カンテレのドキュメンタリー番組『ザ・ドキュメント 冤罪・甲山事件 山田悦子 半世紀の闘い』が、きょう29日(25:15~ ※関西ローカル)に放送される。21年間に及ぶ裁判で一度も有罪判決を受けることなく、3度の無罪を経て終結した「甲山事件」の冤罪者・山田悦子さん(74)に、メディアで初めて約2年にわたる長期密着取材を行った。
「カメラ取材を受けない冤罪者」山田悦子さんに初密着
「冤罪者は死ぬまで冤罪者だってことには変わりありません」――そう語るのは、21年間の裁判の末、殺人事件の被告人から解放された山田悦子さん。無罪が確定した時、事件発生からすでに25年が経過していた。
かつて過熱した事件報道に心を痛め、「不起訴処分を出してもらっても、一旦マスコミによって騒がれ、犯人視されたものは一生消えませんから」と語っていた山田さん。これまでメディアの取材を拒んできたが、今回、初めて長期のカメラ取材に応じた。
番組では、ドキュメンタリーでは珍しい再現ドラマや、カンテレに眠る25年にわたる事件のアーカイブ映像などを交え、事件から半世紀を経た今、山田さんの数奇な人生をたどり、甲山事件が残した教訓を探っていく。
1974年、甲山学園で児童2人の遺体発見
甲山事件は1974年、兵庫県西宮市にある知的障害児の施設・甲山学園で、浄化槽のマンホール内から児童2人の遺体が発見された事件。警察は殺人事件として捜査し、保母として働いていた当時22歳の山田(旧姓:沢崎)さんを児童殺害容疑で逮捕した。
山田さんは身に覚えがないと否認したが、執拗にアリバイ説明を求める警察の取り調べで精神的に追い込まれ、逮捕から10日後に無実の罪を認めてしまう。その後、自白を撤回した山田さんは釈放され不起訴になったが、自身の潔白を明らかにしようと、釈放後に国家賠償訴訟を起こした。
結審も見えてきた1978年2月、同じ容疑で検察が山田さんを再逮捕・起訴。一度不起訴になった事件がなぜ起訴に転じたのか。その背景には、事件から約3年後に語り始めたという複数の元園児の証言があった。
弁護士資格を持つ記者が司法の闇に迫る
本作のディレクターを務めるのは、弁護士資格を持ち、罪に関する取材を重ねてきた“弁護士記者”上田大輔氏。無実の罪に問われた人を救う弁護士を志し、司法試験に合格したものの、有罪率99.8%の刑事司法の現実に絶望し、企業内弁護士としてカンテレに入社。その後、一度は背を向けた刑事司法の問題に向き合おうと記者になり、“有罪推定”ともいえる日本の刑事裁判のあり方に疑問を投げかける報道を続けてきた。
今回、山田さんが取材を受けるきっかけとなったのは、上田氏が自身のドキュメンタリー『ザ・ドキュメント 逆転裁判官の真意』のDVDと手紙を山田さんに送ったことだった。「上田さんの刑事司法に対する絶望が伝わってきた」と山田さんから取材を受けるとの返事があり、密着取材が始まったという。
事件発生から約半世紀が経過した甲山事件について、上田氏は「冤罪を生む構造がよく分かる事件。今も変わらない日本の刑事司法の姿が浮き彫りになる」と語る。
「有力な証拠が一つもないことに背筋が凍る」
検察が物的証拠もない状態で、元園児たちによる矛盾をはらんだ数年後の証言を“新証拠”として殺人罪で起訴したことについて、上田氏は「当時の判決文等を読みながら、有力な証拠が一つもないことに背筋が凍るような思いがしました」と明かす。
さらに、「甲山事件は、刑事司法のあり方やマスメディアの事件報道、障害者や子どもの人権まで考えさせられる、今なお根深い日本社会の問題の縮図のような事件です」と指摘。「しかし、21年に及ぶ刑事裁判の末に無罪が確定した大きな冤罪事件でありながら、時間の経過とともに忘れられつつあります。決して風化させてはならないという思いで、取材に挑みました」と話している。
そして、「当時の事件報道のあり方も考えさせられ、これまでのドキュメンタリーや映画『揺さぶられる正義』を通じて問いかけてきたことに連なる取材でした。司法の知識をもって冤罪の取材を重ねてきた、自分にしか届けられないドキュメンタリーだと自負しています」と意気込む。
国内外で評価されたスタッフ陣が集結
上田氏は、揺さぶられっ子症候群(SBS)に関する報道で日本民間放送連盟賞最優秀賞、ギャラクシー賞選奨など数々の賞を受賞。一連の取材をもとにした映画『揺さぶられる正義』は、ワールドメディアフェスティバル金賞、ニューヨークフェスティバル TV&フィルムアワード銀賞を受賞するなど、国内外で高い評価を受けている。
今回プロデューサーを務める宮田輝美氏と、カメラマンの平田周次氏は、映画『揺さぶられる正義』のスタッフ。再現映像の撮影を担当した樋口耕平氏は『希容の形』でベネチアテレビ賞金賞など数々の受賞歴を持つ。国内外のコンクールで受賞を重ねたスタッフ陣が集結し、日本裁判史上類例のない長期裁判と、その渦中に置かれた山田さんの半生に迫る。
(C)カンテレ







