ep.2「ソーシャル・ラブ」・ep.4「正しいのは私」(熊切和嘉監督)――マリオネットが試した“二重の難しさ”

熊切和嘉監督が担当した2つのエピソードは、対照的なトーンで描かれた。「ep.2はSNSを取り入れたポップな色に、ep.4は静謐なフィルム・ノワールにしようと意識しました」

ep.2で特に印象的なのが、ステージでマリオネットのように動くシーン。「仲島さんの身体表現で何か面白いことができると思って提案した」と熊切監督。仲島にとってそれは「ナノの一番の山場」だったという。

「マリオネットのような動きをしながら本性を見せるというダブルの難しさがあって。いかに奇妙に操られている感じを出すか、アドバイスをもらいながら練習を重ねました」

糸が外れたように倒れた後に放つセリフの言い方まで熊切監督と細かく話し合い、「自分的にも納得のいく好きなシーンになりました」と仲島は明かす。

一方、全体を通して最初に撮影したのは熊切監督のep.4の現場だった。「最初に撮ったのが安達祐実さんと対峙(たいじ)するシーンだったんです。完璧なお芝居をされていた安達さんに向き合っていて、すごくフラットに、自然に芝居をやられていたのでとても良かったです」と熊切監督。仲島自身は「初めて安達さんとお会いした時は、“私、今からこの方に挑発的な態度をとるのか…”と本当に緊張しました。でも、ナノに入り込んでからはお芝居に集中できました。最後の実験室のシーンで私の目がギョロッとする箇所があるんですけど、そこを褒めていただけてうれしかったです」と振り返る。

熊切監督は仲島の第一印象を「普段から俗っぽさがなく、ちょっと浮世離れした雰囲気。僕が描くナノ像とはぴったりでした」と語る。

ep.3「女王の資格」・ep.5「憎しみの壁」(ユ・ヨンソン監督)――韓国のホラー感覚が宿した“鋭い刃”

韓国の映像作家、ユ・ヨンソン監督が担当したep.3とep.5は、本作の中でもホラー色が最も濃い。「私にとってナノは、温かさを感じるけれど近づくと火傷(やけど)してしまう“火”のような存在。各話の主人公が破滅していく過程を、客観的に見つめるのがナノの視点だと思いました」とユ監督は語る。

ep.3では、鍼が刺さった人形が重要な役割を担う。美術スタッフが3日間かけて手彫りで作り上げたこの小道具に、仲島は「“持って帰っていいですか?”と言いたくなるくらい素敵な仕上がりでした」と感嘆。ユ監督もその美術スタッフの仕事ぶりに感動し、「韓国での次の作品にお誘いしたくらい、日本のスタッフの情熱は素晴らしかった」と語った。

ep.5の弓道シーンも忘れがたいエピソードを生んだ。3日間練習したという仲島だが、「私以外のキャストのお二人が本当にお上手で、私だけ下手で…」。ある瞬間、矢を放つと照明のライトに「バンッ!」と命中してしまい、そこからは「怒られるんじゃないかと震えながら撮影していました(笑)」と苦笑いする。

仲島はユ監督のエピソードについて「哲学的なセリフと軽いトーンのバランスが難しかったです。でもホラーが好きな私にとって、その世界に入れた気分で楽しかった」と話す。哲学的なセリフを言う時には、クルクルと髪の毛を弄ぶなどしてわざと相手の視界に入るように動くなど、細部の工夫も積み重ねた。初めて仲島と対面した時、ユ監督は「鞘の中に収まった刀」という印象を受けたという。外から見ると穏やかだが、内側に鋭い刃を隠している。その二面性こそが、ユ監督のナノ像の核心だ。