても判断は変わるかもしれないが、高価なスポーツバイクだけでなく、街乗りをメインとしているファンユーザーや、クロスバイク、電動自転車に乗る人にもおすすめしたい製品だという。その理由を聞いて、筆者自身も納得した。

というのも、高価なロードバイクに乗る人たちは、そもそも長時間自転車から離れることは少なく、防犯に対する意識も高い傾向にある(ただし、実際には盗難に遭い、転売される例も後を立たないので、おすすめしたいことには変わりない)。

一方で、自転車泥棒の動機で一番多いとされる「一時的な移動手段」としての盗難は、駅周辺や市街地で起こりやすい。通勤・通学、買い物、食事などで自転車を屋外駐輪場に長時間停める機会が多いからだ。

近年、自転車の価格は全体的に上昇傾向である。変速機付きのシティサイクルやクロスバイクでも7~8万円、電動アシスト付き自転車では20万円を超えるものもある。

そう考えると、特に自転車を趣味にしていないユーザーであっても、盗難対策として1万円程度の投資をすることは決して高い選択ではないのかもしれない。スポーツサイクルから実用自転車まで幅広く取り扱うお店ならではの提案だと感じた。

これから自転車で出かける機会が増える季節でもある。自転車盗難が日々の心配事になっている方は、この新しい盗難防止システムの導入を検討してみてはいかがだろうか。盗難への不安を少しでも軽減し、より一層、自転車を生活の中で活用していただければ幸いである。

商品の詳細情報はこちら
KNOG SCOUT
AlterLock

取材協力
サイクル小野サッポロ