タイドラマの世界的ヒット作『転校生ナノ』シーズン1の日本版リメイクが、フジテレビの動画配信サービス・FODで独占配信中。本作は、学園という閉鎖空間に現れる謎の転校生・ナノが、人々の欲望と秘密をあぶり出していく学園ミステリー・スリラーだ。
大きな特徴は、全6話をオムニバス形式で手がける4人の監督陣――堤幸彦、熊切和嘉、ユ・ヨンソン、畑中みゆき――の個性がそれぞれのエピソードに色濃く刻まれていること。そして何より、全話を通してナノを演じるのが、本作が俳優デビューとなる“期待の大型新人”とも言える仲島有彩であること。
今回、主演の仲島と4監督への取材が実現。デビュー作としては異例ともいえる現場で、彼女はどのようにナノを生きたのか。監督たちの証言とともに、その軌跡を追った。
役作りに1年「世界観を壊してはいけない」
俳優としての第一歩が、世界中にファンを持つ人気作のリメイク主演。しかも監督は4人という異例の座組。「演じると聞いた瞬間、ワクワクよりも不安の方が大きかった」と仲島は振り返る。
「タイ版のナノが本当に素晴らしかったので、その世界観を壊してはいけないという思いがずっとあって。だから個人的に1年ほど役作りに時間をかけました」
その準備は具体的かつ徹底したものだった。演技レッスンの先生とともにタイ版を繰り返し観て、立ち方や座り方、バッグを置くタイミングといった所作の一つひとつを突き詰めたという。
「タイ版のナノはもっと飛び抜けて奇妙で明るい。でも日本の脚本を読んだ時に、もう少し引いた視点から世界を見ている存在なのかなと感じました。あえて本質的には溶け込みにはいかない、ずっとどこか違う柱に一人でいるような……そんなイメージを作り上げていきました」
本作のユニークさは、監督ごとにナノの“色”が変わることにある。同じキャラクターでありながら、各エピソードは全く異なる顔を持つ。
ep.1「特別レッスン」(堤幸彦監督)――コイントスが生んだ“絶妙な間”
堤幸彦監督が手がけたep.1では、ナノの神秘性と社会性が鋭く交差する。堤監督は「日本の空気感を出すために色彩から入り直した」と語る。タイ特有の湿度感とは異なる日本的な乾いた怖さを映像に宿し、「説明を過多にせず映像で見せること」を徹底。撮影中、思わぬハプニングが名シーンを生んだ。
「コイントスが全然できなくて焦っていたんです」と仲島は打ち明ける。全撮影の最後に臨んだそのシーンで、コインがうまく弾けず飛んでいってしまった。すると堤監督がすかさず「じゃあ思いっきり相手に当ててみて、そして笑って」と指示。「本当は普通にトスしてキャッチする予定だったんだけど、ポーンと飛んでいってしまって。でも、そのアクシデントから絶妙な間が生まれましたね」と堤監督は振り返る。
「マッチポイント」と言って高笑いするシーンもこのエピソードの見どころのひとつ。仲島はオリジナルの笑い方を映像で50~60回見て研究したというが、「いざ撮影が始まると先生役の八神蓮さんのお芝居が本当に面白くて、耐えられず笑ってしまった部分もありました。だから自然に出てきた高笑いだったと思います」
終盤、詩織(日山和子)と屋上で向き合うシーンでは、ナノの内面がわずかにのぞく。「廊下で詩織と何気ない会話をしている時は純粋に友達だと思っていて、最後の屋上のシーンでは、答えを与えるのではなく、詩織自身に選択を考えさせる。他のターゲットとは違う、ナノなりの優しいアプローチを心がけました」と仲島。それを聞いた堤監督が「考えてるね。そこがすごい!」と思わず声を上げる場面もあった。
撮影序盤から仲島の落ち着きに驚かされたという堤監督。「新人の方なのに物怖じしない。最初に会った時から、ナノのイメージとすぐにリンクしました。この人なら十分戦えると確信しましたね」
